2022年3月9日に『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』を出版した株式会社じげん代表取締役社長の平尾丈氏。25歳で社長、30歳でマザーズ上場、35歳で東証一部へ上場し、創業以来12期連続で増収増益を達成した気鋭の起業家である。
その平尾氏と対談するのは、シニフィアン株式会社共同代表の朝倉祐介氏。東京大学在学中にネイキッドテクノロジーを設立。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経てミクシイに入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績回復を達成する。その後、スタンフォード大学客員研究員をはじめ様々な分野で活躍。『ファイナンス思考』の著者としても知られている。
不確実性が高く、前例や正攻法に頼れない時代。そのなかで圧倒的な成果を出しているおふたりに「起業家の思考法」について語っていただいた。
連載第3回は、朝倉氏の『ファイナンス思考』について深く語り合います。
(構成 新田匡央 写真 株式会社じげん・津田咲)
PL脳からの脱却を「別解力」で分析する
平尾丈(以下、平尾):朝倉さんがPL脳とファイナンス思考という新しい概念をつくってくれたのが2018年で、それがすごく広まりましたよね。『ファイナンス思考』を読んで私もリカーリング・レベニュー(将来的に継続する可能性が高い売り上げ)を「積み上げ型収益」というワードをつくって入れたり、PLを大事にしながらも、M&Aで非連続成長を狙ってやっていきました。
PLをちゃんと頑張ろう、そこからしっかりBSも使おう、時価総額を意識しようと考えるようになったのです。私はPLの売上高成長率や利益の成長率だけが企業の価値の源泉ではないかと間違った理解をしていました。もちろんそれも一理あるのですが、それだけではない企業の経営の仕方という多様性を学んだのです。もし2013年に出版されていたら、もっとじげんは良くなっていたんじゃないかと、反省を込めて考えたりもします。
朝倉祐介(以下、朝倉):あれはミクシィ時代の失敗体験、うまくいかなかった経験、発想を変えざるを得ない体験をまとめた内容なんですね。それを『起業家の思考法』の三つのフレームワークに沿って考えてみましょう。
PLがずっと伸びている状態であれば、そんなことを考える必要はなかったと思います。ただ、残念ながら私がミクシィの代表に就任したのは、時価総額が180億円という時代でした。しかも、連日上場来最安値を更新していました。上場以来初の赤字決算を計上したのも、私が就任してすぐの第一四半期でした。
平尾:よく引き受けられましたね。
朝倉:そういうときだったから、伸びていくときの戦い方はできず、開き直って戦わざるを得なかったのです。「別のやり方」に照らし合わせて考えると、これは『起業家の思考法』の問題発見にあたる部分かもしれませんが、私はSNSの再生をしようとは一切思っていませんでした。いや、それは言い過ぎかもしれない。再生できたらいいなとは思っていたものの、それに頼ってはいけないと思っていました。
これは2022年の今、考えると、ごく当たり前のことじゃないですか。でも、2012年にさかのぼって考えると、SNS以外のことをやるという発想はありえなかった。SNSがオンリーワンに近い状態でしたから、それ以外のことをやっていくという発想が、社内にもなかったし社外にもなかった。その方法では無理だからというのは、まさに「別のやり方」めいた発想だったんだと思います。
それは、私が外様だったからこそ言えた「逆転案」だったと思います。ずっと社内で頑張ってきた人たちからすると「SNS以外の事業をするだなんて何を言っているんだ」という話だと思いますし、なかなかその発想自体が出てこなかったでしょうね。
「自分らしいやり方」で言うと、そうは言っても収益構造がしっかりとつくれ、ユニットエコノミクスが成立するような事業体でなければ、続けている意味がないという発想は強烈にありましたね。それは、起業家を経験した私らしいバックグラウンドです。...