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“生き様”にじむ「メイク動画」、魅力伝える進化系コンテンツにタレント続々参入

  • 指原莉乃(左)、峯岸みなみ(右)(C)ORICON NewS inc.

    指原莉乃(左)、峯岸みなみ(右)(C)ORICON NewS inc.

 YouTubeの人気コンテンツである「メイク動画」。素人からプロのメイクアップアーティストまで、様々なメイク術を披露し、今やひとつの動画ジャンルとして確立した人気を誇っている。その中でとくに最近目立ち始めているのが、タレントによるメイク動画の投稿だ。単なるメイクスキルの腕前やビフォーアフターのギャップを競うだけでなく、“生き様”まで滲み出るのが同コンテンツの魅力。多くの人気タレントたちが投稿を始めた背景に迫ってみよう。

コンプレックスを語る柏木由紀、“どすっぴん”の研ナオコ…“リアル”を晒す潔さがカギに

 柏木由紀は、「メイクをするのはコンプレックスをごまかすため」と言い切る。自身のYouTubeチャンネルに投稿したメイク動画が人気を集めているが、その理由は惜しげもなく自身のコンプレックスをさらけ出したことにある。

「SNSに、鼻だけ整形すればいいのにと書かれる」と自虐を交えながら語る動画「【激変】鼻を細く小さく高く見せるメイク術!!」(2020年5月30日)には、「アイドルがここまで話してくれるなんて好感度爆上がり」「努力の人なんですね」と、コメント欄にもその真摯な姿勢と人柄を称賛する書き込みが連なった。

 さらに、「クマ、ニキビ、シミ、毛穴を隠すベースメイク術!」(2020年12月28日)では、初めてスッピンを披露。同じコンプレックスで悩む人に向け、人間味あふれるリアルな顔を晒した潔さに、AKB48活動での「神対応」にも通じるファンへの心配りが見て取れる。実際、「需要しかない」と感謝のコメントが続出。276万再生(3月23日現在)という、自身のチャンネル内でトップの再生回数を叩き出した。

 一方、最近「またメイクしてみました」(2021年2月23日)という動画が注目を集めたのは研ナオコ。大映しのスッピンから始まるそのインパクトと、セレブ感が漂う自宅リビングを背景に、素の研ナオコが黙々とメイクをする様子がどこかユニークに映り、視聴者の関心を集めた。

 長年変えていないという研のメイク術は、正直なところ一般人には参考にならないだろう。しかし、使っているコスメが安価な“プチプラ品”なことに親近感を覚える視聴者が続出。また、メイク中にゆっくり独特の間で話す姿や、マネージャーとのとぼけたやりとりが、「きつい性格だと思っていたけど優しい方なんですね」「人柄の良さがわかる動画」と好評な様子だ。

 垣間見える研の人となりが魅力となり、メイクも研自身のことも楽しむことができるエンタメ動画に昇華している例だと言える。

MCだけでなく、メイク動画でも「有能」ぶりを発揮する指原莉乃

 今年1月1日にYouTubeチャンネルを開設したばかりの指原莉乃。彼女もメイク動画「【超解説】すっぴんからゴリゴリメイクします」(2月26日に)を投稿し、話題となっている。

 動画は、実際に指原が普段しているというメイクを、スッピンの状態から完成まで順を追って紹介する内容。日常で使えるメイクの手法をレクチャーするという、定石のテーマを選ぶところもさることながら、圧巻なのは淀みなく端的なその説明。まるでプレゼンのように、すべての使用商品、メイク工程について「選んだ理由」「もたらされる効果」を、実際の工程を見せながら巧みに説明する。その様子に思わず引き込まれ、気がつくと最後まで動画を見ている。さすがの一言だ。

 この指原のコメント力、話の構成力を総動員した内容には、「わかりやすい」「どんな授業よりも一番真剣に聞いた」「全美容YouTuberで一番信じてる」という声から、「言い方、言い終わり方、勉強になります!」という話し方教室の感想のような声まで集まった。

 メイクには自身がプロデュースするコスメをふんだんに取り入れるなど、ちゃっかり商売人としての顔も見せつつ、あくまで謙虚にその魅力や使い方をレクチャーする。さらには「一重の人」「二重の人」「塗りすぎた人」「もう少しかわいくしたい人」など、視聴者のニーズを細かく拾ってのアドバイスも忘れない。

 その結果、メイクのコツを学ぶ動画としてだけでなく、プロデュース品のPR動画としても成り立っており、まさに三方よしの状態に。改めて指原の有能っぷりを見せつけられる動画となっている。

 このメイク動画は投稿から1ヵ月足らずで580万(3月23日現在)を超える驚異の再生回数を叩き出しており、ファン以外の実用目的の層までも、「指原のことが特別好きなわけではないが、参考になる」とガッチリ掴んだ。指原にとってメイク動画は、自身のよさが存分に発揮できる、新たなキラーコンテンツになり得ることが証明されたと言っていいだろう。

不器用でメイクに疎い…「トホホ」キャラを逆に武器とした峯岸みなみ

 指原よりさかのぼること1年前の2020年1月1日にYouTubeチャンネルを開設した峯岸みなみも、メイク動画を投稿するタレントのひとり。ただし峯岸の場合は、「メイクを落とさずに寝る」「ファンデーションのスポンジは洗わない」「メイクの知識がなくこだわりもない」という残念なキャラクターを前面に出していることが特徴だ。

 初めてのメイク動画では、「【ガチすっぴん】現役アイドルのズボラすぎる毎日メイクチャレンジ」(2020年1月18日)として、洗顔が嫌いでシートマスクで代用する姿や、使いかけのコスメが汚れていても気にしないというズボラさを披露。動画の概要欄でも、視聴者にメイク方法やおすすめコスメのアドバイスを求めるなど、芸能人らしからぬスタイルが共感を呼んだ。

 しかし、美意識の高い小嶋陽菜や、ヘアメイクアーティストの河北裕介などと動画内でコラボをするうちに、徐々にズボラさにも変化が見られるように。最新の動画「【最新版】褒められ毎日メイク【雑談】」(2020年12月20日)では、「汚いスポンジを使うのに抵抗がでてきて、それがすごい成長」という発言とともに、小嶋や河北からのアドバイスを素直に実践し、ズボラが多少改善している。

 これに対し、コメント欄では「素晴らしい!!」「成長している姿をYouTubeで見られるのが楽しみ」などのあたたかいコメントが寄せられ、メイク動画で応援されるという今までになかった展開を見せている。

 このように、峯岸がメイク動画で見せるズボラで不器用な姿は、同じようにズボラでメイクに疎い人からの共感を呼ぶ一方、汚れた道具を洗うようになったことを喜ぶ声など、ほかのタレントには見られない「成長を見守る」という場にもなっているのだ。これは、AKB48というアイドルが辿ってきた道のりに通じるもので、まさに応援したくなるアイドルの真髄。峯岸ならではの独自のメイク動画路線を確立している。

タレントだって「悩みながら生きている」、メイク動画は“ありのまま”を共有する場

 柏木、指原、峯岸のそれぞれの動画を比較すると、ひとつの「メイク動画」というジャンルにあっても、作り手が違うと目的、もたらす効果がこうも違ってくるのかという驚きが隠せない。柏木はコンプレックス克服の手助け、指原は仕事人として結果を出す、峯岸はズボラがもたらす共感と応援。それぞれの個性や人間味が、メイク動画を通じてにじみ出ているのだ。

 研ナオコのメイク動画に至っては、ミラクルひかるによって完コピ動画にされるなど、メイク動画の枠を飛び越えてモノマネの元ネタにまで広がりを見せる。意図せず研のコメディエンヌとしての本領を発揮する結果ともなったのだ。

 かつてタレントがメイクを紹介する目的は、かわいい人がよりかわいく、キレイな人がよりキレイになる方法や商品を知りたいというファンの憧れを意識したものだった。しかし、今、タレントにとって「メイク動画」は、メイクを見せることで人間性や生き様をさらけ出すコンテンツになっているのだ。

 長引くコロナ禍で、多くの人がコミュニケーションに飢えている。人と距離をとる生活が続いているのはタレントも同じことだ。YouTubeなどを通して、自宅から動画でメッセージを発信するタレントが増加しているのは、ありのままの自分をさらけ出すことで、せめて心のディスタンス縮めたいという思いが強くなっているからなのかもしれない。

「メイク動画」は多くの女性が共感でき、その人らしさもにじみ出るメイクという行為を共有しながら、まるで友だちに打ち明けるような雰囲気で悩みを語る。そんなタレントの「素」を見ることができる点が、多くの共感を誘うのだろう。タレントだって普通に暮らし、悩みながら生きているんだ、というありのままの姿をさらけ出すことができるコンテンツとして、今後さらに注目を集めそうだ。
(文/渕上文恵)

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