プロがカーテンで18世紀の貴族ドレスを作ってみたら…圧巻の手仕事に「これは眼福!」「まるで“スカーレット”!」!」
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カーテンの端切れが貴族ドレスに!?(写真提供/@aigatajotei)
60秒間でサイズ調整も可能…舞台衣装としての工夫も凝らした豪奢なドレス
「今回の舞台は限られた条件の中で衣裳を制作する必要があり、新しい生地を用意することが難しい状況でした。そんな中ふと目についたのが、以前知人から譲っていただいたカーテンのハギレだったんです」
――“やむなく”の判断だった…?
「いえいえ、実はこれまでも何度かカーテンを使って衣裳を制作したことがあり、クラシカルな文様や重厚な素材感、舞台上で照明をあたったときの発色などが、オペラの舞台衣裳として非常に相性が良い生地だと実感していました。その経験があったからこそ、“このカーテンの質感とハギレの量であれば、オペラにあった18世紀のローブ・ア・ラ・フランチェーゼ(貴族女性のドレス)にできる”と直感し、迷いはありませんでした」
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まずはカーテンの裾部分をほどき…
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端切れをつなぎあわせて1枚の大きな布に
「今回のドレスは、革命前後のフランスを舞台にしたオペラ『アンドレア・シェニエ』(2026年1月17日、18日に広島市JMSアステールプラザにて上演)のために制作した衣裳です。18世紀らしいドレスのシルエットであることはもちろんですが、その時代の空気感を表現すること…舞台全体の統一感や色彩設計を踏まえつつ、単に形を再現するのではなく『その時代に生きていた人が着ていた服』を舞台上に乗せることを最も意識しました」
――どういった資料を参考に?
「18世紀のドレスを実際に見に行ったり、文献や図像資料を読み込んだり…当時の社会や文化を知るために歴史書にも目を通しましたね。当時のパリの納税台帳のような細かい資料や、歴史を題材にしたゲーム、さらにはフランスに住む親戚からの意見など、さまざまな視点からの情報を参考にしています」
――幅広い知識を取り入れることで、説得力のある衣装が作れるのですね。オペラ衣装としての工夫は何かありますか?
「オペラ衣裳ならではの工夫としては、舞台上での早着替えへの対応がありますね。この衣裳は、約1分という非常に短い時間内に着替える必要がありました。そのため、舞台袖に戻ってきた役者の着ている衣裳を脱がせ、このドレスを着せるまでの60秒で体に合わせたサイズ調整まで出来るよう、ドレスの内側に複数の紐や仕組みを施しています」
――60秒でサイズ調整まで…舞台衣装の凄さを改めて感じました。
「またオペラでは、公演日ごとに異なる役者が同じ役を演じることも珍しくありません。将来、別の演目でまったく違う役の衣装として使われることも想定しています。そのため、どの体型の役者にも対応できるよう、縫い方や衣裳の構成にも工夫を施しました」
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丁寧にシワを伸ばし…
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型紙に合わせてパーツをカット
絵画や文献史料を手がかりに型紙から舞台衣装を制作中「『オペラ衣裳家』はまさに私たちの天職です」
「実は『オペラ衣裳家』という呼び名は、私たち自身が勝手に名乗っているものなんです(笑)。ですから、明確な資格や肩書きがある職業ではありません。お仕事の内容としては、舞台衣裳の歴史考察や裏付けを探すことから、デザインから制作、役者の採寸、舞台裏での着付け、舞台袖での早着替えの対応、そして衣裳のクリーニングや保管まで…。舞台衣裳に関わるすべての工程に携わっています」
――お仕事をされている上で、最も大変だと感じる点はなんでしょうか?
「参照できる型紙が存在しない時代の服を扱うことですね。私たちが制作しているオペラ衣裳は、一般に型紙などが流通していない時代の服やドレスが大半で、今でもそれらの時代の服の型紙はほとんど販売されていません。そのため、実物や絵画、文献史料を手がかりに『当時はどのような構造だったのか』を考えながら、自分たちで一から型紙を起こす必要があります」
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スカートにフリルをほどこし…
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背中にはたっぷりのプリーツ!
「さらに、その衣裳が本当にその時代に即したものになっているかどうかを確かめるために、歴史的な裏付けや考証を行わなければなりません。美しさだけでなく、時代性などの正確さを同時に求められることが、この仕事の難しさであり、責任でもあると感じています」
――双子で衣装制作をされているという点も、愛型女帝さんの特徴ですよね。お2人でお仕事をされていて感じているメリットについてお聞かせください。
「それぞれの視点や得意分野を活かしながら、常に意見を交わすことができること。時には議論し、相談し続けられることが双子で制作するメリットですね。1人では見落としてしまう細部や違和感も、2人で確認し合うことで掘り下げることができ、納得できるところまで突き詰めることができると感じています。もともと服を作ることも、歴史を調べることも好きだった私たちにとって、『オペラ衣裳家』はまさに天職だと思います」
「ぜひ一度、劇場にオペラを観に来てほしい! と思っています。私たちがSNSでの発信を始めたのも、『衣裳がきっかけでもいいから、オペラに触れてほしい』という思いがあったからでした。オペラの魅力は歌や音楽だけではありません。その舞台の裏側には、大道具や小道具、照明、メイク、ヘアー、そして衣裳など無数の手仕事や職人技が集まっています。それらで1つの世界を創り上げるのが、オペラという“総合芸術”だと信じています」
――”カーテンドレス”をきっかけに、オペラへの興味を抱いた人も多いと思います。
「私たちの衣裳制作をきっかけに、オペラに興味を持って好きになる人が少しでも増えてくれたら嬉しい。その思いを胸に、これからも制作と発信を続けていきたいと思っています」
カーテンの端切れで作った「18世紀風ドレス」が完成!(写真提供/@aigatajotei)
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