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夏休み映画特集2『興行ランキングTOP5!! 2大ヒットの健闘&邦画実写の停滞、洋画実写の限界…』

8月も残りあと数日。夏休みも終わりに近づき、映画シーンにおいて一年を通してのもっとも大きなかきいれどきである夏興行の結果がほぼ出たところで、映画ジャーナリストの大高宏雄氏が話題作の興行成績とそれが示す意味を総括する。

夏興行1、2位は『風立ちぬ』『モンスターズ・ユニバーシティ』

 今年の夏興行(まだ終わってはいないが)では、特徴的なことがいくつかあった。【1】アニメの健闘、【2】邦画の実写作品の停滞、【3】洋画の実写作品の限界。【2】【3】は、停滞、限界と言葉は違うが、どちらも思うような成績が上がらなかったということである。

 ただ、夏興行全体の成績では、昨年を凌いだことを指摘しておきたい。国内最大手の興行会社TOHOシネマズ(約60サイト)をみると、いわゆるお盆興行(8月10日〜16日)では、約150万人を動員した。これは、前年対比で14%増であったとともに、この時期の同社の過去最高成績(動員)でもあった。150万人には、ODS(非映画デジタルコンテンツ)の動員も含まれるが、純粋な映画興行においても好調さを維持したと判断していい。ちなみに、配給会社13社の7月の累計興収は、184億9819万円を記録し、これは昨年の7月累計の15%増であった。8月も昨年を上回るとみられる。

 そうした全体の成績を俯瞰しつつ、前記3項目の特徴に触れる。冒頭の【1】は、『風立ちぬ』と『モンスターズ・ユニバーシティ』が、夏興行の1、2位の成績となったことから明確である。前者が興収100億円を超え、後者は85億円を超えるとみられる。

 アニメの隆盛は、昨年と同じように今年も顕著なのだが、その頂点に位置するのが、前者の邦画のジブリ作品、後者の洋画のピクサー作品ということになる。長い年月にわたり培われた2社の“ブランド力”が、圧倒的に強かったということである。

 『風立ちぬ』は、ジブリ作品のなかで、画期的な興行となった。ファミリー層を客層の大きな要にしていたそれまでのジブリ作品とは、様相が変わったからだ。幅広い客層であるのは同じであるが、年齢が高くなった。これは、ファンタジーから脱却した題材による。青年を主人公に、戦争を介在させた内容が、今のきな臭い時代相とも重なり合い、これまでのジブリファンの幅を一段と広めたといえる。

 『モンスターズ〜』は、前作『モンスターズ・インク』から11年ぶりの新作だが、前作公開時のインパクト、その後の浸透度、これらが世代を超えた信頼感につながった。もちろん、話の筋を前作以前にもっていった新作のおもしろさがそこには存分にあり、それを浸透させたスケールの大きな宣伝も功を奏した。

3、4位『真夏の方程式』『映画 謎解き』が健闘

 項目の【2】であるが、『真夏の方程式』が35億円の手前あたりに留まりそうなのが、一番の大きな原因だといえる。福山雅治主演によるこの“ガリレオ”シリーズは、前作『容疑者xの献身』が49億2000万円の興収だったから、少し期待はずれであったといって差し支えない。しかし、昨年夏の『BRAVE HEARTS 海猿』(73億3000万円)のような派手なイベント映画ではないから、この成績は内容にもよったのかなと思う。環境問題もからめたサスペンスであり、それが全体の印象として、地味な装いを醸し出した。ただ個人的には、作品のこの方向性は悪くないと思う。

 邦画実写2位の『映画 謎解きはディナーのあとで』が、30億円近くだろうか。こちらは、若い女性層というある意味、固定的な客層中心の作品だったから、見込みはどうであれ、このあたりの成績は妥当だろう。『少年H』は15億円あたりと、こちらは戦争を題材にした作品にして、少々問題意識、スケール感とも希薄な感じがあったことが影響したのではないか。

 洋画実写限界の【3】は、『ローン・レンジャー』『ワールド・ウォーZ』(ともに20億円前後)が、上位にくるところで説明される。昨年夏の『アベンジャーズ』(36億1000万円)『アメイジング・スパイダーマン』(31億6000万円)のような派手な娯楽大作ではないが、どちらも米俳優の当代の人気者が出演している。それもあって、30億円を超えられないのは、今の洋画の限界を象徴しているといえるのである。

 健闘があり、もう一方で停滞、限界がある。これらの混在が、この夏興行から見えてきた。これは別段、夏興行に顕著だということではないにしても、一年を通してのもっとも大きなかきいれどきである夏興行には、もっと別の意外な現象を垣間見たかったと思う。

 意外性が、実写作品になかった。ブランドアニメ2本の健闘は、たいしたものだ。だが、その2本のおかげで昨年実績をどれほど凌ごうと、今の映画興行を歴然と覆っている停滞、限界の厚い壁は、びくともしない。この厚い壁は、ダイナミックな宣伝展開で映画業界を驚かせた『スター・トレック イントゥ・ダークネス』でも、打ち破ることはできなかったのである。
(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

2013年 夏休み映画 興行収入ランキング<TOP5+1>


順位映画タイトル推定興行収入特集or
インタビュー
風立ちぬ100億円〜
モンスターズ・ユニバーシティ85〜90億円
真夏の方程式34〜35億円
劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ
     「神速のゲノセクト ミュウツー覚醒」
30〜32億円
映画 謎解きはディナーのあとで約30億円
ワイルド・スピード EURO MISSION20億円前後
ローン・レンジャー20億円前後
ワールド・ウォー Z20億円前後


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