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“隙のない”大河ドラマ『青天を衝け』 全方位を取り込み「近代史はヒットしない」の定説を覆せるか?

  • 大河ドラマ『青天を衝け』主演の吉沢亮(C)ORICON NewS inc.

    大河ドラマ『青天を衝け』主演の吉沢亮(C)ORICON NewS inc.

 大河ドラマ『青天を衝け』の初回視聴率が20%を達成し、大河ドラマでは『八重の桜』(2013)以来となる好発進を記録。放送後は「大河ドラマ」「青天を衝け」「徳川家康」などツイッターのトレンドにも関連ワードが。主演はほぼ登場せず、子役中心で展開される1話目は毎回注目される。その作品におけるプロローグとなるため、作品全体のエッセンスが散りばめられた内容になることが多い。それを鑑みると同作は「全方位に“隙がない”造り」であることが伺える。

家康の意外な登場方法に、お蚕ダンスも…SNSでも大きなムーブメントに

 大河ドラマ『青天を衝け』は近代日本を扱うということ、今をときめくイケメン俳優の吉沢亮が主演を務めるということで事前の話題性・期待感がかなり高かった。初回放送は視聴率20%を記録。第2回は16・9%とやや数字を落としたが、SNSでは「徳川慶喜と渋沢栄一の人生の対比がうまい」「獅子舞のシーンで感動した」「ペリー来航!」など視聴者から多くの興奮のコメントであふれていた。

 振り返ると、まず話題になったのは最初に徳川慶喜(草なぎ剛)と渋沢栄一(吉沢亮)が出会うシーン。西暦では1864年だがその年は元号が「文久」から始まり、2月20日からは「元治」となるため、「元治」を使う作品も多い。だが同作ではこれを「文久四年」と紹介。これに「芸が細かい」と歴史ファンユーザーが歓喜した。

 次にストーリーテラーとしての徳川家康の登場。「よく明治維新で徳川は倒され近代日本が生まれた、なんて、言われますが、じつはそう、単純なものじゃない」「『徳川は倒され近代日本が生まれた』というのは本当ですかな」など話していたが、前作『麒麟が来る』でも登場していた“家康”を今作にもスライド登板させることで余韻を継続。戦国時代ではなく近代を扱うことへの配慮も行われている。

 そして子役のかわいさ。演技力の高い子役を見つけてくるNHKの底力が垣間見えたほか、養蚕業をしている実家の“お蚕様”がダンスをする…という大森美香脚本作品ならではのユーモアが光る仰天演出。

 最後に竹中直人や小林薫など大河をもともと観ていた人たちの心をしっかりつかむ役者陣を配置。吉沢亮をはじめ、玉木宏、高良健吾、草なぎ剛が出演するなど「イケメン大河」とも揶揄されていたが、脇がしっかりと固められている。大河ドラマファン、歴史ファン、役者ファン、全方位に“隙のない”造りになっているのだ。

“合戦”を描かずにどう物語を展開するか、大河ドラマがいま抱えている課題

 とはいえ、大河ドラマといえばその醍醐味は“合戦”だ。大河ドラマがスタートしてから、甲冑を着て馬で戦場を駆けまわり、大迫力の戦シーンに人々は魅了され、「さすがNHK」といわしめてきた。前作の『麒麟がくる』でも第2回放送で20分近くの合戦シーンが。戦国時代ならではの、槍(やり)や刀、弓矢で落とし穴や投石、火の付いた米俵を転がしたりと、原始的な戦いが繰り広げられ「これぞ大河って感じ」と視聴者を熱狂させていた。

 だがコロナ禍の影響もあったのだろうか。同作の合戦シーンを魅せる時間は一気に減少。山場である、藤吉郎や徳川家康、光秀らが撤退時の最後尾で決死の覚悟で戦うシーンはわずか数分であり、がっかりする視聴者のコメントが多数。「やはり密を回避するために戦シーンが描けないのだろうか」「9000の兵のはずなのに実感がない」とトーンダウンをしていた。迫力があり盛り上がる戦シーンも、世の情勢との兼ね合いでつくっていくことになる。コロナが長引く以上、これは大河ドラマが抱える課題となりそうだ。

 「『青天を衝け』で近代史を扱うことについて反響が大きかったのは、コロナで残念な合戦シーンを観るぐらいなら、合戦シーンがなくても面白いドラマが観たいという視聴者の内なる声もあったのかもしれない」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「物語が進んで“戦シーン”が描けなくなる時代にさしかかったとき、それに肩を並べるほどの“ワクワク感”をいかに出せるかが今作の見どころ。そのための“大森美香脚本”であり、ユーモラスかつ清潔、リズミカルな掛け合いを得意とする大森美香さんの真価がこれで見られるかもしれません」(同氏)

 『青天を衝け』が、“合戦だけが戦ではない”という面を『大河ドラマ』で描くことが出来ればエポックになるかもしれない。主人公である渋沢栄一は「日本資本主義の父」と称される人物であり、手掛けた事業は銀行、実業会社、経済団体、福祉・医療、教育、国際交流や民間外交、関東愛震災の復興など多岐にわたる。現代の社会に直接つながる偉業も多々あるため、「その“身近さ”とサクセスストーリーにはワクワクさせられるはず。また経済的な難しい話も多くなるだろうが、大森美香さんならそれを噛み砕いた形で、説教臭くなく伝えられるはず。さらに大森さんは美しい役者をよりチャーミングに魅せる脚本が得意で“イケメン”とも相性が良い。これまでの大河ドラマとは一味違ったものになるのではないか」と衣輪氏も期待を寄せている。

“イケメン大河”では終わらせない! 吉沢亮の主演としての資質

 その主演・吉沢亮は雑誌『ViVi』による人気企画「国宝級イケメンランキング」では2018年下期1位に。これまでの受賞俳優は謙遜コメントを述べるのがセオリーだったが、吉沢の場合は「だって僕、顔しかイケてないですから(笑)」と発言。学生時代を描いた映画の舞台挨拶に出席すると「中学時代は死ぬほどモテました」と会場の笑いを誘うなどイケメンであることを自認する俳優だ。

 朝ドラ『なつぞら』の好演で広く注目を集め、『青天を衝け』でも「顔が強い!」「イケメンだから大河見ようと思う」「吉沢亮イケメンすぎてストーリーに感情移入できない」「イケメンすぎてテレビが割れそう」など、見た目の美しさ推しのコメントがSNSに並ぶ。つまり、大河の主役をはることで、世間的なイメージである“イケメン”が足かせになることもある。

「同じように“イケメン大河”といわれていた『花燃ゆ』の視聴率が最高16・7%と振るわなかったことを考えると、イケメン即、視聴者の満足につながるとは考えられません。ですが、吉沢亮さんの魅力は“美しさ”は大前提ですが、本質は“飾らない人柄”や“ユーモア”。また第2話で早くも子役から吉沢さんに切り替わったことでも話題になりましたが、吉沢さんのお芝居は、大河ドラマという大きな枠に胸を借りて伸び伸びと演じる、まるで新人のようなみずみずしさもありました。このまま吉沢さんが渋沢栄一の演技を通して、彼自身の枕詞にもなっているイメージを“打破する”姿を同作品内で見せてくれれば、“イケメン大河”という言葉でくくられないコンテンツになるやもしれません」(衣輪氏)

 同作の始まりで北大路欣也がいうセリフ「こんばんは、徳川家康です」もSNSですでにネタ化されている。先述もしたが大河ドラマファン、歴史ファン、役者ファンを取り込み、さらに吉沢亮らの美貌と美しさ押しでない芝居、そしてSNSでの盛り上がりまでも取り込んだ『青天を衝け』が今後どのような話題を提供してくれるか期待したい。

(文/西島亨)

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