『anone』プロデューサー、嘘のレトリックに挑戦「多メディア時代のドラマは“お茶の間エンタメ”ではない」
“ニセモノ”をテーマにストーリー性を重視した新作
「坂元さんとは、『Woman』のあとすぐに次作の話をしていたのですが、スケジュールや状況の折り合いがつかなかったりで、5年が経ってしまいました。その間に、『カルテット』のリズミカルでコミカルな会話劇が高く評価されましたが、坂元さんにとっては、こうした手法は言ってみればお手のもの。でも彼の本質は、社会派で作家性が強い作品でこそ輝くので、そういった部分を引き出したいと思っていました」
「企画自体は以前から話をしていた題材なのですが、“いままでなんの疑いもなく信じていたものがすべて嘘だった”というのは、実は身近に起こっていることであり、普遍的なテーマだと思うんです。生きていくための嘘が持つ力もあるし、嘘が生み出す真もある。今作では、“ニセモノ”というテーマのなかで、いろいろな登場人物のエピソードが出てきますが、なにが本当でなにが嘘かがわからない。しかし、どのエピソードでも、間違いなく人の感情は動いている。こうした“嘘のレトリック”が今作での坂元さんの挑戦です」
「作り手としては、今まで見たことがない広瀬すずを引き出したいと思っているのですが、これまでいろいろな人が、いろいろな色の広瀬すずをすでに開拓している。だから僕たちは、田中裕子さんや小林聡美さん、阿部サダヲさんという芸達者な俳優さんたちと組み合わせたり、坂元さんのセリフをしゃべらせたりすることによって、どういった化学反応を起こすのかを提示していきたいと思っています。その意味では、広瀬さんと相対する俳優さんたちは、本当に魅力的な人たちばかりです」
視聴率だけを目標にした企画はコンテンツとして偏ってしまう
第1話放送前に行われたメディア視聴会で次屋プロデューサーは、「オリジナルにこだわって、ドラマを世の中に出す意味や社会における役割を問いたい」と熱い想いをあふれさせながら、「いろいろな角度から人間愛を考えさせられるドラマになっています。感じたことをなんでも書いてください」と作品への自信をにじませていた。
(文:磯部正和)
新水曜ドラマ『anone』
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生
出演:広瀬すず、田中裕子、瑛太、小林聡美、阿部サダヲ ほか
毎週水曜夜10時〜11時
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