(更新:)
ORICON NEWS
若年層にも浸透したシートマスク、タイパ・成分重視で“朝パック”が習慣化、市場も急拡大
PROFILE 齊藤久美子
(株)スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー 商品開発本部 副本部長。「女子開発ラボ」の初期メンバーとして、『サボリーノ 目ざまシート』の企画・開発を担当。顔にフィットする不織布マスク、ティッシュのように出てくる取り出しやすい設計など、現在のシートマスクの“原型”を作った
この記事をざっくりまとめると…
・「つけている間、何もできない」ため、忙しい人は取り入れられなかったシートマスク
・”スペシャルケア”を、”毎日の習慣”として落とし込んだのが、『サボリーノ』
・「朝用」であることを打ち出して大ヒット、海外の空港免税店にまで置かれるように
・スキンケア商品が選ばれる軸は、“いかに継続できるか”に尽きる
・「つけている間、何もできない」ため、忙しい人は取り入れられなかったシートマスク
・”スペシャルケア”を、”毎日の習慣”として落とし込んだのが、『サボリーノ』
・「朝用」であることを打ち出して大ヒット、海外の空港免税店にまで置かれるように
・スキンケア商品が選ばれる軸は、“いかに継続できるか”に尽きる
以前は「パック=面倒臭い」で、”スペシャルケア”のイメージが強かった
『朝の身支度を短くしたい』との願望からサボリーノが誕生 社内からは反発も
「社内の20代中盤〜後半の女性社員が、”自分たちが欲しい商品を開発する”という目的で集まっていました。当時は働き方改革が施行される前で、遅くまで残業して、飲み会をして、家に帰って、数時間寝て起きて……という生活をしていた人が多かった。そうすると、朝のメイクが本当に面倒臭くて。『朝の身支度をとにかく短くしたい。1分でも長く寝ていたい』という思いから商品開発がスタートしました。夜お酒を飲むと翌日むくみますし、『むくみもクマもシミも取りたい。メイクノリも良くしたい』など様々な問題がありました。そうした問題を解決するためにシートマスクにたどり着き、様々な機能を詰め込みました」
以前のシートマスクは、水分メインのパックが多くあったが、そこに美容成分を多数入れ込み、洗顔からスキンケア、保湿まで一気にできるように開発。このような多機能のシートマスクは、当時画期的なものだった。
「自分たちが”こういうのがあったらいいな”というところから開発に入りましたが、最初は『シートマスクを着けて1分でメイクが完成できたらいいよね』という話をしていました。メイクが完成するのは無理でも『ファンデーションぐらいならできるかも』という話になって、ファンデーションの液が入ったものを試作してみたこともありました。そうしたら肌色の液がべちゃべちゃと落ちてきて失敗…(笑)。いろいろ試行錯誤した結果、『洗顔とスキンケアと保湿下地の要素は入れられるね』というところに落ち着きました。
不織布は薄いタイプや少し硬いタイプなど、たくさん種類があります。朝シートマスクしながら歯磨きするとか『貼りながら何かをしたい』と考えると、やはり伸縮性があり、どんな動作をしても落ちないようにしたい。そこは不織布を選ぶときに大事にしたポイントです。伸びが良く、液含みも貼りつきも良い……そうしたバランスの良い素材を探して採用しました」
『サボリーノ』の開発は、“スキンケアはステップを重ねることこそ正義”という社内の常識を覆すほどのインパクトを与えた。当時は洗顔→化粧水→美容液→乳液……と順番をふんでスキンケアするのが常識で、それをパックだけで済ませてしまうとは言語道断! と強い反発もあったという。
「弊社は石鹸など洗顔の商品が主力だったので、社内の反発も強く『洗顔は別にしたい』という意見が多かったです。サボリーノ開発チームの中でも『やっぱり洗顔はやめる?』と言い出す人たちもいました。でも反発があるということは、そこは絶対に面白いポイントなので、『洗顔は絶対に入れたほうがいいな』と。社内の意見は心に留めつつも、そのまま推し進めました」
「朝」を前面に打ち出して大ヒット 発売当初から在庫がなくなる”バブル状態”に
「当時”朝活”というのが流行っていたこともあり、『朝』を前面に打ち出しました。それまで『朝用のマスク』は世の中になかったので、そこがヒットした要因かなと思います。『朝』を前面に出すことで、結果的に『時短であること』『多機能であること』も全部紐づけてアピールできました」
さらにインバウンドの波を受け、空港にもサボリーノが置かれるように。「海外では洗顔に水を使わず、ふき取りだけで終わらせる文化が根付いています。そこに時短シートマスクがマッチしたのだと思います」。
スキンケア商品を”成分軸”で選ぶ人が増加 韓国トレンド、今話題の美容医療との共存も
「SNS発のトレンドが広がりを魅せ、今では世の中的に『この美容成分はマストで使いたい』という意向が大きく現れています。サボリーノも「ビタミンA」「ビタミンC」と成分名を大きく打ち出したシリーズを発売しましたが、これは『夜にビタミンAを、朝にビタミンCを使うと良い』というSNSのトレンドに着想を得たものでした」
「サボリーノのユーザーは当初20〜30代でしたが、30代後半から40代に差し掛かると、保湿力が物足りなくて、他のブランドに移ってしまう方もいらっしゃいました。そういう年代の方たちに寄り添える新商品を開発したいとスタートしました。30代後半から40代の方々は今美容医療の関心が高い。美容医療自体のハードルが下がってきて『シミやクマも美容医療で取ればいい』という感じになっています。ただ、継続的に通えるかどうかというと、時間もお金もかかります。自宅で最大限のケアができるよう設計したのが今回の新商品です」
現在、美容成分や美容医療などのトレンドは、韓国がけん引している。齊藤さんも「昔は(国内の)雑誌などをよく見ていましたが、今は韓国で流行っているトレンドを見るようにしています。美容医療がどれだけ広がりを見せても、スキンケアを“習慣とする”根本的な部分は変わりません。商品が選ばれる軸は、“いかに継続できるか”に尽きると思います」と話す。
今後のマスク市場において、『サボリーノ』としてはどんな立ち位置を想定しているのだろうか。
「シートマスクの需要が広がり、若年層が取り入れる傾向がある一方で、以前のような“スペシャルケア”としてのシートマスクの立ち位置も戻りつつあります。そのなかで、社内の人たちにインタビュー調査したところ、『サボリーノ』は”生活の中にいてくれる存在”と捉えている人がすごく多くて。『メインでこれを使うときれいになる』ではなく、どんなタイミングでも、そこにいてくれて、安心できる存在。生活のなかで“ずっと使い続けられる”ポジションは、サボリーノ独自のものだなと思います」