テレ東・五箇公貴P、テレビ東京が見据えるテレビの未来
バーチャル空間で制作した映像を連ドラ放送フォーマットで見せる
五箇生身の人間とは異なるビジュアルで、だけど個々が人格を持ってパフォーマンスをする。これは新しいカテゴリーのエンターテイナー(=芸能人)だと思いました。ドラマ25という枠は常に斬新な企画を模索しているのですが、VTuberの方々と一緒なら、まだ見ぬ新しいエンタテインメントが作れそうだと思ったのが企画の始まりです。
──見た目はアニメのようですが、あくまで“ドラマ”。その根拠はどう設定するのでしょうか?
五箇ドラマの手法で制作していることです。登場人物たちの声はアフレコではないですし、もちろん芝居も自らの体でしています。そのためオーディションでは、声だけでなく動きを含めた演技力を見ています。また、コメディならではのアドリブも盛り込みたかったので、予期せぬことに対するレスポンスやリアクションも重視しました。
──制作において通常の実写ドラマと異なるところは?
五箇VR技術スタッフが加わっていることです。まったく新しい挑戦だったので、本作の制作にも参加しているVRテック系のベンチャー企業・heloクリエイティブには、企画の段階から相談に乗っていただきました。彼らには放送フォーマットに載せる映像の制作経験はなかったので、heloが制作したVR空間でVTuberの演技を収録した映像を、実写ドラマで付き合いのあるラインバックとEIKOが連続ドラマのフォーマットに編集するポスプロ作業を行いました。
史上初のVTuberドラマを日常系コメディでやる狙い
五箇基本的に、生身の女優さんへの演出とほぼ同じでした。VR空間での芝居なので、「ここに立つと棚と人物が同じ座標軸上でかぶってしまう」みたいなこともありましたが、実写の演出でも立ち位置の指示はしますしね。ただ、そもそもコメディは実写であっても要求される芝居のレベルが高い。とくに表情の演技。笑っているような怒っているような、といった微妙な表情が笑いに繋がることが多いんですが、現時点ではまだVTuberは生身の人間と比べると表情の細かいニュアンスは出しづらいんです。そこですごく迷ったのですが、監督とも相談してお客さんの“笑い声”を入れることにしました。
──アメリカのシチュエーションコメディのような?
五箇あの笑い声って「ここ笑うところですよ」ということを視聴者に伝える装置なんです。VTuberに詳しくない視聴者にとって、やっぱり最初は本作がドラマであることに違和感を覚えると思います。そこにシットコムでおなじみの笑い声が入ることによって、だんだん慣れていってくれるんじゃないかと。史上初のVTuberドラマを日常系コメディでやった狙いもそこにあるんです。VTuberを知らない人に「Vtuberってこういうものですよ、親しみやすいものですよ」とお伝えするには、とんがった内容よりも普遍性のあるもののほうがわかりやすい。