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(更新: ORICON NEWS

若年層もザワついた『ハズキルーペ』CMのインパクト “ルーペ=老人”を覆す戦略とは?

 俳優・渡辺謙と女優・菊川怜が出演している『ハズキルーペ』のCM。開始3秒で「世の中の文字は小さすぎて、読めないっ!」と大声を張り上げ、資料の束を後ろに放り投げる。かなりインパクト大の同CMを観て、本来のターゲットではない若年層もSNSを中心に「キレ具合好きなんだけど」、「我が家のブーム」など盛り上がっている。なぜ、渡辺謙があそこまで声を張り上げるに至ったのか?ここまでインパクト大のCMがなぜ作られたのか? CMを制作した張本人、プリヴェ企業再生グループ株式会社(代表取締役会長)松村謙三氏に話を聞いてきた。

あのCMアイデアを発案したのは渡辺謙本人だった

 渡辺謙にCM出演のオファーをしたところ、本人から「僕がCMをやるとしたら、これをやりたい」と直筆のコンテを渡されたと明かす松村氏。映画『ラストサムライ』『バットマン ビギンズ』など数々のハリウッド作品で名演技を披露してきた渡辺自ら「怒り」をテーマにしたシナリオを執筆してきたのだ。その「怒り」のインスピレーションは、渡辺本人が常日頃から企画書や時刻表など自分が目にする活字が本当に小さくて見えないことから沸き起こったリアルな叫びだったという。渡辺は「見ている人に訴えたいんだ」とCMにかける熱い思いを松村氏にぶつけてきた。

 そこから、松村氏は「怒り」をプレゼンスタイルで表現しようと思いつき、CM冒頭の「叫び」シーンが誕生。商品説明のナレーションなどを一切省き、渡辺にすべてを説明してもらうべく脚本をすべて書き直した。

 渡辺は、撮影の2日前からホテルに缶詰めとなり自ら演技の構想を練り続け、本番に臨んだ。そんな渡辺の熱意と“怒り”のこもったCMは今春から放送が開始されるやいなや、SNSでも大いにザワつきを見せていた。

 中でも、Twitterでは「ハズキルーペのCMの全力演技を見てると、渡辺謙はほんとプロだなって思う」「ハズキルーペの渡辺謙のキレ具合好きなんだけど」「ハズキルーペの菊川怜の尻に敷く強度試験のくだりやっぱおもろい」「ハズキルーペのCMで渡辺謙が『企画書も新聞も小さ過ぎて読めなぁい!』と叫ぶのが我が家でブームとなっている」などの反響を巻き起こした。また、同CMのインパクトをタレント・伊集院光が4月9日放送のラジオ『深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)で「テレビを捨ててしまった人は買い直してでも見るべき」とまで絶賛したことも話題を呼んだ。

“怒り”をCMテーマにしたとき、「大丈夫かな?」と不安もあった

 そもそも『ハズキルーペ』は、Hazuki Company株式会社が自社ブランドとして立ち上げたメガネ型拡大鏡で、実は30年以上のロングセラー商品となっている。ブランドを確立するため、50億円を越す広告宣伝費を投入。初代CMでは、俳優・石坂浩二が洒落たリビングで、ハズキルーペをかけ、彼の趣味として知られる鉄道模型を作るという落ち着いたテイストのCMを展開。17年4月から半年に渡って放送されたドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)内でも放送され、シルバー層に向けたドラマの人気とも相まって、知名度を一気に押し上げた。

 CM第2弾では、俳優・舘ひろしが娘とディナーを楽しみながら、窓に映る打ち上げ花火を鑑賞するというダンディーな雰囲気を演出。拡大鏡のイメージにクールでファッショナブルに変えることに寄与した。

 そして今春、これまでのムーディーなテイストを覆す、迫力満点のCMへとつながった。「これまで放映してきたイメージからガラリと変わるので、正直、渡辺さんのイメージを損なわないか、大丈夫かなと不安もありました」と松村氏は回顧。

 だが、松村氏には、もうひとつ渡辺謙を起用したい理由があったという。それは、『ハズキルーペ』の全世代への購買ターゲットの拡大だった。第1弾のCMは、当時60代だった石坂のイメージが浸透。「お年寄り向けのルーペ」というイメージで、実際に60代以上の高齢者へ購買層を獲得した。

 続く、第2弾の舘出演CMでは、購買層が50代にまで拡がりを見せた。そして、今回の渡辺のCMでは、40代から30代まで裾野が広がったのだ。「急に若い世代が夫婦そろって買いに来た」と量販店から報告を受け、渡辺謙の“名”演技が幅広い層の購買意欲を喚起したと松村氏は実感した。

「CMは企業ブランドを作り上げていくメッセージ」 今秋には新たなCMで仕掛ける

 松村氏は「マーケティングこそ、トップの仕事」と豪語する。商品認知の最大の効果はテレビCMだととらえ今後、「広告媒体費を今期100億使おうと思っている」と強気な姿勢を見せた。

 実際にテレビの地上波では数多くの番組でCMを放送。『情報ライブミヤネ屋』(日本テレビ系)、『ひるおび!』(TBS系)、『徹子の部屋』(テレビ朝日系)、『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)などの帯番組など、連日2〜7番組でオンエアされている。

 今秋には、20代をターゲットに新たなCMを投入する予定。その新CMの中身について松村氏は「ビックリすると思いますよ」とニヤリ。

 ゆくゆくは世界へのマーケットを構想していることも明かしてくれた松村氏。文部科学省がまとめた17年度の学校保健統計調査によると、裸眼視力が「1.0未満」の小学生の割合は32.46%と過去最高になった。スマートフォン(スマホ)や携帯ゲーム機などの長時間利用が視力の低下の一因と見られ、日本人の視力低下は社会問題ともなっている。潜在需要の高いハズキルーペが今度はどんなCMを打ち出して、話題をさらうのか注目したい

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