浅野忠信、連ドラへの興味続く「ぜひ、これからも」
時代によって変化する“視聴者”との距離感
浅野忠信 ありがとうございます!とても嬉しいです。観てくださった方たちが、僕らの作品を楽しんでくださったんだなという実感を、こういう風に形としていただけるというのは本当に嬉しいですし、自信にも繋がります。本当にありがたいです。
浅野 僕はどちらかというと、映画にばっかり出ているタイプの俳優だったと思うんですけど、そういう活動の中である種の違和感みたいなものが生まれていたんですね。そう感じるようになったのは、チンギス・ハーン役を演じた映画『モンゴル』(08年に日本公開)の撮影でモンゴルに行った時の体験がきっかけでした。訪れたのは、周囲に何も無いような砂漠の町だったんですが、そこにすごく狭いインターネットカフェがあって、そこで子どもたちが小さいパソコンにかぶりついて映画を観ていたんです。その光景を見た時、ここ(日常)に届かなかったらカッコつけて映画とかなんとかって言っているのは嘘になるな、と思ったんです。
――確かに、時代の流れによって観ている方との距離感みたいなものが変化してきていますよね。
浅野 テレビドラマって、手っ取り早く観ている方とコミュニケーションが取れるし、なおかつ、皆さんの反応などを見ながら一緒に作り進められるじゃないですか。そこに喜びが生まれるっていうのは、今の時代ではとても映画的だなと思うんです。ですから、ここにちゃんと力を注がなかったら、自分が映画にこだわっているということが嘘になるんじゃないかなと感じ、いただいたチャンスはどんどん活かしていきたいなと思いました。
「役が勝手に膨らんでいく」映画とドラマとの違い
浅野 ドラマが映画と違うのは、さっきも申し上げたように、ドラマは作品を視聴者の方々と作っていけるところだと思います。もちろんですが、映画って撮影中にオンエアが無いので、現場はどうしても淡々と進んでしまうんです。公開になったら僕らは家でボーっとしているだけで(笑)、緊張感みたいなものが無いんですよね。でもドラマはSNSなどを通してリアルタイムにいろんな声が上がってきて、役が勝手に膨らんでいくというか、勝手にのめり込んでいってしまう感覚みたいなものがあって。これが面白いところだな、と今回思いました。映画よりも「これをやってはダメ」という制約も多かったんですけど、縛られている中で何ができるかが勝負だし、テーマでもありました。
浅野 プロデューサーとまず話したのは、「積極的に怒られること(=挑戦的なこと)をしよう」ということでした。1回で打ち切りになるくらいの覚悟で、メチャクチャやりましょうって言って(笑)。ですから、1つひとつのセリフやシーンの作りをいかに直感的に壊していくかが勝負でした。台本を読んだ時、頭の中に無難に浮かぶイメージは必ず避けるようにしていましたし、共演者の方には誰であれイタズラを仕掛けました。なぜかと言うと、「この場所は自由なんだ」と知ってもらいたかったからです。幸い僕は、弓神のようないい加減な面をかなり持ち合わせていたので、その辺はおおいに役に活かさせていただきました。「ゆがみ」は僕ではなく皆さんが、ふざけて、ふざけて作り上げたイタズラのかたまりです。
「真ん中に居られるタイプではない」初めは不安だった連ドラ主演
浅野 神木君がいなければこのドラマの成功はあり得ませんでした。最初にプロデューサーから「神木君をバディで考えています」と聞いた時、僕が勝手に抱え込んでいたすべてのプレッシャーから解放された気持ちでした。僕自身は、ど真ん中に居られるようなタイプの俳優ではないと思っていて、それは自分の弱さなんですけど、僕が連ドラ主演で大丈夫かな?と不安に感じていた最中に神木君の名前が出てきて、「それならいける!」と思ったんですね。今回が初共演でしたけど、小さい頃からずっとこの世界にいるプロですから、なんともいえない魅力があって、もともと僕の中にも信頼感がありました。ですから、リハーサルから本当に好き勝手にぶつけさせていただきましたし、宣伝活動の時も神木君に頼りっぱなしでした。
浅野 そうですね。神木君は僕のことをきちんと観察してくれていて、リハーサルやテスト、宣伝活動の時も僕が細かくふざけているところをすべて把握してくれていましたし、それに対して全部ちゃんとツッコミを入れてくれていたんですね。僕(弓神)がとことんふざけて、神木君(羽生)がツッコミを入れてっていうような、そういう時間がすごくドラマに活かされていたなと思いますし、1話より2話、2話より3話と回を重ねることで2人の関係がどんどん良くなっていったと思います。神木君、本当にありがとう。
次回作では、“出番の少ないキーマン”を希望!?
浅野 そうですね、そのほかにもたくさんアイデアを出させていただきました。映画の現場でいろいろ学ばせていただいたことを、ドラマの現場にそのまま持ってきたというか。思いついたことはテストやリハーサルでぶつけさせていただきましたし、展開ももっとこうした方がいいのでは?という部分に関しては、台本を自分で書き直して持っていったりしていました。特に最終回はこれでは物足りないなと思って、ものすごく過激なものを書いて持っていったんですけど、大概却下されましたね(笑)。でもそういう過程って、絶対に必要なものだったと思うんです。ですから、僕の至らないところや勝手なアイデア、思いつきに付き合ってくださった共演者とスタッフの皆さんには本当に感謝しています。
浅野 ぜひ、これからもやらせていただきたいですね! 17年に『A LIFE』と『刑事ゆがみ』に出させていただいて思ったのは、やっぱり主役チームは大変なんだな、ということ。ですから次は、たまにしか登場しないけど、実はものすごいキーマンみたいな、そういう役がやりたいですね(笑)。今作で言ったら、山本美月ちゃんが演じたヒズミみたいな。しゃべらないけど毎回出てきて、何かを匂わせる、それで最後すごく重要っていう。そういう役で、今度また賞がもらえれば最高ですね(笑)。
(写真:逢坂聡)