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大河ドラマでも発揮された、大泉洋の“中和力” 史実をも覆すほどの唯一無二の役へと昇華
源頼朝がまさかの女装姿に… 放送後は大河関連ワードが続々とトレンド入り
なかでも、大きな話題を集めたのが、大泉洋が演じる源頼朝だ。北条家の人々の懐に見事に入り込んでかくまわれることになるのだが、頼朝の人間的な魅力に周囲は次第に圧倒されていく。そして、小栗旬が演じる主人公・北条義時も、振り回されまくりながらも頼朝の期待に応えていこうとする様子が描かれている。
「大河なのにこんなにも現代語が飛び交うのか」「とにかくテンポがいい」「笑いもあって楽しめる」というのが、第1話を見ての率直な感想である。これは、三谷幸喜の脚本特有のものだと言えるかもしれない。
実際に1話の最後で、大泉洋と小池栄子の軽妙な掛け合いが。政子(小池栄子)の発案により、頼朝(大泉洋)が女装を施された状態で逃げるシーンがある。これは1話の冒頭で、義時(小栗旬)が後ろに赤い布に覆われた姫(実は女装した頼朝)を乗せて馬を走らせるシーンにつながるのだが、女装した大泉を「姫と呼ぶように」と真剣な顔で言い聞かせる2人の芝居は、もはやコントのようなおもしろさがあった。
異なるジャンルで培われた瞬発力・対応力が武器に インパクトのある見せ場を生み出せる
今回のように、テンポ感があってシリアスから喜劇まで急展開を見せる作品の場合、バラエティで培ってきた瞬発力や対応力は大きな武器となる。より大きな振り幅でギャップを作り出すことができるため、インパクトのある見せ場として視聴者にも色濃く印象が残るのだ。
特に大泉は、『頼朝どうでしょう』『鎌倉どうでしょう』といったワードがSNS上で誕生してしまうほど、『水曜どうでしょう』の影響力が大きく、大泉ファンの視聴者は両番組を重ね合わせながら楽しんでいる傾向が見られる。
たとえ賛否両論が生まれたとしても、大泉は有無を言わさない演技力と存在感で作品をきちんと担保。もともとのポテンシャルとして持っている“大泉洋”という人となりで、史実上では冷酷無情と言われている人物を見事にバランスよく中和。源頼朝というキャラクターには、確実に大泉洋本人の要素が含まれており、パーソナルな魅力によって見事にストーリーを成立させている。
実写版コンテンツから紅白司会まで 大泉洋がもたらす“中和”の力
本来、俳優は自身の人柄とギャップのある役を演じるとき、パーソナルからいかに離れるかを重要視する。いかに振り幅の大きいギャップを見せられるかが、俳優の力量としてはかられるからだ。
しかし大泉の場合は、どのような役柄を演じたとしても、どこかに“大泉洋”を感じさせる一面がある。自分を出した上で、どんな役でも魅力的なものに昇華させる。これが許されるのは大泉洋の培ってきた人柄と演じる力量があるからで、唯一無二の立ち位置を表すものとなっている。
大泉洋の過去作品を振り返れば、これまでにも“中和”してきたことがよく分かる。数多くの実写版コンテンツを演じているが、原作がある作品は元々のキャラクターイメージが強いため、演じる俳優に批判が向くことも少なくない。だが、『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男、『東京喰種トーキョーグール』の真戸呉緒、『探偵はバーにいる』シリーズなど、大泉が演じてきた役はどれもハマり役と評価されている。
朝ドラ『まれ』では、ヒロインの父親役を演じた。一言でいえばクズすぎる父親で、視聴者からも嫌悪感を持たれてしまうほどの役どころであったが、これも大泉の人柄があったからこそ担保されていた。
サバイバルホラー映画『アイアムアヒーロー』では、さらに大泉洋という存在自体が際立つ。グロテスクな描写も多々あるホラー作品にもかかわらず、大泉の登場シーンになると、劇場では笑いが起きていたほどだったとか。
また、紅白歌合戦では、大泉洋が司会だったからこそ、ところどころに寸劇シーンが用意されていた。ヱヴァに搭乗するなど、やや無理矢理感のある演出も巧みに乗りこなして進めていくことができたのは、大泉の対応力があったためと言っても過言ではないだろう。
もちろん『鎌倉殿の13人』にも同様のことがいえる。物語はこれから進んでいくにつれて、冷酷さが増す展開になることが予想される。ただでさえ冷酷なイメージが強い源頼朝を、大泉洋が今後どのように演じていくのか。そして、寄せられる期待にどう応えて中和させていくのか、今後の物語展開を見守っていきたい。