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浅野忠信、連ドラへの興味続く「ぜひ、これからも」

 木曜劇場『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)で民放連ドラ初主演を飾った浅野忠信が、「第10回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」で主演男優賞に輝いた。これまで映画の世界を中心に活躍してきた浅野だが、異国の地で目にしたある“光景”が自身の意識に変化をもたらし、それが17年の活動に繋がったという。キャリアを重ねる中で感じた違和感、そしてテレビドラマと向き合ったことで見えてきたものとは。

時代によって変化する“視聴者”との距離感

――「主演男優賞」おめでとうございます。ちなみに、『刑事ゆがみ』は「作品賞」、また“バディを組んだ”神木隆之介さんも「助演男優賞」を受賞されています。今の率直なお気持ちをお聞かせください。
浅野忠信 ありがとうございます!とても嬉しいです。観てくださった方たちが、僕らの作品を楽しんでくださったんだなという実感を、こういう風に形としていただけるというのは本当に嬉しいですし、自信にも繋がります。本当にありがたいです。
――昨年は、1月期の日曜劇場『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)、そして10月期の『刑事ゆがみ』と、1年間に2本の連続ドラマに出演されました。浅野さんはこれまで映画の世界を中心に活動されて来て、民放連ドラへのご出演は久しぶりのことでしたが、ご自身の中で何か意識の変化みたいなものはあったのでしょうか?
浅野 僕はどちらかというと、映画にばっかり出ているタイプの俳優だったと思うんですけど、そういう活動の中である種の違和感みたいなものが生まれていたんですね。そう感じるようになったのは、チンギス・ハーン役を演じた映画『モンゴル』(08年に日本公開)の撮影でモンゴルに行った時の体験がきっかけでした。訪れたのは、周囲に何も無いような砂漠の町だったんですが、そこにすごく狭いインターネットカフェがあって、そこで子どもたちが小さいパソコンにかぶりついて映画を観ていたんです。その光景を見た時、ここ(日常)に届かなかったらカッコつけて映画とかなんとかって言っているのは嘘になるな、と思ったんです。
 そこからずっと違和感があったし、そのうちに時代の流れでYouTubeとかNetflixとか、手軽にいろんな映像を楽しめるサービスがどんどん出てきて。そういう中で、「映画にこだわる」ということをもう一度よく考えた時に、大きなスクリーン・整った音響施設で観る映画はもちろん楽しいし、それも1つの映画の形だと思うけど、そこに縛られているっていうのは、逆に映画的じゃないなと思ったんですね。スマートフォンで観られてもいいし、1分間のものだってれっきとした作品だし。

――確かに、時代の流れによって観ている方との距離感みたいなものが変化してきていますよね。
浅野 テレビドラマって、手っ取り早く観ている方とコミュニケーションが取れるし、なおかつ、皆さんの反応などを見ながら一緒に作り進められるじゃないですか。そこに喜びが生まれるっていうのは、今の時代ではとても映画的だなと思うんです。ですから、ここにちゃんと力を注がなかったら、自分が映画にこだわっているということが嘘になるんじゃないかなと感じ、いただいたチャンスはどんどん活かしていきたいなと思いました。

「役が勝手に膨らんでいく」映画とドラマとの違い

――『刑事ゆがみ』では民放連ドラ初主演となりましたが、「映画での主演」と「連ドラでの主演」とで、作品への向き合い方や作り方など、何か違いはございましたか?
浅野 ドラマが映画と違うのは、さっきも申し上げたように、ドラマは作品を視聴者の方々と作っていけるところだと思います。もちろんですが、映画って撮影中にオンエアが無いので、現場はどうしても淡々と進んでしまうんです。公開になったら僕らは家でボーっとしているだけで(笑)、緊張感みたいなものが無いんですよね。でもドラマはSNSなどを通してリアルタイムにいろんな声が上がってきて、役が勝手に膨らんでいくというか、勝手にのめり込んでいってしまう感覚みたいなものがあって。これが面白いところだな、と今回思いました。映画よりも「これをやってはダメ」という制約も多かったんですけど、縛られている中で何ができるかが勝負だし、テーマでもありました。
  • 浅野が演じた偏屈な天才肌の刑事・弓神適当

    浅野が演じた偏屈な天才肌の刑事・弓神適当 (C)フジテレビ

  • 浅野が演じた偏屈な天才肌の刑事・弓神適当

    浅野が演じた偏屈な天才肌の刑事・弓神適当 (C)フジテレビ

――今回、浅野さんが演じた弓神適当(ゆがみゆきまさ)は、天才肌の偏屈刑事という役どころでしたが、弓神という人物を演じるためにどのような役作りをされましたか?
浅野 プロデューサーとまず話したのは、「積極的に怒られること(=挑戦的なこと)をしよう」ということでした。1回で打ち切りになるくらいの覚悟で、メチャクチャやりましょうって言って(笑)。ですから、1つひとつのセリフやシーンの作りをいかに直感的に壊していくかが勝負でした。台本を読んだ時、頭の中に無難に浮かぶイメージは必ず避けるようにしていましたし、共演者の方には誰であれイタズラを仕掛けました。なぜかと言うと、「この場所は自由なんだ」と知ってもらいたかったからです。幸い僕は、弓神のようないい加減な面をかなり持ち合わせていたので、その辺はおおいに役に活かさせていただきました。「ゆがみ」は僕ではなく皆さんが、ふざけて、ふざけて作り上げたイタズラのかたまりです。

「真ん中に居られるタイプではない」初めは不安だった連ドラ主演

木曜劇場『刑事ゆがみ』メインビジュアル (C)フジテレビ

木曜劇場『刑事ゆがみ』メインビジュアル (C)フジテレビ

――視聴者・有識者ともに、羽生虎夫を演じた神木隆之介さんとの「バディ感」を支持する声が多く聞かれました。神木さんとバディを演じる上で、撮影前後にどのようなコミュニケーションがあったのでしょうか?
浅野 神木君がいなければこのドラマの成功はあり得ませんでした。最初にプロデューサーから「神木君をバディで考えています」と聞いた時、僕が勝手に抱え込んでいたすべてのプレッシャーから解放された気持ちでした。僕自身は、ど真ん中に居られるようなタイプの俳優ではないと思っていて、それは自分の弱さなんですけど、僕が連ドラ主演で大丈夫かな?と不安に感じていた最中に神木君の名前が出てきて、「それならいける!」と思ったんですね。今回が初共演でしたけど、小さい頃からずっとこの世界にいるプロですから、なんともいえない魅力があって、もともと僕の中にも信頼感がありました。ですから、リハーサルから本当に好き勝手にぶつけさせていただきましたし、宣伝活動の時も神木君に頼りっぱなしでした。
――以前、神木さんにお話を聞いた時、撮影前から浅野さんと徹底的に向き合って、それこそ遠慮なくツッコミを入れられるような関係性を築いていらっしゃったとうかがいました。
浅野 そうですね。神木君は僕のことをきちんと観察してくれていて、リハーサルやテスト、宣伝活動の時も僕が細かくふざけているところをすべて把握してくれていましたし、それに対して全部ちゃんとツッコミを入れてくれていたんですね。僕(弓神)がとことんふざけて、神木君(羽生)がツッコミを入れてっていうような、そういう時間がすごくドラマに活かされていたなと思いますし、1話より2話、2話より3話と回を重ねることで2人の関係がどんどん良くなっていったと思います。神木君、本当にありがとう。

次回作では、“出番の少ないキーマン”を希望!?

(C)フジテレビ

(C)フジテレビ

――撮影の前後でいろいろなアイデアを出されたそうですね。例えば、第5話のエンディングで密かに登場するオダギリジョーさんのテロップをわざと記載しない代わりに、浅野さんの表記をカタカナで「アサノタダノブ」としたのも浅野さんご本人によるアイデアだとお聞きしましたが。
浅野 そうですね、そのほかにもたくさんアイデアを出させていただきました。映画の現場でいろいろ学ばせていただいたことを、ドラマの現場にそのまま持ってきたというか。思いついたことはテストやリハーサルでぶつけさせていただきましたし、展開ももっとこうした方がいいのでは?という部分に関しては、台本を自分で書き直して持っていったりしていました。特に最終回はこれでは物足りないなと思って、ものすごく過激なものを書いて持っていったんですけど、大概却下されましたね(笑)。でもそういう過程って、絶対に必要なものだったと思うんです。ですから、僕の至らないところや勝手なアイデア、思いつきに付き合ってくださった共演者とスタッフの皆さんには本当に感謝しています。

(C)フジテレビ

(C)フジテレビ

 ちょっとした小物をお願いすれば想像以上の物がポケットに隠されていましたし、衣装やメイクも「ゆがみ」らしさをどんどん把握してくれていったのでたくさんの細やかなサポートをいただき、安心して役にのめり込むことができました。美術に関してもさり気ないイタズラが隠されていて本当に楽しめるポイントに溢れていましたし、照明に関しても今までのドラマにはない「ゆがみ」ならではの温かさと鋭さを表現していただき、とても居心地が良かったです。
――ドラマに真剣に向き合った結果、今回このように「主演男優賞」を獲得されて1つの形としても功績を残されたと思いますが、今後の連ドラへの興味関心についてはいかがですか?
浅野 ぜひ、これからもやらせていただきたいですね! 17年に『A LIFE』と『刑事ゆがみ』に出させていただいて思ったのは、やっぱり主役チームは大変なんだな、ということ。ですから次は、たまにしか登場しないけど、実はものすごいキーマンみたいな、そういう役がやりたいですね(笑)。今作で言ったら、山本美月ちゃんが演じたヒズミみたいな。しゃべらないけど毎回出てきて、何かを匂わせる、それで最後すごく重要っていう。そういう役で、今度また賞がもらえれば最高ですね(笑)。

(写真:逢坂聡)

提供元: コンフィデンス

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