「過保護のカホコ」プロデューサーが語る“1億総過保護時代”社会への問いかけ
過保護をネガティブには捉えていない
「基本的なスタンスとして、自分の身近にある題材のなかからテーマを探してドラマにしています。『女王の教室』では娘の学校の授業参観で驚いたことが発端になっていますし、『○○妻』のときは遊川さんが結婚に迷われていて、僕も結婚生活について考えることがあったところから始まりました。今作も、まさにうちの1人娘が21歳の大学4年生で、かなり過保護に育ててしまい、それを遊川さんに話しているうちに企画として進んでいきました。ただ、過保護とは、過干渉とも甘やかすこととも違って、ネガティブには捉えていません。ドラマはそれを否定も肯定もしませんが、愛情をかけすぎて悪いということはなくて“過保護のススメ”という面もあるのかなと思っています」
「最後は、親離れしました、子離れしましたという結末になるのだけれど、それだけでは連ドラとして厳しいというのが遊川さんの意見でした。そこで、主人公は何もできない女の子ではなく、自分のなかに眠っていたものが、周囲の人々と触れ合うことによって開花していくという展開になりました。加えて、家族や周囲の人間もいろいろな問題を抱えているなか、必死に生きている家族賛歌の物語にしたかった。遊川さんは『1億総過保護時代』という意識を持たれていて、彼ならではの社会への問いかけもあります」
「遊川さんは打ち合わせの際に『それって普通だよね』とよくダメ出しするんです。理屈よりもおもしろいものを採用する。そのためには広くアイデアを募って、おもしろいものだったらどんな立場の人間の意見でも採用します。そこから主人公を含めた登場人物のキャラクターを徹底的に作り上げていく。さらに現場にも足を運んで、俳優たちともしっかり話をするし、そこで生まれた意見も取り入れていきます」
視聴率で恩返しをしたい
「キャストのダンスはありません(笑)。ダメもとのオファーだったのですが、台本を読んでドラマの趣旨を理解したうえで、オリジナル曲を書き下ろしてくださいました。『懐かしい感じ』とだけリクエストさせていただいたところ、ソウルミュージックを意識されたという物語にピッタリのメロディを作っていただいて、一発でハマりました。『家族』というキーワードをしっかり捉えた素敵な曲です。改めて星野さんの底力を感じています」
「僕はディレクター出身のプロデューサーですが、ディレクターはおもしろい作品を完成させることで、スタッフやキャストに対して恩返しできます。でも、プロデューサーは企画をゼロから立ち上げていくにもかかわらず、そこに達成感はないんです。だからこそ、プロデューサーが唯一、みんなに恩返しできるのが視聴率だと思っています。たかが数字ですが、されど数字。そこにこだわりを持って臨んでいます」
昨今のドラマ離れと言われる状況を「制作者として真摯に受け止めている」と語る大平プロデューサー。身近なテーマを取り上げつつ、社会性のある切り口で掘り下げることで、誰もの心に刺さるドラマを送り出していく。
(文:磯部正和)
水曜ドラマ『過保護のカホコ』
脚本:遊川和彦
出演:高畑充希、黒木瞳、竹内涼真、時任三郎 ほか
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