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“バイプレイヤーブーム”に乗り遅れた? 鈴木浩介、壁だらけで負けっぱなしの俳優人生「廃業の危機感、常にある」

鈴木浩介

 今期、『舞いあがれ!』『ブラッシュアップライフ』『スタンドUPスタート』の3作に同時出演し、SNS上では「出過ぎ俳優」と囁かれていた鈴木浩介(48)。’07年の『LIAR GAME』で強烈なキャラを演じ注目を浴び、’19年には『癒されたい男』で初主演。30日には、2作目となる主演ドラマ『帯広ガストロノミー』(WOWOWプラス)が放送される。昨年には第1子を授かり、50代を前にして多忙を極める“名バイプレイヤー”鈴木だが、自身は「バイプレイヤーブームの波に乗れなかった」と話す。その真意を聞いた。

「40歳になってダメだったら諦めようかな…」運命変えた『LIAR GAME』との出会い

 西田敏行に憧れ、青山学院大学在学中に劇団青年座の門を叩いた鈴木浩介。劇団時代は、「アルバイトの掛け持ちをしながらも、あまり深刻には考えていませんでした。ただ役者だけでご飯が食べられるようになるのかなという漠然とした不安に襲われながら、40歳になってダメだったら諦めようかな、ぐらいの気持ちでいました」と振り返る。

 西田の退団をきっかけに自身も30歳で退団すると、その3年後、俳優人生を大きく変える役に巡り合うこととなる――戸田恵梨香、松田翔太主演のヒットドラマ『LIAR GAME』のフクナガユウジ役だ。キノコ頭とメガネがトレードマークで、あだ名は「キノコ」。自分の利益の為ならためらいなく他人を利用して何度も裏切るが、自分が安全な範疇ではヒロインである直(戸田)にアドバイスをするなど、トリックスター的役柄だ。
 鈴木は「キノコ」のハイテンションとは真逆の静かな口調でこう語る。「中高生もVODなどでご覧になっているのか、いまだ幅広い年代の方から“フクナガ”とか“キノコ”とか言われますね。そういう役に巡り会えたのは本当にありがたいです。少しでも顔を覚えてもらえたという意味では、『LIAR GAME』は僕のターニングポイントになったと思います」

 フクナガと言えば、風になびいているようなスカーフと、体にピッタリしたカラフルな衣装。実はそれも監督や衣装と話し合って作った意見であり、特にあのスカーフは鈴木発のアイデアだったと言う。「フクナガのイメージが定着したことについて嫌な想いは一切ない。15年近くも言われ続ける役に出会えるってあまりないですから。本当にありがたいです」

バイプレイヤーブームの恩恵は「一切なかった」 遅れてやってきた“初主演”も喜びなし

 こうして鈴木も“名バイプレイヤー”の仲間入りをしたわけだが、‘17年には遠藤憲一、大杉漣さん、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研を主演にしたドラマ『バイプレイヤーズ』がテレ東系で放送された。また同時に、松重豊、ムロツヨシ、滝藤賢一などの主役抜擢により、多くの“バイプレイヤー”が再評価される現象が起こった。これまで100本を超えるテレビドラマに出演してきた鈴木にも、この恩恵はあったのだろうか。

「一切ないです。そういう意味では、僕は“バイプレイヤーブーム”に乗り遅れています。感覚としてはデビュー当時からずっと一緒で、そのブームがあったから仕事がわーっと増えたかと言えば、そうではない。僕の“バイプレイヤーブーム”はいつ来るんですかね?(笑)」

 とはいえ、バイプレイヤーとして常にいくつもの作品を掛け持ちしながら、日本のドラマ界に大きく貢献してきた。また、世間的なブームとは少しずれたタイミングではあったが、’19年にはドラマ『癒されたい男』(テレ東)で初主演を飾った。初めての主役を演じることに対し、特段、喜びやプレッシャーはなかったという。

「主演もバイプレイヤーも皆、その作品にいるキャラクターに過ぎない。その物語に役割を持って配置されていて、僕は真摯にそれを演じるだけです。主役であろうが脇役であろうが、やっていることやマインドはまったく同じでした」
 今期は『舞いあがれ!』(NHK)、『ブラッシュアップライフ』(日テレ)、『スタンドUPスタート』(フジ)の3作に同時出演。まさに今、“ブーム”が来ているのではないかと問いかけると、鈴木は「これも撮影時期はズレていて、基本的には同じペースで仕事をさせてもらっているんです。そんなに言うほど出てないですよ」と微笑んだ。

 この謙虚さはどこから来るのか。そのヒントは次の言葉にあった。「僕の俳優人生は壁だらけで、しかも負けっぱなし(笑)。というのも、年代ごとに違う難しさがあるんですね。与えられる役柄は年齢によって変わってくるし、狭まることもある。50代に入ってくれば今度は老化との闘いで、セリフを覚えるのも大変になってくる。そもそも仕事がなくなったら引退、ではなく“廃業”。そういった危機感も常にあります」

“いつ終わってもいい”父になり、仕事観に変化「しがみついででも20年は続けたい(笑)」

 そんな彼に、人生2度目となる主演のオファーが舞い込んできた。その作品が、十勝の食や風土が重要な要素となったヒューマンドラマ『帯広ガストロノミー』(WOWOWプラス)だ。鈴木は愛する妻を亡くし、途切れた息子との関係性を修復しようと奮闘する主人公・天笠航平を演じた。

 共演には長谷川京子や滝本美織らが並び、相変わらず“主演”としての気負いはなかった。「だって、脇を固めてくださっている方々の方が主演を多く演じているんですから(笑)。僕が演じた主人公は独創的なアイデアと秀でたプログラミング能力を持ちつつ、ちょっとコミュ障の部分があり、あまり人の目を見て話さないようなキャラクターとして演じました。共演される方はやりにくかったと思います、芝居で目が合わないというのは致命傷ですから。そういう意味で難しい役でしたね」
 帯広を舞台に描かれた本作の撮影は、北海道でのオールロケで敢行された。「以前もドラマで赤平市に行って、北海道のことが大好きになってしまって。今回はちょうど中秋の名月だった時期もあり、皆で月の写真を撮ったりしました。帯広はとにかく空が広い。牧場のシーンで見た空が、今まで見た空で一番きれいでしたね」

 作中では、思春期の息子と上手く向き合えない悩みを抱える不器用な父親役を演じたが、自身は’21年に第一子を授かると、仕事に対する向き合い方に大きな変化があったという。
「それまでは、役者人生はいつ終わってもいいと思っていました。でも子どもができたことで、しがみついてでもあと20年は続けたいという気持ちに変わりました(笑)。テレビと舞台、バランスよく出演していきたいですね。僕はやっぱり舞台が好きなんです」。

 遠藤憲一、小日向文世、故・大杉漣さんら、多くの名バイプレイヤーの活躍を間近で見てきた。彼らが仕事がなかった時期の苦労を嫌というほど知っている。「仕事があることが奇跡。それを諸先輩の背中を見て学ばせていただきました。これからも役者として真摯に歩んでいけたらと思います」


(取材・文=衣輪晋一/撮影=逢坂聡)
■放送情報
『帯広ガストロノミー 帯広市開拓140年 市制施行90年記念長編作品』(外部サイト)
放送チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽
放送時間:3月30日(木)19:00〜(※)放送スケジュールは変更になる場合があります

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