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昨今の女性主人公ドラマの共通点、ハッピーなだけでは共感されない

『義母と娘のブルース』第8話より(C)TBS

『義母と娘のブルース』第8話より(C)TBS

『ぎぼむす』『高嶺の花』『ケンカツ』など今期のドラマは女性主人公で見るのがおもしろい。それぞれのヒロインの性質を見ていけば、今の世の中がドラマに求めていることがわかるのではないだろうか。人気のドラマの共通点、相違点をまずみていきたい。

各ドラマの女性主人公に見る特徴的なキャラクター

 この夏、一番の注目作と言えば『義母と娘のブルース』(TBS系)だろう。このドラマのヒロインの亜希子(33歳)を演じるのは綾瀬はるかだ。亜希子は、大企業に勤めるキャリアウーマンであったが、小学生3年生の娘・みゆきの父親の良一と結婚することで、突然義母となる。この亜希子のキャラクターが濃くて特徴的だ。いつも紺のスーツに眼鏡姿で、誰に対しても敬語。家庭にいても、娘に対するときでも、いつでもビジネスのスキームで考える。ある意味、ロボットのような変わり者なのだが、打算のない、何事にも一生懸命な姿のせいか、彼女の周りには不思議と人が集まってくる。

『健康で文化的な最低限度の生活』(関西テレビ・フジテレビ系)のヒロイン・えみる(吉岡里穂)は、区役所の生活課に配属された新人ケースワーカーだ。ごくごく平凡な家庭に生まれ育ち、かつては大学で映画を撮っていたが、安定を求め現職についた。ごくごく平凡と最初に言っているように、えみるよりも周囲のほうが個性豊かなのだが、生活保護を受ける人たちや、課の人々と過ごすなかで、タイトルにあるようなことをの通り、健康で文化的な最低限度の生活とは何かを考えるようになっていく。

『透明なゆりかご』(NHK)のヒロインのあおい(清原果耶)は、高校の准看護学科に通う17歳で、夏休みに産婦人科の看護助手のアルバイトをしている。アルバイト初日から妊婦を助けようとして遅刻してしまったり、不器用なところもあるが、じっくりと患者や状況を見つめているところがある。自分の身の回りに起こったできごとを受け止め、とことん考えるところがある。

 ラストスパートをかける朝ドラ、『半分、青い。』(NHK)のヒロイン・鈴愛(永野芽郁)は、朝ドラヒロインのなかでは異色の存在と言ってもいいだろう。放送の上では、現在40代になろうとしているが、いまだに失敗続きで、実家に帰ってきて、まさに何かを始めようとしているところだ。傍若無人で、思い付きで行動しているようなところも多く、朝ドラヒロインの型に押し込めようとすると前例がなくて戸惑う人もいるかもしれないが、正しいだけではないヒロインに妙に癒されるところもある。

『高嶺の花』(日テレ系)のヒロインで、石原さとみ演じる月島ももは、華道の家に生まれた才色兼備で非の打ち所がない女性、とドラマが始まる前には紹介されていたが、いざ始まってみると、婚約者に結婚当日に裏切られ、その後はストーカーのような状態に。そんななかで会った自転車屋の冴えない店主に出会ったことで変化していく。

各ドラマに共通するのは女性主人公が“苦い経験”に向き合う境遇

『健康で文化的な最低限度の生活』(C)関西テレビ

『健康で文化的な最低限度の生活』(C)関西テレビ

 ここまで書いてきて、これらのドラマに共通するのは、ヒロインが、なかなかに「ほろ苦い」というか「苦い」経験に真摯に向き合っていること。『ぎぼむす』であれば、契約結婚した夫に先立たれ、血のつながらない娘と暮らすなかで、本当の親子が直面するような種類の問題に立ち向かうことになる。『ケンカツ』では、初回からヒロインの担当する受給者が自殺してしまうというつらい出来事が描かれる。『透明なゆりかご』も同様で、第1話で、バイト初日に出会った妊婦が、望まぬ妊娠の結果子どもを産み、少し前向きになって退院していくが、しばらくしてその子どもが亡くなってしまったという一報を聞く。

『半分、青い。』は、朝ドラにしては珍しく、恋愛でも仕事でも、いまのところうまくいった試しはなく失敗ばかりだ。『高嶺の花』でヒロインに起こる出来事は、破談、出生の秘密による確執、お家騒動、格差恋愛など、現代のドラマにしては、少し大味な気もするが、それでも、ほろ苦い現実を描いていることは間違いない。

『透明なゆりかご』には、ヒロインが「現実は、私が思うより、残酷なのかもしれない、だけど…」というシーンがある。苦い出来事がヒロインにふりかかるのは、こうした残酷な現実があるという前提を共有するためかもしれない。

 以前であれば、ヒロインが結婚したとか、何かを達成したとかをきっかけに、「めでたしめでたし」と終わるものも多かったが、最近のドラマには、単純なハッピーエンドは少なく、人生の区切りのその先を描いたり、この後も登場人物はどこかでずっと生きているんだろうなと思わせるものが多いし、そんなドラマには根強いファンがつく。

今期ドラマ女性主人公に映る、普通が共感されにくい現代社会

 ドラマは娯楽で、ありえない出来事や、夢のような恋愛をスピーディーに見せることによって現実を忘れさせてくれるものとして見ている人ももちろんいて、そんなドラマで人気の高いものもたくさんあるが、少しだけそこからシフトして、自分の問題と地続きなものを観て、考えるヒントがほしいという人も増えてきているのではないだろうか。

 一方で、かつては多くあった、その世代に特有の自意識を描いたり、人と比べて自分は負けていると嘆いたり、世間の平均値やそれより上に到達することに(例えば結婚や就職など)目標をかかげて、そういう私になろうとするドラマは今期に限っては非常に少なくなっている。もはや、平均値や普通が共有されにくいし、それを目標に掲げることに共感を得られにくくなっているのではないか。

『ケンカツ』の第1話で、大学で映画監督を目指して奮闘していたヒロインのえみるが公務員になり、受給者が亡くなってしまうという苦い経験をしたことを受けて、「映画であれば、(担当受給者の)平川さんの死とともに物語は終わる。きっと主人公は最後に、『こんな思いもうしたくない』とかなんとかいって、エンドロールへ向かうのだろう。でも、現実の物語は、まだ始まったばかりで」と語るシーンがある。

 このシーンに代表されるように、今のドラマは、物語をスッキリと終わらせるために進めて共感が得られることは少ない。ヒロインの物語は苦い経験を受けてからが始まりなのではないだろうか。
(文:西森路代)

提供元: コンフィデンス

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