『劇場版コード・ブルー』大ヒットのカギはドラマから時間を空けた映画化
ドラマ映画の全盛は主に90年代後半から00年代
しかし、時代とともに高視聴率ドラマは少なくなり、その一方でテレビ局の収益の柱のひとつにもなった映画事業からのドラマ映画は数ばかりが多くなり、テレビドラマと変わらない内容の作品なども散見されるようになり、次第に観客の足は遠のいていった。近年のテレビ局映画(ドラマ映画のほか漫画実写やオリジナルなどを含むテレビ局製作映画)は、人気漫画や小説など原作ものの実写化が主流になり、ドラマ映画は1年に1〜2作ほどが制作されているが、フジテレビ作品では『信長協奏曲 ノブナガコンツェルト』(46.1億円/2016年)、『昼顔』(23.3億円/2017年)などが邦画実写が低迷するなかでもスマッシュヒットになっていた。
もともと人気の高いドラマがシーズンを経て、幅広い層の視聴者を獲得
『コード・ブルー』は、2008年7月期の連続ドラマ『〜 1st season』の放送に続き、翌年にスペシャルドラマ、さらに2010年1月期に『〜 2nd season』が放送され、それぞれ高視聴率を記録。この時点で固定ファンのいる人気シリーズになっていた。そのあと7年を経て、『〜 3rd season』が2017年7月期に月9枠で放送され、二桁ドラマが少ないなか平均視聴率14.6%を獲得。過去のシーズンを観ていない、新たなファンも多く獲得していた。
そして、いよいよ映画化された今作は、劇場には若年層の女性の姿が多く、『〜 3rd season』の視聴者がメインの観客層になっているようだが、それに過去シーズンからのファンも加わり、幅広い層の動員に成功している。映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「もともと人気の高いドラマだったが、映画ではテレビから10年が経ち、登場人物たちが年齢を重ねて成長していく姿が描かれている。この長いスパンの連続性のなかで、ファンの関心の度合いも増したと思う。結果として、過去のドラマ放送直後ではなく、時間を空けて映画化したことが功を奏したと言えるでしょう」と分析する。
また、作品の内容としても、“医療ドラマ”という点が、ヒット要因としては大きいようだ。大高氏は「『ドクターX』を筆頭に、医療ドラマは他ジャンルと比べて根強い人気がある。それに加えて、ドクターヘリが登場する『コード・ブルー』にはヘリに伴うスケール感が生まれ、医療ジャンルの幅が膨らんだ。その新局面が、医療現場や仲間意識などを描く感動的な側面とうまくミックスされ、新しい医療ドラマにつながった」と高く評価した。
テレビ局映画の強いヒット力が映画界に必要
そんななかで、今回の『劇場版コード・ブルー』の大ヒットは、邦画実写シーンに明るい兆しを指すとともに、ドラマ映画のポテンシャルを改めて示した。ヒットのサイクルのようなものがあるが、漫画実写映画が飽和状態にあり動員力が弱まっているいま、今作をきっかけにドラマ映画の新たな企画が増えていき、ドラマ映画再興へとつながることへの期待は高まる。
大高氏は「テレビ局映画には強いヒット力があり、そのビッグヒットの素地が高い作品が映画界には必要。視聴率はそれほど高くなくても、コア層がついている根強い人気ドラマもある。これまでの反省も踏まえつつ、今後はドラマ映画の新機軸を作ってほしい」と期待をかける。
劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-
監督:西浦正記
脚本:安達奈緒子
全国東宝系にて公開中 【公式サイト】(外部サイト)
(C)2018「劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命」製作委員会