いまや全国のテナントビルから入店依頼が殺到している「天狼院書店」。社長の三浦崇典氏は、100人中99人に反対されたが、書店の未来を感じて起業した。
それを強烈に後押ししたのが吉祥寺「小ざさ」社長・稲垣篤子の『1坪の奇跡』。その後、三浦氏は、吉祥寺「小ざさ」朝の恒例行事、「幻の羊羹行列」に並んだ。これは1969年から行列がとぎれない、恐るべきものだ。
そこで「小ざさ自治会」ならぬ、小ざさ独特の“共同体意識”を感じた三浦氏が次に訪れたのが、人口4700人の仙台・秋保町でおはぎが2万個売れる「主婦の店・さいち」。『売れ続ける理由』の著者で「さいち」の佐藤啓二社長に出会った三浦氏は、2013年、書店を起業する。「小ざさ」と「さいち」がなければ、天狼院書店はなかったかもしれない。
そんな三浦氏が、11月9日に処女作となる『殺し屋のマーケティング』という小説を発売するという。
今回は、「さいち」の経営姿勢が今後のマーケティングの世界にどんなインパクトをもたらすのか。
誰も気づいていないこれからのトレンドを大いに語ってもらおう。
顧客の利益のために限定にする
11月9日に発売となる『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)において、女子大生起業家の主人公・七海の目標は、「受注数世界一の殺しの会社」を作ることである。ポイントなのは、それが「受注数」と言っていることである。「執行数」とは言っていない。実際に、七海の組織には、受注の行列ができる。はたして、七海が本当に目論んでいたことは、いったい、何なのか――。
「コンテンツ主義」の成功は、需要と供給のバランスが、逆転したときにより顕著になる。
すなわち、それまで売れ残っていたのが、売り切れるようになったときに、供給を需要が上回ったことになるので、ビジネスにとって望ましい状態となる。
その「需要過多」の状態が続くと、やがて、欲しいと思う人の「行列」ができ、それが継続すると、やがて「ブランド価値」が芽生えるようになる。
そうなると、「広告」「営業」「PR」などのマーケティング・コストがほとんどかからなくなり、利益が増大する。ビジネスがうまくいくようになる。
それなら、供給量を、そもそも絞ればいいではないかと普通なら、考えそうである。けれども、供給量を絞る、すなわち「限定化」するには、正当な「ストーリー」が必要となる。
率直に言って、「儲かりたいから、限定にします」では、誰も顧客は納得しないだろう。
そうではなく、「顧客の利益のために、限定にします」なら、顧客は納得する。たとえ、結果的に店のほうが利益になったとしても、である。...