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荻上直子監督×筒井真理子、映画『波紋』インタビュー 「面白くてやめられないもの」

映画『波紋』荻上直子監督、筒井真理子(撮影:吉原朱美)(C)ORICON NewS inc.

映画『波紋』荻上直子監督、筒井真理子(撮影:吉原朱美)(C)ORICON NewS inc.

実は、ものすごく気が弱くてウジウジしがち

――演出面でこだわったことはありますか?

荻上私は本当に演出に自信がなくて、説明が下手で、説明しようとすればするほど、役者さんを困惑させてしまう。そういう失敗をしてきたので、あまり何も言わずに、自分の心がOKだと思ったら「OK」だし、そうでなければ「もう1回」と言おうと決めていただけ。自分の気持ちに忠実になることだけを心がけていました。

――荻上監督が「演出に自信がない」と口にするなんて、意外でした。

筒井なんかきっぱりしてそうですもんね。わかります(笑)。

荻上実は、ものすごく気が弱くて、どうしたらいいかわからなくなって、モジモジ、ウジウジしがちなんです。

筒井でも、そう見えない(笑)。

荻上監督デビューしてから20年、ずっと言われ続けていますよ。

筒井荻上さんがおっしゃってくださったことで混乱することはありませんでした。

荻上説明することを放棄してましたから(笑)。

筒井撮影中、モニターをご覧になる監督が多いのですが、荻上監督はいつもカメラの横にいて、直にお芝居を見てくださってました。本番で、自分でも今のちょっと何か違ったな、と思った時は必ず「もう1回」と言ってくださるし、夫(演:光石研)が倒れているのを見つけるシーンでは、本当に心臓がバクバクしたんですね、荻上監督からも「OK」をいただきました。監督はちゃんと役者を見てくださっているんだな、と思って感動しました。信頼して、安心してお芝居できました。

――『川っぺりムコリッタ』でムロツヨシさんが荻上監督のことを「天敵」とおっしゃっていたのが印象的なのですが。

荻上それは自分の心が「OK」を出すまで、「もう1回」を何度も何度も言っただけです。

筒井そういうことだそうです(笑)。

――ムロさんは『波紋』にもちょっとだけ(約2分)出演されていますね。ちょっと、ホッとしたというか…。1回目というのは偶然の要素もあると思うのですが、2回目以降は必然になってきます。役者にとっても2回目のオファーはうれしいですか?

筒井うれしいと思います。私は、誰に対しても、「もう二度と呼ばれることはないだろう」と思うようにしています。その方が、気が楽なので(笑)。期待しない。呼んでいただいた時にうれしさが倍増します。

映画『波紋』(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

映画『波紋』(C)2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

――自信が持てないながらも、映画を撮り続けるモチベーションは?

荻上私は本当に映画が好きで、映画を作りたくて作りたくてしょうがない。そのモチベーションは、映画監督を目指した時から変わらないですね。

――映画のどこに魅力を感じるのですか?

荻上自分がすでに亡くなった映画監督が遺した作品を観ているように、自分が死んだ後も作品は残っていく、かもしれないから、作品に対する責任を負う覚悟を持ちつつも、わがままでいることが監督の仕事だと思っています。「自分が面白いと思うもの」を突き詰めて作るしかない。それをどれくらいの人が面白いと思ってくれるか、必要としてくれるか、というだけのこと。

 例えばですけど、今回の劇中に出てくる“緑命会”という新興宗教の代表が、依子に怪しげな液体を勧めるシーンがあるのですが、自分が書いた口から出まかせのようなせりふを、キムラ緑子さんが実に面白く演じてくれて、撮影カメラマンがいい感じに撮ってくれて、結果、観客がクスっと笑ってくれるような面白いシーンになる。こんなに楽しいことはないです。

 映画は麻薬みたいところがあって、1回その沼に入ったらなかなか抜けられない。面白くて面白くてしょうがない。ここはこうすればよかった、次はそうしよう、次はあれを試してみよう、と毎回毎回思う。映画は、やめられないです。

――役者はどうなんですか?

筒井私の場合は、自分から遠ければ遠いほど、かけ離れている役ほど面白いと感じるんですね。例えば、子どもを虐待する母親役や性同一性障害の役といった、自分の想像力を超えた役をやる時は、自分でもいろいろと調べますし、専門家にお話しをうかがうこともあります。その方たちの本質的なことが理解出来ないまま演じるのは失礼なことだとも思っていますので。そうやって、役と向き合っていくうちに、何かのきっかけで、これまで理解できなかった役の気持ちやせりふが突然わかる瞬間があるんです。まさにアハ体験ですね。それでキャラクターが自分の中で動き出すと、自然とせりふも入ってくる。その状態が一番理想。それが快感にもなって、まさに麻薬的ななんですよね。私もやめられないですね(笑)。

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