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「夫は実は女性だった」結婚8年目衝撃の告白…発達障害の漫画家語る幸せのヒント「カミングアウト後に笑顔が増えた」

 結婚8年目、夫から突然「ワタシ、本当は中身が女性で…」とカミングアウトされた妻・津島つしまさんが描く、トランスジェンダー女性の配偶者との日々を綴ったコミックエッセイ『夫は実は女性でした』(講談社)。センシティブなテーマを明るく穏やかなタッチで描き、「夫婦とは? “普通”とは? を考えるきっかけになった」とSNSで反響を呼んでいる。津島つしまさんにカミングアウト時の心境を始め、2人の関係の変化について聞いた。

“本当の自分”を生きている感じがする…カミングアウト後に笑顔が増えた夫

──“夫”のわふこさんからカミングアウトされたときの心境を教えてください。

津島つしま 「やっぱりか」と。一緒に住んでから彼女のタンスに女性ものの洋服があることに気付いていたので。ただ、私が決めることでも、「そうなんでしょ?」と聞くことでもないので、なんとなく「そうなのかな?」と思っていた程度でした。

──そのときの返事は「早く言えよ〜」というものだったそうですね。

津島つしま はい。ちょうどその頃、2人の関係がなんとなく噛み合ってない気がしていたんです。わふこがカミングアウトしてくれたことで、「私たちが夫婦として上手く関係を築けていなかった理由がわかって良かった」という意味の「早く言えよ〜」でした。問題点がわからなければ改善もできないので。

──なかには「夫に嘘を付かれていた」と傷つき、怒りを覚える妻もいるかもしれません。津島さんが即座に受け入れられた理由は?

津島つしま 複数あるのですが、1つは私自身がパンセクシャル(性別を問わず「好きになった人が好き」という考え方)であること。それと私たち2人が子どもを望んでいなかったことも大きかったかもしれません。たまに「器が大きいですね」といった感想もいただくんですが、そんなことは全くなくて偶然条件が揃っていただけなんです。私と同じ立場で「だったらお別れしよう」と選択される方がいても、それはその方の人生でぜんぜんいいと思います。

──カミングアウト後の2人の関係は?

津島つしま より良いものになりましたね。わふこ自身も「本当の自分を生きている感じがする」と言って笑顔が増えました。私も彼女の心の深いところを理解できたことで繋がりがより強くなったと感じています。

受け入れられたが葛藤もあった…話し合いをするたびに信頼関係が深まる

──カミングアウトは受け入れられたものの、葛藤はゼロではなかったと振り返っています。どんな不安があったのでしょうか?

津島つしま わふこが“本来の自分=女性”として生きていくことについては、大賛成だったんです。ただ、やはり世間一般で言うところの「ふつうの夫婦」ではなくなるので、社会との橋渡し役みたいなことを私がしなければいけない場面も出てくるのかな? というプレッシャーはありました。ほとんどが私の取り越し苦労だったのですが。

── 一緒に下着を買いに行くエピソードもありましたね。

津島つしま 断られたらそれはそれでしょうがないかなと思っていましたが、店員さんたちにはとても親切にしていただいて、「人って優しいんだな」と思いました。最初にブラジャーのフィッティングも、私が一緒に試着室に入ることで了承していただけて。わふこに胸がしっかりあることを確認したとたん、サイズを測る店員さんがプロの目になったのも印象的でしたね。

──多様なジェンダーへの理解は進んできました。ただ、特に上の世代には受け入れがたい人もいるかと思います。ご両親に伝えたときも、最初はパニックになったそうですね。

津島つしま 私の母が「そういう価値観のない時代に育ってきたから」と。ただ、今はわふこと『どうぶつの森』の情報交換をするような関係にまでなりました。やはり受け入れるまでに、多少の時間が必要だったんだと思います。あとはこの漫画を読んでくださった方の暖かい感想にも触れて、「別に人様に後ろ指を指されるようなことでもないんだな」と理解してくれたのかもしれません。そういう意味でも、読者の方には「本当にありがとうございました!」とお伝えしたいです。

──夫婦ならぬ「婦婦円満」な2人、お互いの間で決めごとみたいなものはあるんですか?

津島つしま 明確に決めてるわけではないんですが、話し合いはよくしますね。もともとわふこは口数が多いほうではなく、相談などをしても黙って聞いてくれるのがいいところではあったんです。だけど相手にわかってほしいこと、伝えたいことがあるなら「言わなきゃわからないよ」と。私がそう口を酸っぱくして言い続けてきたことも、カミングアウトに繋がったのかもしれません。

──長く夫婦を続けていると「言わなくても察してほしい」と思いがちです。だけどそれがスレ違いを生むこともあって…。

津島つしま 私は広汎性発達障害という診断を受けていて、その特性からかどうかはわからないんですが、相手が考えていることを言葉で伝えてくれることで、安心感を覚えます。問題点や改善点がはっきりするので、見通しが立つからです。大人数になると逐一みんなに聞いて回るわけにはいかないですし、人が増えるほど関係性も複雑になるので集団行動は苦手ですが、一対一で話をするのは好きなんです。でも「黙っていても察する」というのは一対一でも苦手ですね。エスパーじゃないので無理だなあ…と思ってしまいます(笑)。わふこはおしゃべりなタイプではないですが、言葉に嘘がないですし、誠実に言葉を選ぶ人なので、話し合いをするたびに信頼関係が深まるなと感じます。

夫婦は、一緒に暮らすなかでお互いの理解を深めながら続いていくもの

──答えは1つではないかもしれませんが、津島さんにとって夫婦とは?

津島つしま 人生の相棒ですね。どんなことも完璧にできる人ばかりではないと思うんです。だからこそ相手が苦手なことは自分が補って、自分が苦手なことは相手が補って、そうやってお互いが支え合いながら、毎日を楽しく生きていける関係であれればいいなと思っています。

──わふこさんはトランス女性、津島さんは発達障害とそれぞれの「生きづらさ」を支え合える関係が築かれているんですね。

津島つしま たぶん、まったく「生きづらさ」を抱えていない人なんていないんじゃないかなと思うんですよ。原因は人それぞれ違ったとしても……。高校を卒業して数年後、わふこと再会した時の私は死んでしまいたいくらい落ち込んでいました。その時に淡々と話を聞いてくれたわふこのおかげで安定を取り戻せたんです。ただ、そうやって何度も会ううちに「私も支えられるだけじゃなくて、この人のことを支えられるんじゃないのか」と思って、私から結婚を申し込んだんですね。

──当時はわふこさんがトランスジェンダー(女性)だということは知らなかったけれど?

津島つしま はい。何の根拠もなく、ただのカンみたいなものでした(笑)。でも、そんな私たちが円満にやっていけてるということは、どういう形であっても夫婦って本当に偶然の出会いから始まり、一緒に暮らすなかでお互いの理解を深めながら続いていくものなんだなと感じています。

(文/児玉澄子)
漫画『夫は実は女性でした』
Twitterに掲載された作品に、描き下ろしを加えて収録。
発売元:講談社
価格:900円(税別)

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