日本一のマーケッターである神田昌典氏と、孫正義氏から一発OKを連発した伝説的プレゼンテーターで、ベストセラー『社内プレゼンの資料作成術』著者の前田鎌利氏の対談が実現。「伝え」「人を動かす」プロフェショナルであるおふたりに、その神髄を語り合っていただきました。「稼ぐ力」とは相手の心を動かす「伝え方」にほかなりません。では、その「伝え方」はどうすれば身につけることができるのか?ビジネスの本質に迫る熱い対談となりました。11月2日に満を持して開催する「ダイヤモンド社プレミアム白熱講座」の内容の一部にも触れる対談をお楽しみください。(構成:田中泰)
神田昌典さん(以下、神田) 私は「お金を稼がなければならない」というのは、とても貴いことだと思っています。
私たちはビジネスを通じてお金を稼がなければ生きていけない。そのためには、お客様に深く心を寄せることによって、自分が「何」を売っているのかを見つけなければならない。それを見つけたときに、初めて私たちは「稼ぐ」ことができるのです。
人間として、これはほんとうに幸せなことです。
そうじゃありませんか?
前田さんも携帯電話を売ろうとして売れない時期があった。だからこそ、必死で考えて、阪神淡路大震災で連絡がとれない状況が訪れたときに、「どんなときでも人と人を繋げる」ような仕事をしたいと思った、自分の原点に立ち戻った。
そして、都会で働く息子さんにとって携帯電話は、田舎に残した母親といつでも連絡がとれることに「価値」がある、あるいは、社長にとっては携帯電話は、災害時でも社員と連絡がとれて安否確認ができることに「価値」があることに気づいた。その「価値」は、前田さんにとっての「価値」でもある。その「価値」を提供することで、「稼ぐ」ことができるようになり、働く喜びもそこに生まれたわけです。
前田鎌利さん(以下、前田) たしかにそうですね。稼ぐためには、考えるしかなかったわけです。
神田 そう。売るために、必死で考えるのが大事なのです。
誰もが何らかの商品を売ろうとします。だけど、まわりに片っ端から声をかけても、商品を買ってくれる人はいません。なぜなら、似たようなものはあふれているからです。
そこで、商品をもっとわかってもらおうとして、「伝え方」を工夫しだします。
しかし、どんなに工夫しても、それだけでは買ってくれる人はいません。
そこで、「もしかして、商品を必要としている人が違うのかも……」と、今度は声をかける顧客を変え始めます。
そして、顧客のことをもっと知りたいと思い、顧客の心の声に耳を傾けるようになる。このプロセスは、実は、商品とも顧客とも何の関係もなく、自分自身を深く知るためのプロセスなのです。
そして、「売れなかったものが売れるようになる瞬間」とは、自分自身と出会ったときにほかならないのです。つまり、自己探求の結果として、稼げるようになるということです。
前田 なるほど。
神田 もちろん、「お客様の立場に立って考えてください」と私もよく言うわけです。だけど、人間というものは、自分のフィルターを通してしか考えることはできません。
私がクライアントに「お客様がハッピーになる言葉を書いてください」と言うと、一生懸命に考えて何かを書いてくれます。そこで、こう尋ねるのです。
「これって、あなたがハッピーになる言葉ですよね?」
すると、「はい」と。ほとんど100%そうです。
それでいいのです。
自分の姿は鏡がないと見れないように、自分以外の人のことを考えることによってしか自分を掘り下げて考えることはできません。
お客様の立場でモノを考えることによってしか、自分の内面を掘り下げることはできないのです。
そして、自分の内面と相手の思いが繋がったときに、ビジネスパーソンにとって最高の喜びが訪れるのです。
前田 たしかに、自分の「思い」がお客様の「思い」と通じ合ったとき以上に幸せを感じることはありませんよね。
そのためには、自分の「思い」をとことん掘り下げる必要があります。
だから、『社内プレゼンの資料作成術』と『社外プレゼンの資料作成術』で強く訴えたように、相手に伝わるプレゼンをするうえで、いちばん大切なのはテクニックではなく、「念(おも)い」だと思っているんです。...