いま、アルバイトの人手不足が深刻化している。そんななか、人材開発理論の専門家である中原淳氏(東京大学 准教授)と、インテリジェンスHITO総合研究所(テンプグループ)代表の渋谷和久氏が、アルバイト雇用に関する大規模な調査プロジェクトを立ち上げた。その成果をベースにした書籍『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(ダイヤモンド社)も11月に刊行予定だという。
今回の座談会をお願いしたのは、「ハンバーガー大学」など独自の社内制度を早くから立ち上げ、店長やアルバイトの育成に力を入れてきた日本マクドナルドのみなさん。売上上位店である立川伊勢丹前店の齋藤周平店長と六本木ヒルズ店の西村裕美店長、そして同人事本部の日比谷勉氏にお集まりいただき、同社の驚くべき「人手不足対策」についてお話を伺った(撮影/宇佐見利明 構成/前田浩弥)。
このままでは「OMOTENASHI」
どころではない!
【中原淳(以下、中原)】今、業界を問わず「アルバイトの人手不足」が大きな問題となっています。本当に人が採れないし、採れてもすぐに辞めてしまって、足りない。この状況をどのように打開したらいいかを店長さん向けにまとめた『アルバイト・パート[採用・育成]入門』という書籍を現在、執筆しています。
どのようにして人を採用し、育成するかというのは、店長さんがいろんな経験やノウハウをお持ちになっていますし、「スーパー店長語る」みたいな本はすでにたくさんありますが、大規模な調査をもとに「科学的な考察」をまとめた本はこれまでありませんでした。
実際、データからいろいろなことがわかってきたのですが、「現場でどんなことが起こっているのか」とか「どういうノウハウがあるのか」といった生々しい話は、数字だけではなかなか見えてこない。今日はそういう部分を、マクドナルドのお2人の店長に聞かせていただきたいと考えています。よろしくお願いします。
【齋藤周平(以下、齋藤)】よろしくお願いします。私は大学卒業後、2011年に入社しました。初めは町田中町店というドライブスルーのあるお店に配属され、以後2つの店舗で経験を積み重ねて、2015年5月に立川伊勢丹前店の店長になりました。就職前の大学時代からマクドナルドでアルバイトをしていますので、「マクドナルド歴」は9年半ですね。
【西村裕美(以下、西村)】よろしくお願いします。私も2011年に新卒で入社しました。渋谷東映プラザ店が最初の店舗です。2012年2月に、今は閉店している築地の聖路加タワー店で店長になりました。その後異動し、六本木ヒルズ店で店長を務めています。
【中原】本社の方から見て、それぞれのお店の特徴はいかがですか?
【日比谷勉(以下、日比谷)】齋藤店長の立川伊勢丹前店も、西村店長の六本木ヒルズ店も、セールスのポテンシャルが非常に高いお店ですね。裏を返せば、難度が高いお店ということでもあります。ほかの店に比べると、短時間でいろいろな経験をしなければいけないという点で、2つの店舗は共通していますね。
【渋谷和久(以下、渋谷)】いま、とくに東京都内では4年後のオリンピックへの期待が高まっていますよね。でもクライアントのみなさんからは「人手不足で『OMOTENASHI』どころではない!」という声が聞こえてきます。
「人手不足」を具体的に表すと、企業が募集している数に対して、今は250万人くらい人が足りていない状況です。このままいくと、2025年にはどれくらい足りなくなると思いますか?
【齋藤】今の10倍くらいでしょうか……?
【渋谷】2500万人も足りなくなる!?そこまでではありませんが(笑)、推計によると「583万人足りなくなる」と言われています。今の2倍くらい、さらに人が採りづらくなるんですね。
経済が成長していたり、人口が増えたりしていた時代であれば、「人が足りないなら新しく採ればいい」という発想がまかり通っていました。ただ、もう現実に人口が減り始めているので、人を採ろうとしてもなかなか採れない。だから、「いかに人を大事にするか」というふうに、発想を変えなければいけなくなってきました。そこで今日は、中原さんとともに、店長の仕事は具体的にどう変わっていかなければいけないかを探りに来たんです。
【中原】人が足りないときにとらなければいけない方策は、大きく3つあると思うんです。1.採用数を増やすか、2.離職を減らすか、3.生産性を上げるか。このうち、3.生産性を上げるという部分については、マクドナルドさんはすでに厳しく取り組んできている。そこで、1.採用数を増やす、2.離職を減らすという点に絞って、現場のお話を聞かせてください。...