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「クセが強すぎる」キンチョウのCM、50年にわたり受け継がれる“面白さ”の遺伝子
滝藤賢一が主婦に扮する『ティンクル』のCM
1966年“ルーチョンキ”CMから受け継ぐ遺伝子、「広告とは真面目なことを言えばいいわけじゃない」
長澤まさみの関西弁が強烈な『虫コナーズ』のCM
香川照之が少年に扮するキンチョールのCM
――KINCHOのCMはどれも非常にインパクトの強いものばかりですが、どのような意図があるのでしょうか?
小林さんテレビでは日々たくさんのCMが流れていますが、その中で視聴者の皆さんに覚えてもらうことが一番大事だと考えています。弊社は広告出稿量もそれほど多くないですし、できるだけインパクトのある面白いCMで覚えてもらおうという作戦です。もともとCMって、テレビを視聴する上では、正直いらないものじゃないですか(笑)。そういうものを見てもらうためには、面白さやインパクトで注意を喚起できないといけませんから。
――長澤まさみさん出演の『虫コナーズ』など、関西弁を使われることも多いですよね。
小林さん 我々、作っている人間に関西人が多いので、つい“自分に響く言葉”として関西弁を使いがちなのかもしれません。関西以外の地方の皆さんはどう思われるか…という懸念もありますが、下品にならない範囲の関西弁であれば良いかなと思っています。
――いつ頃からこのような面白CMを作られていたのですか?
小林さん 1966年、クレイジー・キャッツの桜井センリさんが出演された『キンチョール』のCMが最初です。当時のCMでは、“商品は正面に向けてまっすぐ持つ”のが当たり前でした。そんな中、桜井さんは逆さに持って「キンチョール、逆さにしたらルーチョンキ」とやったんです。それを当時の担当者が「面白い!」と採用して、結果、そのCMが当たりました。「広告とは真面目なことを言えばいいわけじゃない」と、そのときわかったんですね。弊社のCMは今もこの遺伝子を受け継いでいて、「皆さんに楽しんでもらえれば」という気持ちが込められています。
「金鳥の夏、日本の夏」…伝統と信頼があるからこそ「バカなこともできる」
笹野高史が力士となる『蚊がいなくなるスプレー』CM
小林さん 「金鳥の夏、日本の夏」という蚊取り線香『金鳥の渦巻』のCMをずっと流していますが、ああいう伝統的なものがあるからこそ、その一方でバカなこともできるんです(笑)。伝統と品質から得られる信頼と、娯楽性とのバランスとでもいいましょうか
――毎回、驚かされる内容ですが、アイディアが浮かんでくる背景は?
小林さん 簡単に言うと、“むやみに断らない”ということです。CMクリエイターの方たちって、もともと面白いアイディアをたくさん持っているのに、「どうせ断られるだろう」と思って無難な提案をしていることが多いと思うんです。ですが、弊社ではそれを受け入れる土壌があるんだと思います。そのせいか、クリエイターの人たちから「キンチョーのCMをやってみたい」と言われることは多いですよ。
――奇抜なアイディアを受け入れるだけの、器の大きい社風なんですね。
小林さん 自由な体質ではあると思います。みんなも「出来たものはしゃーない」と思っているんでしょうね(笑)。