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荻上直子監督×筒井真理子、映画『波紋』インタビュー 「面白くてやめられないもの」

 荻上直子監督のオリジナル最新作にして、監督自身が歴代最高の脚本と自負する映画『波紋』(公開中)。放射能、介護、新興宗教、障害者差別、独居老人といった、誰もがどこかで見聞きしたことのある現代社会の問題に次々と翻ろうされる主人公・須藤依子を演じた俳優・筒井真理子が、映画『波紋』を縦横無尽に語る。

映画『波紋』荻上直子監督、筒井真理子(撮影:吉原朱美)(C)ORICON NewS inc.

映画『波紋』荻上直子監督、筒井真理子(撮影:吉原朱美)(C)ORICON NewS inc.

――歴代最高の脚本と自負されているとうかがっています。

荻上毎回、毎回、思ってますけどね、これが一番って(笑)。今回は、自分の意地悪な部分を全面的に出そう、という努力はしました。ブラックで邪悪な部分を全部、映画に入れようと思いました。

――荻上監督は『かもめ食堂』の大ヒットで北欧ブームの火付け役とも言われ、以降、「おいしいごはん」が出てくる映画のイメージも。LGBTと差別や育児放棄を含む社会問題をテーマにした『彼らが本気で編むときは、』(17年)では「第67回ベルリン国際映画祭」で日本映画初のテディ審査員特別賞と観客賞をダブル受賞。どこにも行き場のない遺骨に着想を得た『川っぺりムコリッタ』(21年)など、社会問題にも鋭いまなざしを向けてきた。中村倫也主演の『珈琲いかがでしょう』(21年)の脚本・監督を務め、甘くはないけどブラックでもないイメージがあったのですが…。

荻上いままで『かもめ食堂』(2006年)や『めがね』(07年)のイメージが根強くて、“癒し系”、“ほっこり系”と言われることが多かったのですが、もういいかなって(笑)。勇気を出して新しいことをしました、という感じではなく、ずっと模索中です。だんだんオリジナル脚本で映画が撮りづらくなってきている気がしますし、今回はいろいろ吐き出せてよかったです。撮影カメラマンの山本英夫さんのおかげで、すごくいいものができちゃったな、と思っています。

筒井私は今回初めて荻上監督の作品に呼んでいただいたので、これまでの作品との比較はできないのですが、本当に素晴らしい脚本だと思いました。現代社会の問題を絶妙に取り入れてらっしゃってクスクスと笑えるところもあり、木野花さんが演じる水木さん(依子と同じスーパーのパート先の清掃員)のエピソードでは泣きました。素晴らしい作品に参加できて、本当にありがたかったです。

――筒井さんは、早稲田大学在学中に、鴻上尚史さん主宰の劇団「第三舞台」に入って看板女優として活躍され、その後は映像の世界でもご活躍されてきましたが、『淵に立つ』(※)はご自身にとってもターニングポイントになった作品なのでしょうか?(※深田晃司監督の作品で、「第69回カンヌ国際映画祭」「ある視点」部門の審査員賞、多数の映画祭で主演女優賞を受賞)

筒井そうですね。一時期、ドラマのスケジュールでいっぱいで、映画出演のお話しをいただいても断らざるを得ない状況になっていて、働き方改革をしたんです。それで、『淵に立つ』に出演することができました。それから声をかけていただく作品の幅も広がった感じがします。

荻上白石和彌監督の『ひとよ』(19年)を観た時も、筒井さんって面白い俳優さんだなと思いました。

筒井観てくださったんですね! ありがとうございます。

映画『波紋』(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

映画『波紋』(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

――冒頭でマスクをしている人たちを見て、コロナ禍の話なのかと思ったら、直後に福島第一原発事故を伝えるニュースが流れていて、2011年当時のことを結構忘れている自分気づかされました。ほかにも、新興宗教にハマった母親は昨年夏の襲撃事件を想起させますし、障がい者差別、更年期障害、クレーマーや部屋が片付けられない人の心の闇など、いろいろな要素が盛り込まれていました。脚本を書いたそもそものきっかけは?

荻上みんながマスクやトイレットペーパーを買い漁って品薄になるなんて、なんだか繰り返している感じがありますよね。今回の脚本はパンデミックが起きる前に書き上げているので、まさかこんなことになるとは、と驚いています。

 きっかけは、雨の日にとある宗教施設の前を通りかかったら、濡れた傘が何本も置いてあって、以前から身なりのきれいな女性が出入りしているのを目にして気になっていたのですが、傘の数を見て、こんなにもたくさんの人が宗教をよりどころにしているんだ、という気づきから考えていきました。

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