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60年“変わらない”文明堂のCM、「売上に直結しなくても…」裏に込められた老舗の矜持

文明堂

 「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」――カステラ、和洋菓子を製造・販売する老舗『文明堂』のCM『文明堂豆劇場』は、おそらく多くの人が一度は見聞きしたことがあるのではないだろうか。同CMが初めてテレビ放送されたのは、1962年。そこからマイナーチェンジはあったものの、実に59年の間、ほぼ変わらない姿でお茶の間に流れ続けている。この超ロングランCMが生まれた背景、そして「変えない」意図とは? 同社の広報担当者に聞いた。

テレビ黎明期から続くCM、クマか? ネコか? 「カステラ一番」の歌の裏話も

初代のCM『文明堂豆劇場』

初代のCM『文明堂豆劇場』

  • マリオネットを作ったバーグ夫妻

    マリオネットを作ったバーグ夫妻

 『文明堂豆劇場』の看板のもと、横から5体の仔グマが現れ、オッフェンバッハの『天国と地獄』をアレンジした軽やかなピアノとともにカンカンダンスを踊り始める──。お馴染みの文明堂のCMが誕生したのは、日本にテレビが普及し始めた1962年。当時、NHKのテレビ番組に出演していたオーストラリア人のバーグ夫妻(ノーマン&ナンシー)が行っていたマリオネットショーから着想を得て、実際に夫妻に制作を依頼して作られた。

 「当時、高価な菓子というイメージのあったカステラですが、一般家庭への消費拡大を図るという目的で、そのころ最先端だったテレビに着目しました。人形劇は、お子さんにわかりやすく、目を釘付けにする人気コンテンツ。当時は街頭テレビなどもあった時代ですから、お子さんが足を止めると、親御さんも一緒に足を止める。そうしてカステラをアピールするという、狙いがあったんだと思います」(広報担当者/以下同)

 こうして、広く知られることになった『文明堂豆劇場』だったが、視聴者からは踊るぬいぐるみについて、「あの動物は一体なんなんだ?」という疑問の声が寄せられることも多かったそうだ。実は当初、バーグ夫妻はカンカンキャット(ネコ)として制作し演じていたが、多くの視聴者はクマと捉えてしまったという。ダンスの最後でシッポが振られるのが、キャットであった名残りだ。実際、同社が調査したアンケートでも、88%があのぬいぐるみをネコだと思っていなく、半数以上がクマだと認識していたそうだ。「今は正式に“仔グマ”ということに(笑)。バーグ夫妻にも当然、了承を得ています」。

 そして、有名なCMソング「カステラ一番、電話は二番」は、文明堂を東京に進出させた宮崎甚左衛門氏が生みの親。宮崎氏は「肉は一番、電話は二番」と広告を打って効果を上げていた肉料理店のことを知り、「赤坂二番」の電話番号を取得(当時は該当局の電話交換手に番号を告げて電話をかけた)。それが「カステラ一番、電話は二番」のCMソングにつながったというわけだ。

社会や嗜好が変化する中、「変えない」CMに込めた老舗からのメッセージ

  • ノーマン氏が出演したバージョンのCM

    ノーマン氏が出演したバージョンのCM

 約60年、日本のお茶の間に流れ続けているこのCMだが、何度かCMのマイナーチェンジはあった。例えば1978年には、仔グマの代わりにペンギンがダンスをしているバージョンもあったが、これは3ヵ月で姿を消した。

「何度か、少し違うCMを流していたのですが、その都度お客様から『変えないでほしい』という声をいただきました。そこで仔グマのダンスが復活するわけですが、『あれは誰が操っているんだ』という声にお応えして、バーグ夫妻に出演していただいたことも。ですが最終的に原点へと返り、1994年に初代バージョンをリメイクし、そこからまったく変えることなく現在に至ります」

 視聴者や顧客の声に応えるとはいえ、この60年は日本の社会も、消費者の好みも大きく変化している。他の食品メーカーなどでは、流行を取り入れたり、最先端を目指すようなCMが次々に作られているのに、なぜ文明堂は「変えない」のか。

 「それは、『老舗の文明堂ですが、今も元気にやっています』というメッセージを届けたいから。仔グマのぬいぐるみもバーグ夫妻の手作りですし、文明堂もずっと変わらず、手作りと丁寧な製造をしています。それをこのCMで、少しでも感じていただけたら」。

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