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エビちゃん巻き、盛り髪カールアップ…キレイなお姉さんの象徴だった2000年代の巻き髪ブーム、令和でどのように進化?
“モテ”は自分で作れるイメージが生んだ『モテ髪アイロン』のヒット
その後、1990年代半ばには女性用のストレートアイロンが美容室に普及。さらに、その後の巻き髪ブームへとつながるカールアイロンを、美容室などプロ向けに同社が発売したのが2002年。美髪効果を生む天然鉱石を加工した独自のテクノロジーを搭載した画期的商品だったが、当時は、なかなか売れず、苦戦したという。
「1980年代までは美容室は“パーマ屋さん”と呼ばれ、パーマをかけにいく場所というイメージが定着していました。ですから、カールアイロンを発売した当初はまだ、人々の間にコテによってスタイリングするという文化がありませんでした」(株式会社クレイツ 貝塚真帆氏/以下同)
その風潮に大きな変化をもたらしたのは、2人のファッションアイコンの出現だった。一人は、“エビちゃん”の愛称で人気となったモデルの蛯原友里だ。
当時は、バブルがはじけて、ソバージュやワンレン、ボディコンといった強めなファッションが衰退。“婚活”という言葉が生まれるなど、モテ系、愛され系が人気となっていた時代。そんな女性像を打ち出していた雑誌『CanCam』の専属モデルを2003年より務めていた蛯原友里は、女性たちから絶大な支持を集めるように。そして、彼女が見せた髪型が、その後、“エビちゃん巻き”として一大ブームを巻き起こす、レイヤーの入ったロングヘアをゆるく内側にカールさせた巻き髪だった。
このスタイルを作り上げていたのは、カリスマ美容師の宮村浩気氏。当時は、木村拓哉が美容師を演じたテレビドラマ『ビューティフルライフ』や美容師が技術を競うテレビ番組『シザーズリーグ』などが作られるほど、カリスマ美容師が脚光を浴びていた時代。社会現象も背景に、クレイツは、宮村氏とのコラボで、このアイロンを「モテ髪アイロン」の名で一般向けに発売。すると、エビちゃんのようなヘアスタイルが自分でも作れると爆発的ヒットを呼び、発売当初は数百台だった販売数も、3年間で30万台以上に急増したという。
「“エビちゃん巻き”に代表されるカールアイロンでスタイリングする巻き髪は、当時モテの象徴でした。モデルさん自身ではなく、その髪型を作った美容師さんに焦点を当てたのが、「自分でもモテ髪になれる」という消費者のイメージに繋がったのではないかと思います。宮村さんをはじめ、その後も当時活躍する美容師さんとのコラボ商品は次々にヒットを生み出しました」
安室奈美恵がきっかけ? 今も続く「小顔になりたい」という願望
「みんなが彼女を真似て、ヘアカラーをするようになり、縮毛矯正もブームとなり、髪へのダメージへの意識も高まったことで、パーマ人口が大幅に減りました。現在のように、ウェーブやカールをつける髪のスタイリングにはアイロンを使うということが定着したのは、安室さんの影響も大きかったと思います」
「日本人の美の基準として『小顔』というのはいまや当たり前となっていますが、これは安室奈美恵さんがきっかけとなって広まった価値観だと思います」
2000年代半ばに人気となった「ひし形シルエット」や「Aラインカット」も小顔に見せるために美容師が開発したスタイリングテクニック。その後も、小顔に見えるカットやスタイリング方法は美容業界の中で切磋琢磨しながら進化し続けているという。
強めの“盛り髪”から癒しの“ボブ”まで…世相が反映される巻き髪スタイル
いつの時代もファッションの流行には世相が反映されるものだが、次にそれを象徴するような変化が生じたのが2011年。
「東日本大震災を契機に、ファッションは肩の力が抜けたゆるふわ系など飾らない自然体が人気となり、井川遥さんのような癒し系の女性がファッションアイコンとなりました」
この時期、生まれたのが毛先をワンカールしたショートボブだ。“巻き”といえば、それまでロングが当たり前だったなか、初めてショートヘアにも巻く文化が生まれ、トレンドのひとつに。そんなスタイルを作るのに欠かせないものとなったのが、短めのヘアやコテに慣れない人にも使いやすいブラシ型アイロンだった。
「誰かになりたい」ではなく「自己実現を叶える」ツールとして変化
「SNS時代に入り、流行の発信源が増えたことによって、芸能人の誰誰になりたいという方向性だけではなく、各々が自分の好きなテイストの方を自ら探すようになり、なりたいヘアスタイルも多様になってきました。美容室も今はインスタ集客が重要になっており、お客様もサロンモデルのスタイルをスクショして持って行く時代です。また、ジェンダー的にもボーダレスになっているので、女の子だからモテ系だけではないし、男子が長髪で巻くのもあり。ですから、弊社でもそれまで『女性の美を』と謳ってきましたが、今は、どんな方でもうちのツールを使って自己実現を叶えていただけるような商品開発を行っています」
さらに、今美容業界で一過性のブームとは言い切れなくなってきているのが“韓国ヘア”のトレンドだ。巻きの向きを揃え、顔周りに大きなくびれカールを作る「ヨシンモリ(女神ヘア)」というヘアスタイルが2019年頃から流行り始め、同社もそのトレンドに合わせた商品開発に試行錯誤を続けたという。
「当時、日本で流行っていたのは内巻きと外巻きで作る“ミックス巻き”。32mmのコテを使うのが定番でした。しかし、ヨシンモリは“大きなくびれカール”を作るので、38mm以上のパイプの太さが必要となります。巻きが大きくなる分、カールの取れやすさにも対処しなければなりませんでした」
エビちゃん、安室奈美恵といった時代のトレンドを牽引したアイコンに“どのように近づけるか”を考えていた時代から、今はそれぞれが目指す美、なりたい自分がある時代に。個性を表現するものとして多様化する巻き髪のヘアスタイルが、今後新しいかたちでどう未来に繋がれていくのか注目していきたい。