正気じゃないけれど……奥深い文豪たちの生き様。42人の文豪が教えてくれる“究極の人間論”。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、意外と少ないかもしれない。「あ、夏目漱石ね」なんて、読んだことがあるふりをしながらも、実は読んだことがないし、ざっくりとしたあらすじさえ語れない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文学が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)。【性】【病気】【お金】【酒】【戦争】【死】をテーマに、文豪たちの知られざる“驚きの素顔”がわかる。文豪42人のヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な生き様”を一挙公開!
相談するうちに肉体関係に発展
谷崎の性に対する執着は晩年になっても衰えることなく、75歳で執筆した傑作長編『瘋癲老人日記』では、老人の「性と死」、いわば“老人の狂い咲き”を書きました。
「瘋癲」は「ふうてん」と読み、精神状態が正常でない人のことを指します。
脚への異常な執着
主人公の77歳の老人は、うんと年が離れた息子の妻に性欲を抱き、彼女の脚に異常な執着をみせます(これまたすごい切り口です)。
自分のことを「予」と称しているところにも、独特の人間性を感じさせます。
老人は自らの死が迫っていることを意識し、ついには彼女の「足型」を自分の墓石に掘り、その土の下に自身の骨を埋めることを夢見るようになります。
ものすごい執念と足フェチぶり
死後、彼女の美しい足に踏んでもらえるなら本望だと、ものすごい執念と足フェチぶりなのです。
谷崎自身、死期が迫っていると感じていたのでしょうか。死とエロスに対する最後の試みともいえます。
マゾヒズムとエゴイズムの2極性
『瘋癲老人日記』は谷崎最後の作品となりましたが、これは口述筆記で完成させられました。
晩年には手が自由に動かなくなっていたため、執筆できなくなっていたのです。
そのため、担当編集者の助けを借り、最後まで走り抜けたわけです。ちなみに担当編集者は女性でした。
すべてエロス小説を生み出すことに
谷崎は結局79歳で亡くなりましたが、若いころから小説を書き始め、休むことなく、半世紀以上にわたって執筆を続け、“文壇の長距離ランナー”のような存在でした。
執筆活動は「狂気」ともいえるほどの情熱と精力を持ち、すべてエロス小説を生み出すことに費やされました。
魂の深みにまで突き刺さる文章
作品によって、漢語から俗語、方言までを書き分ける軽妙洒脱な文体と巧みな語り口には、脱帽させられます。
魂の深みにまで突き刺さる谷崎の文章は、急いで読み飛ばすのではなく、一言ひとこと、ゆっくり、じっくりと味わってもらいたいと思います。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。