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『下町ロケット』で嫌味な男を怪演 好青年イメージ覆した“第二の裕次郎”徳重聡の新境地

『下町ロケット』第4話(C)TBS

 初回平均視聴率13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調なスタートを切ったTBS系日曜劇場『下町ロケット』。阿部寛を筆頭に豪華俳優陣が揃った同作で、ひときわ存在感を示しているのが、佃製作所のエンジニアでクセが強く、ぶっきらぼうでドライな性格の嫌味な男・軽部真樹男を怪演している徳重聡。見た目からも変貌を遂げ、SNSでは「別人」といった声もあがり、「イキリメガネ凄腕技術者役の徳重聡さんにドハマリ。21世紀の裕次郎が、ああいう役やれるとは思わなかった」と好評価を得ている。“第二の裕次郎”として俳優デビューし、これまでピュアな“好青年”というイメージの強い徳重聡にいったい何が起き、“嫌味”な男役を演じきるまで変貌を遂げたのだろうか。

“第2の石原裕次郎”というコンセプトから、“爽やか好青年”イメージからの脱却に苦戦

 徳重は、2000年に開催されたオーディション「21世紀の石原裕次郎を探せ!」で、5万人を超える応募者のなかからグランプリを獲得して芸能界デビューした。前述の『スペシャルドラマ「弟」』(テレビ朝日系)で裕次郎役を演じ、『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)では、野村真美が演じる四女・葉子の夫・大原透役で、双子のよき父親役を演じたほか、『八重の桜』(NHK総合)での大久保利通役など、これまでピュアな好青年という印象でこれまで多彩な役柄を好演、脇役として多くのドラマに出演してきた徳重聡。だが、オーディションの目的が“第2の石原裕次郎”というコンセプトだったため、ヒール役や悪役にはそぐわず、“爽やかな好青年”というイメージが強い俳優でもあった。

 放送業界で活躍するジャーナリストの長谷川朋子氏は「デビュー当時はイメージ戦略を打ち出していくことに利点がありましたが、そこからいかに脱却するかが課題にあったと思われます」と、徳重がターニングポイントに差し掛かっていたことを指摘する。その課題と向き合い、“爽やかイケメン”というセールスポイントを脱ぎ捨て、心機一転で臨んだのが『下町ロケット』の軽部真樹男役だ。

見た目の変貌ぶりに「別人」との声も…ギャプを活かしたキャラ作り

 『下町ロケット』で徳重が演じる軽部真樹男は、前述したようにかなりクセのある嫌味な男。見た目の変貌ぶりからも、徳重の役に対する力の入り具合がうかがえる。普段の徳重と言えばスラッとした高身長で、スーツが似合う石原プロモーションらしい清潔感を持ったイケメン。しかし『下町ロケット』の軽部は、目深に帽子をかぶり、黒縁メガネをかけた七三分けの作業服姿。会話シーンでも、相手と目も合わさず口を尖らせながら話す、いかにもネチッこそうな性格がプンプン漂ってる。爽やかさを封印した180度イメージの違う役どころに「徳重聡?全然気付かなかった」「めっちゃイメージちがう」などの意見が多く見られた。熱く理想論をぶちかます佃社長に対して、現実的でクールな視点から物を言う軽部には、ネットでは「言動に間違いはないんだよな…安易に憎めない」「98%嫌なヤツといったイメージしかないけど、2%の確率で映る真剣に仕事取り組んでる姿がたまらない」「佃製作所のなかでも異色キャラ、今後の展開にどう絡んでくるのか気になる」などの感想が挙げられた。

 こうした一概には悪役とは捉えられない難しい立ち位置の役柄について、「前作では、立川談春さん演じる殿村直弘役が“お金のことばかり考えている元銀行マン”かと思いきや、実は誰よりも熱い男を見せどころとしていた。徳重さん演じる軽部は“ドライで嫌味な男がみせる、実は絶品の強いハート”に期待が高まります。こうしたキャラクターの妙は、制作陣のドラマ作りのこだわりであり、日曜劇場のブランド戦略だと分析しています」と、軽部の存在に前述の長谷川氏も注目する。実際に第1期でも山崎育三郎が演じた真野賢作が、佃社長を裏切ったのちに改心するという流れがあり、ギャプを持った役どころがこれまでも物語のキーになっていただけに、軽部の動向には多くの期待が寄せられている。

イメージの脱却に成功した徳重聡、40歳でブレイクの兆し

 『下町ロケット』シリーズは、徳重のような意外性のある配役や、俳優が本業ではないタレントをキャスティングするケースも多く毎回話題になる。長谷川氏は「ギアゴースト社長・伊丹大を演じる尾上菊之助さんをはじめ、民放連ドラが話題になる役者のキャスティングだけでなく、イマトアヤコさんや古舘伊知郎さん、立川談春、恵俊彰さんら俳優が本業ではない方々の出演によって、普段ドラマをみない中年男性にも“知っている”感を持たせることができる。そうした俳優・女優の起用は、視聴者層の裾野を広げる効果がありそう」と、キャスティングの狙いを指摘。たとえば企業弁護士の中川京一を演じる池畑慎之介は、ピーターとしてバラエティ番組でもお馴染みの存在だったが、『下町ロケット』で蛇のようにしつこい悪役を演じ、悪徳弁護士役が文字通り板についた。佃製作所の知恵袋としてその中川と対決する弁護士・神谷修一役は、『ひるおび!』MCでお馴染みの恵俊彰が演じ、『ひるおび!』で見せる誠実な人柄の良さが、そのまま役にも生かされている。さらに第3話では、世界的ブームを巻き起こしたピコ太郎のプロデューサー・古坂大魔王が、帝国重工の審査部信用管理室の安本年男の役で出演。佃社長らを追い詰めるウザさ満点の演技が、ネットでも高評価を得ると同時に大きな話題になった。

スタッフ陣の“キャスティングの妙”も光る

 こうした“キャスティングの妙”を一手に担っているのが、TBSプロデューサー・伊與田英徳氏とTBSの演出・福澤克雄氏だ。2人のタッグは、これまでにも『半沢直樹』(2013年)『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年)『陸王』(2018年)でも手腕を発揮してきた。たとえば『半沢直樹』では、片岡愛之助だ。オネエ口調の国税局エリート・黒崎俊一を演じて一躍ブレイクを果たし、『半沢』ブームの一翼を担う存在感を発揮した。『陸王』では、松岡修造や小藪一豊といった飛び道具的なキャスティングも話題となったが、その一方で風間俊介の熱演にも注目が集まった。風間と言えば20年前ほどに『3年B組金八先生』の兼末健次郎を演じて以来、ジャニーズ事務所所属ながら狂気的な役どころに定評があったが、一方で正統派のキャラクターの少なさに難を感じる向きもあった。『陸王』では、一転して実直な銀行マン・坂本太郎の好演で評価を得たイメージの脱却に成功した。今回『下町ロケット』で、その風間とは逆のパターンで、これまでのイメージを覆した役柄で花開いたのが徳重聡だと言える。

 『下町ロケット』をきっかけに、ネットでは「一気にブレイクの時が来ましたね」といった期待の声までも上がっている徳重。前作での山崎育三郎のように、役者としての幅が広がり、今後は好青年役以外のオファーも多くなることが予想される。もちろんこれまでのような好青年を演じても安定した演技が期待できるだろうが、もっと違った悪役やヒール役を観てみたいと思わせてくれる存在感を放つ、軽部という役は徳重の役者人生にとって大きな宝になったと言える。

 “芯の強い熱い男前”といったイメージのある石原プロモーションのなかで、“嫌な奴”を演じきる役者として新たな立ち位置を掴んだ徳重。役者として確かな爪あとを残したその上で、今後どんな役を演じていくのか。今年7月に40歳を迎えた徳重が、40代から50代になってからの役者人生が、どのようなものになるのか。まずは本作で軽部をどう演じるのかを見届けたい。

(文/榑林史章)

提供元: コンフィデンス

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