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松下由樹、50代からの女優としての在り方「役者を突き詰めていきたい」
連続ドラマのシリーズ出演を更新「同じ役を演じ続ける楽しさを、いま改めて感じています」
「今回、私にとって初のシリーズ5まで続けられたことをとても嬉しく思っています。シリーズを続けたくても視聴者の皆様に愛されなければなかなか実現できることではないですから。私自身、ひとつの作品で同じ役を演じ続ける楽しさを、いま改めて感じています」
このシリーズの最大の魅力はなんといってもKY刑事の冬彦とベテラン刑事の寅三の“迷コンビ”が織り成すコミカルな掛け合いだ。
「シリーズの最初の頃はお互いに少しずつ距離を縮めていくような感じでしたが、撮影を重ねるごとに台詞の相談をしたり、現場の隅っこに行って2人で掛け合いの練習をしたりして(笑)、自然と阿吽の呼吸でできるようになっていったように思います。冬彦と寅三は息が合っている時もあれば、全く息が合わない時もあるので(笑)、そういった面白さを小泉さんと大事にしながら演じています」
これまで主演を多く経験していながらも、名バイプレイヤーとして作品に深みを出してきた彼女。寅三を演じる際に気をつけていることは「現場ではなるべく小泉さんが自由にお芝居できるようにすること」だという。
「警視殿(冬彦)はKYで傍若無人なところがありますが、それでも許せてしまうキュートなキャラクターなんです。ですから、そういう部分を寅三が壊さないようにと意識しながら演じるようにしています」
キャリアで言えば小泉は松下の後輩にあたる。だが、あくまで主役ファーストで作品ファースト。自分の役柄だけでなく、もっと俯瞰的に作品を盛り上げようとする気概が見えた。
「ある意味ドラマや映画より大変」ターニングポイントとなったバラエティ番組出演
「“役者”として出演して頂きたいというオファーでしたし、こういった番組でトークをするのも初めてだったので新しいチャレンジになりそうだな、楽しそうだなと思ってお引き受けしました。もちろん様々な作品で役者として成長させて頂きましたが、2001年から6年間レギュラー出演させて頂いた『ココリコミラクルタイプ』(フジテレビ系)は私にとってひとつの転機にはなっているのかなと、そんな風に思います」
バラエティという世界へ飛び込んだ結果、コントでの芝居も映画やドラマでの芝居も“役者という意識で挑む”ことには変わりなかった。
「ドラマなら1時間×10話、映画なら2時間で演じるキャラクターを見せていきますが、コントドラマでは2、3分でどういう人物なのかを表現しなくてはいけません。時間的な違いはありますが、どれも“役を演じる”ことには変わりないという意識で挑んでいました。『ココリコミラクルタイプ』の現場はひとつのコントドラマを毎回一発勝負で演じているので、舞台でお芝居しているような緊張感もあって、ある意味ドラマや映画より大変でしたね。NGを出してしまうと全員で頭からもう一回やらなければいけないというプレッシャーの中でお芝居していました。でも楽しかったですし、集中力はこの時に凄く養われたんじゃないかなと思います」
役で世間から嫌われることは「役者冥利に尽きる」
「私は基本的に演じる役柄と自分を比べたり、似ているところをあまり探したりしないんです。例えば今回だったら現場で“寅三先輩”と呼ばれるほうが心地いい。自分がどうというよりも“寅三像”のほうが大事なので、役を客観的にというか、自分自身とは切り離したところで見るようにしているんです。他の作品に関しても、職業を持っている役なのか主婦なのか、あるいは原作ものなのかでアプローチが違ってくるので、まずは作品の中の役柄にどうリアリティを出せるかを大事にしています」
役柄をあくまでも客観的に捉え、まるで職人のように磨き上げたスキルでどんな難役もこなしながら役者道を極めてきた松下。最後に今後の展望について尋ねると、真っすぐな瞳でこう答えた。
「50代という自分の年齢、そして時代にあった様々な作品にチャンレジしていきたいです。それをずっと繰り返しながら生きていけたらいいなと。私はお芝居以外でやってみたいことをあまり考えたことがないんです(笑)。これからも役者という仕事を突き詰めていけたらと思っています」
(取材・文/奥村百恵)
『警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜SEASON5』
出演:小泉孝太郎、松下由樹、安達祐実、戸塚純貴、石田明(NON STYLE)、本宮泰風/石丸謙二郎、加藤茶、中山美穂、片岡鶴太郎