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戦争孤児だったサヘル・ローズ、ウクライナとロシアに思い重ね「祖国を誇れなかった」苦しみ明かす

サヘル・ローズ

 イラン出身の俳優、サヘル・ローズの呼びかけが今、生きづらさを抱えたり、心がざわついたりしている人々の心に響いている。イランが隣国との戦争で困窮した時代に生まれ、身寄りをなくして孤児となり、7歳で現在の養母に引き取られ、8歳で養母とともに来日。貧困や差別といった壮絶な体験をする一方で、「古き良き日本の“お節介”に助けられて今の私がある」と振り返る。最新の著書にも綴った平和への願いや、日本での俳優活動にかける思いを聞いた。

イラン人の自分に養母が言った、「イラクの人を敵だと思ってはいけない」

  • 著書『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』

    著書『言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”』

 サヘル・ローズがTwitterに投稿した、「戦争には敵も味方もなくて、戦争とはすべての人が犠牲者」というメッセージ。壮絶な生い立ちを持つ彼女が語る言葉には、平和と安全の最中に暮らしているとふと忘れがちな説得力がある。

 「ウクライナの人々の苦しみはもちろん、ロシアの人たちが世界で差別を受けているというニュースに心が痛みます。養母はイラン人の私に、いつも『イラクの人を敵だと思ってはいけない。サヘル、イラクに行きなさい』と言って聞かせてくれていました」

 4歳のときに身寄りをなくし孤児院で生活していたサヘルは、後に養母となるフローラさんと出会う。

 「養母の言葉を本当の意味で理解できたのが、2019年10月。イラクを訪れる機会を得て多くの人々と触れ合った、その中には私と同い年の戦争孤児の女性もいました。また元イラク兵だったというおじさんとも、2人で涙を流しながらたくさんの話をしました。孤児になった子どもはたくさんいたけれど、戦争は大人たちの心と体も傷つけるんです」

 国家と国民は違う。サヘルはそう静かに語る。

 「世界中どこでも、隣の国同士は複雑な歴史や感情を抱えています。だけどどちらかの情報に左右されないで、相手の背景を知れば人と人は必ず歩み寄れる。人間同士が手を結べば、歴史は断ち切れる。それが元イラク兵のおじさんと手を握り合いながら私が学んだことでした」

日本で受けたいじめ、与えられたテロリスト役…「私の国はネガティブなイメージでしか見られない?」

サヘル・ローズ

 フローラさんの知人を頼り、サヘルが来日した1990年代初頭、日本には戦禍から逃れた多くのイラン人が暮らしていた。

 「その中には犯罪に手を染める人もいました。子どもは純粋だから、大人が口にする話題やニュースに影響を受けてしまうんですね。学校でひどいいじめに遭い、自殺を覚悟したことも。だけどそれ以上に苦しかったのは、自分の祖国を誇れなかったことでした」

 学費を賄うために外国人エキストラ事務所に登録してからも、その偏見は付いて回った。

 「外国人枠で条件がいいお仕事は、“金髪・青い目”。黒髪で特別容姿がいいわけでもない私が最も多く得られたのは、死体役でした。でも、お金が必要だったので本当に助かったんです。ただ、テロリスト役をいただいたときには正直、悔しい気持ちの方が大きかった。なんで私の国はネガティブなイメージでしか見られないんだろうって──」

 故郷の記憶はほとんどないものの、温かい手料理や美しいペルシャ絨毯など、養母を通してイランの素晴らしさはたくさん吸収していた。

 「イランの素敵なところを知ってもらって、このネガティブなイメージを断ち切りたい。そのためにはエキストラではなく、日本の芸能界で自分の立ち位置を作ろうと心に誓ったんです」

最初は複雑だった物真似「滝川クリサヘル」が転機に、“外国人枠”を超えた活動も

  • サヘル・ローズ

 数えきれないほどのオーディション落選を経て、芸能界で転機となったのが滝川クリステルの物真似“滝川クリサヘル”だった。

 「当初は物真似に複雑な思いもあったんです。名前で呼ばれなかった孤児院時代を思い出すようで…。だけど『物真似も立派な表現。“サヘル”の名前を覚えてもらえるにはしっかりやり切ることだよ』という言葉をいただいたりと、日本の芸能界でもたくさんの方が手を差し伸べてくれました」

 やがてその明るくパワフルな人柄から、バラエティーを超えて活動を広げていく。中でも“外国人枠”に止まらない俳優活動には思い入れが深い。

 「日本には多くの外国人が普通に暮らしています。見た目が“外国人風”の日本人も実はたくさんいますし、私も“日本人の役”をいただくこともあります。言葉で『外国人と共存しよう!』と訴えると押し付けに思われがちだけど、エンタテインメントならそれを静かに深く伝えることができるし、そうした思いを持った制作者の方とお仕事ができるのはとてもやりがいを感じますね」

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