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「女を使った仕事」に救われた元女優…偏見や違法流出動画にも立ち向かう、経歴隠さないレイヤー“澁谷果歩”の覚悟
「AV最高!とは言わないが…」出演して“救われた”、男性社会での生きづらさ
澁谷果歩新卒入社したスポーツ新聞ですね。もともと女子校育ちで男性社会が色濃い環境が初めてで、「普通に生きてるだけでこんな思いするんだ」と驚いたことがたくさんありました。プロ野球担当だったんですが、男性記者から「女は媚を売って取材できるから得だよな」とか言われたり。
──仕事を頑張っても、"女性だから"という評価がついて回る息苦しさが?
澁谷果歩はい。退職後にAV業界に進んだのは好奇心と「面白いネタがつかめるかも」という記者的な下心もありましたが、「女を使って仕事してます!」と振り切れる方が、「普通にしているだけなのに…」とツラさを感じるよりもいいなと思ったのも理由の1つでした。実際、記者時代よりも仕事をする上でだいぶ生きやすくなりましたし、AVに救われた面はたくさんあります。
──ご著書でも元セクシー女優というキャリアをポジティブに捉えていると語られていますね。
澁谷果歩もちろん「AV最高!」と言っているわけじゃないんです。私も身バレによる弊害や違法動画の流出などいろいろありました。女優さんの中には心を病んでしまう子もいます。AV出演の是非はゼロヒャクで語れるものではないけれど、私にとっては総じて「正解だった」という結論に至りました。
「語れることを増やしたい」海外活動のきっかけ、夢は“奨学金設立”
澁谷果歩現役時代にコスプレ系AV会社が「アニメEXPO」(北米最大のアニメイベント)が出展するにあたり、参加させていただいたことがあったんです。昔からアニメやマンガが大好きなのですごく楽しかったし、ファンとの交流も手応えがあって、もっと海外で活動したいと思うようになりました。
──現役時代の海外イベントがきっかけだったんですね。
澁谷果歩はい。“AVじゃない場所”でもこんなに応援してくれるんだ、と良い意味でショックを受けました。この出来事が、今でもモチベーションになっていますね。また私もAV以外に語れることを深めるために、オタク文化についてさらに勉強するようになりました。
──今後の目標は?
澁谷果歩遠い先かもしれないですが、日本でアニメ制作の勉強を夢見ている海外のアニメファンのための奨学金を設立したいんです。私がセカンドキャリアを歩めているのも、彼らの支えはとても大きかったので、恩返しをしたいですね。
「AV女優だから、仕方ない」に違和感、偏見は海外でも
澁谷果歩いきなり胸を触ってくる人は男女問わず多いですね。「他人の体を許可なしに触るのはいけないこと」という認識が適用されないのか(苦笑)、「AV女優だからこういうことしてもいい」と思われているフシはだいぶあるなと思います。
──AV女優はあくまでも職業なのに、プライベートでもAV作品の延長のように扱われてしまう?
澁谷果歩そうですね。ただそれは業界も悪いんです。現役AV女優は、よくインタビューで「エッチ大好き!」と言っています。でも大抵は事務所が言わせていたり、発言を切り取ってるだけ。AV業界に対してネガティブなことは言えない雰囲気もありますし、結果、AV女優はみんな “セックスモンスター”みたいな印象にされてしまうんですよね。
──海外を舞台に活躍されていますが、そうした偏見について国内外で違いは?
澁谷果歩海外にも見下してくる人はいますよ。以前、ちょっとストーカー化したファンがいまして、リアクションを控えていたらネットでデマを流され、暴言を吐かれるようになったんです。ほかのファンがたしなめたところ、その人は「ポルノに出演してたこと自体が恥。これくらい言われても仕方ない」と答えていました。
──現在はご著書の英訳版を準備中とのこと。苦労されている点はありますか。
澁谷果歩実は、翻訳の第一稿が“ポルノ女優みたい”な語り口調…日本語で使わないようなスラングばりばりの“ビッチっぽい”英語で仕上がってきまして。「そうじゃない」とお伝えはしてるんですけど、向こうの出版社としては「元AV女優を全面に売りたい」という思惑もあるみたいです。難しいなと思いながら修正をお願いしてるところです。
“澁谷果歩”を名乗り続ける覚悟 「5年ルール、違法流出動画…堂々と訴えられるように」
【澁谷果歩】私も考えました。ただ「名前を変える=経歴を隠す」のは負けのような気もして。もちろんその選択される方がいてもいいけれど、私は「元AV女優だけど、今は“服を着た活動”をメインにやっています」というサクセスストーリーをお届けしたいんですよね。現役の子にも、これからAV女優になるかもしれない子にも。
──そのために取り組んでいることは?
【澁谷果歩】元AV女優という肩書きを隠しはしないし、利用できるものは利用します。ただ、徐々にそのイメージは薄めていきたい。そのためにまずはAV業界の「5年ルール」(販売から5年以上経過した作品は出演女優が流通停止・動画削除を要請できる)を申請しようと思っています。引退作品が出たのが2018年9月なので、来年まとめて申請するために今は準備を進めています。
──申請をすれば必ず削除されるのですか。
【澁谷果歩】正式にリリースされたものについては、メーカーが責任を持って削除するルールになっています。ただし法律ではなくあくまで業界の自浄ルールなので、対処しないメーカーもあると聞きます。だけど現役の子はメーカーとトラブルを起こしたくないし、引退した子も元AV女優という経歴を隠している場合が多いので、表立って訴えるケースは少ないようです。
──ほかには、たとえば違法サイトにアップされた動画などは?
【澁谷果歩】違法流出した動画についてはメーカーに訴えることもできないですし、自分で1件ごとに対処するしかないんですよね。「結局、我慢を強いられるのはAV女優ばかり…」という状況をそろそろおしまいにしたい。いずれのケースにしても、現役時代と名前を変えずに活動している私だからこそ、表に出て堂々と訴えられると思っています。
──いま現在、AV出演を考えている女性には、どんなことをお伝えしたいですか。
【澁谷果歩】2016年にAV出演強要が問題になったことを契機に、業界はどんどんクリーン化しています。それでもデジタルデータ(動画)は一生残るし、流出のリスクもあります。「若いうちだけの短期バイト」と思ってるかもしれないけど、出演を決める前にはしっかり葛藤した上で自己決定をしてほしいです。