起業家と投資家の経験をもつ書籍『ファイナンス思考』の著者・朝倉祐介さんが、ビジネスのトップ層から現場に至るまで、実績を挙げた多士済々をゲストにお迎えするインタビューPodcast「朝倉祐介の経営トーク」。その初回ゲストに、ソースネクスト代表取締役会長兼CEOの松田憲幸さんをお迎えし、同社の戦略商品であるAI翻訳機「ポケトーク」の現況や、同事業をスピンアウトする狙い、ソースネクストの社長交代の背景などについて聞いていきました。そのダイジェストをお送りします(2022年3月3日収録)。
朝倉祐介(以下、朝倉) 先ほど(AI通訳機「ポケトーク」分社について)「外部環境も今がいい」とおっしゃってたじゃないですか。僕なんかは、(コロナ禍で人の動きも止まるなど)今の環境は最悪なんじゃないかと思ったりするけど、そこで「今だ!」と張るところが松田さんの商売人としての才覚の発揮のしどころなんでしょうね。2021年1月に小嶋智彰代表取締役社長兼COOにトップを交代されたのは、ポケトーク事業の分社も見越してのことだったのですか。
松田憲幸(以下、松田) いえ、その時点でポケトークの分社はまだ決めていませんでした。社長交代については私が新卒で入ったIBMを辞めてなぜ起業しようとしたかという話に戻るんですけれども……これは大企業ならどこでも同じでしょうが、20代ですごいからといって役員どころか課長にもなれないわけです。小嶋が新卒で入って20年になろうとしているタイミングで、もともと優秀で活躍していたにもかかわらず、入社して20年たって社長になれなかったらまずいよな、というのは思っていたんです。でないと、次に続く人が出てこない。創業社長が居座り続けると、いい人材も入ってこなくなります。
僕以外が社長になれるところを見せないといけない。これは会社をつくったときからの夢というか願望の一つだったんです。朝倉さんなんて31歳で(ミクシィの)社長になってるんだし(笑)。
朝倉 僕は変わったシチュエーションでしたけど(笑)。松田さんはご自身が勤め人だった経験からも、なるべく若い人にチャンスを与えたいとずっとおっしゃってましたし、その点で、社長を早めに次に譲られたのは大きな驚きではありませんでした。とはいえ松田社長の事業意欲がむちゃくちゃ旺盛なのもよく知っていたので、今回ポケトークの分社化の話があったものですから、(役割交代をされる)タイミングとしてきれいだなと思いました。
松田 ありがとうございます。私は少しあまのじゃくなんですね。新卒で入社したIBMを辞めたのもバブル崩壊直後の1993年のことで、当時の上司から「明日なきソフトウェア業界」という日経コンピュータの記事を見せられて慰留もされたんですけど、それでも「こんな最悪のときに起業して、生き残れたらずっと生き残れるんじゃないですか」と強がったことを言ってました。
いまも最悪のタイミングで集めたいお金が集まらなかったりするわけですけど、ここでうまく離陸できたらいい、ということじゃないかなと思っています。バブル時に集めたお金だと消えてなくなることがあるわけですけど、いまは悪い環境に応じたお金しか得られないでしょうし、売上もそんなにあがらないでしょうから、それをベースに考えればアップサイドしか見えません。
朝倉 最底辺が今なら、好転するしかないですもんね。日本に限らずシリコンバレーのスタートアップでも不況期に立ち上がった会社は強いといわれますよね。
松田 悪いときに出会った人は、結果的にはそれが糧になることは多いなと思います。
朝倉 私自身もリーマンショック直後にコンサルティングファームをやめて仲間とつくったスタートアップに戻ったので、当時はよく理解できていませんでしたが、最悪の時期でしたが、おかげで鍛えられたなという感覚はあります。
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