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コンビニ米飯棚に各社続々参入 苛烈を極める「カップ型ライス」勝者となるのは?

 スープ業界に新たなトレンドが生まれている。日清食品の『カレーメシ』や『カップヌードル ぶっこみ飯』、セブン‐イレブンでも冷凍チャーハンやピラフといった、手軽に食べられるカップ型米飯商品が各社から登場している。コロナ禍でのテレワーク推奨や自宅で過ごす時間増で、食事の摂り方や時間にも変化が生じたことで、これらの商品の需要も高まりつつある。スープ事業を主軸としていたポッカサッポロフード&ビバレッジからも、8月に2つの新商品を発売。コロナ禍が追い風となった「スナッキングフード」という新たなカテゴリとは。同社の加工食品事業部・高井朋子さん、藤田良美さんに聞いた。

テレワークも追い風になった食スタイルの変化 目標は“米飯棚”への進出

――8月に登場した『じゃがネル』と『トロリ〜ズ』。発売とともに「スナッキングフード」という新しい食スタイルを提案されていますが、コンセプトを教えてください。

【藤田さん】弊社で行なった調査では、昨今食事代わりにお菓子やアイスを食べるなど「間食」を「食事替わり」にする傾向が見られました。決まった時間に食事をするのではなく、小腹がすいたときにお腹を満たし、1日3食ではなく4〜5食食べる、という変化が想像以上に進んでいました。そういうシーンに着目し、「間食以上、食事未満」の新しい食スタイルを「スナッキングフード」としています。

【高井さん】またコロナ禍でテレワーク等が増えた影響もあり、仕事の切れ目に食べるとか、間食をするので昼食は軽めにとか、食べる時間帯や量も変わっているようです。

――もともとの食生活の変化に加え、コロナ禍で加速したんですね。商品開発のきっかけやターゲットは?

【藤田さん】「間食以上、食事未満」のニーズに合った商品を作ろうと考えましたが、スープでは目新しさがないなと…。そこで、我々がスープの素材に使っているジャガイモを使えないかと考え、“マッシュポテト風の軽食ポテト”というアイデアでできたのが『じゃがネル』です。ターゲットは毎日夜遅くまで働いている男性。濃いめの味ですが、スナック感覚で食べられて、小腹を満たせる商品となっています。

【高井さん】『トロリ〜ズ』は、もちもち米と濃厚なソースが絡まる美味しさに、ヘルシーさと手軽さを加えたカップご飯。ターゲットは“働く女性”のランチ時間が十分とれない時でもサッとデスクで食事したい時や、テレワークで仕事の合間に軽くお腹を満たしたい時をターゲットにしていました。でも実際には、看護師さんのようにシフト制で食事をする時間がズレてしまう方たちが手軽に食べらことから、利用してくださっているようです。

――発売後、ユーザーからの反響はそれぞれいかがですか?

【藤田さん】スーパー、コンビニとも好評です。お客様からのSNS投稿を見ると、『じゃがネル』はPCの横で夜食として食べてくださっている方も多くて、私たちの狙いは間違っていなかったと思います。

【高井さん】『トロリ〜ズ』も夜遅くにアニメを観ながら食べてくださったり、授乳中のお母さんがお子様を寝かせつけた隙に食べてくださる例もあるようです。

――どちらも巣ごもり生活や夜型になったライフスタイルにもマッチしているんですね。ちなみに、展開する商品が増えてしまうと、スーパーやコンビニの棚の確保に苦労しそうですが…これらの商品はどのカテゴリに置かれているのでしょうか?

【藤田さん】基本的には店舗に任せています。コンビニではスープの棚ですが、スーパーでは米飯の棚にも入がって場合もあります。私たちとしては、『じゃがネル』や『トロリ〜ズ』のように間食シーンに食べられる商品を集めて、レトルトご飯など置かれている“米飯”の棚に“間食以上食事未満”の軽食のカテゴリを作っていきと思っています。

【高井さん】両商品とも“汁物”と言う扱われ方ではなく、新しい食カテゴリの提案としてスープや米飯でくくらない“間食以上食事未満”という置かれた方がお客様にもわかりやすいですから。

40年のノウハウと開発者の執念 顧客とともに作り上げる食文化

――御社は「スープ事業」を展開されて40年ですが、スープ商品に止まらず、様々なカテゴリでの商品展開がユニークです。現在の商品開発にこれまでに培われたノウハウが活かされている部分もありますか?

【藤田さん】粉末を溶けやすくする「造粒(ぞうりゅう)」の技術は誇りに思っています。スープは昔よりも格段に溶けやすくなっていますが、それがあるから『じゃがネル』も開発できました。また『トロリ〜ズ』が3分で食べられるのも、戻りやすい米と、米に染み入りやすいスープの技術の掛け合わせで実現しています。

【高井さん】あとは、商品開発にかけるスタッフの“熱い想い”ですね。自社の研究メンバーが根気強くて、絶対に妥協しないんです。我々事業部のスタッフもいろいろな改良依頼をしながら、何度も試作を繰り返して、商品を作り上げています。

――ノウハウがあるからこそ妥協しない姿勢があるんですね。今後の商品展開としての取り組みを教えてください。

【高井さん】8月の組織変更で打ち出したのが「ビヨンド・ザ・スープ」(スープを超えていこう)というスローガンでした。スープ以外の領域も拡大し、商品展開していこうと考えています。

――組織変更では「加工商品事業部」が新設され、『じゃがネル』も『トロリ〜ズ』も同部の商品になるんですよね、スープだと季節や気温に左右されますが、今回のカップ米飯商品は、御社としても新規市場の開拓にも繋がりますね。

【高井さん】スープを超えながら「未来の食の当たり前」をお客様に提供していきたい。人々の生活スタイルや働き方、さらに機能性や美味しさなど、いろんな軸で新しいことをやりたいし、お客様の反応を聞きながらブラッシュアップしていきたいです。
――実際に、お客さんの意見を反映されることも多いのですか?

【高井さん】『じっくりコトコト』のコミュニティサイトで座談会を行なっていて、たとえば「スープをパスタソースとして使ってみました」という意見があったら、それを販促物に使わせてもらったり。また「何味のスープが好きですか?」と聞いて、人気の高いものから商品化を検討することもあります。

――消費者と一緒に商品を作り上げていく感覚ですね。

【藤田さん】そうですね。今回の新商品に関しても「こういう使い方もあるよ」と言われたら、そっちの方向にブラッシュアップしてみるとか。よりお客様の求める形に商品を変えていけたらと……。そこは日々フットワークを軽くして考えています。

――これまで先駆者としてさまざまな商品を開発されてきた御社ですが、会社全体として、新しいアイデアを出しやすい雰囲気があるのですか?

【藤田さん】意見を出しやすい雰囲気はあります。失敗を恐れないというか「チャレンジしてダメなら変えればいい」という考え方があるので。

――定番商品に固執しない柔軟な商品アイデア出しから、時流をみて顧客の声を迅速に商品へ反映していく姿勢を感じます。

【高井さん】これまでも缶入りスープを作ったり、ホットの自動販売機を導入したり、「あったらいいな」と思うものを開発してきた企業風土があります。そういう背景に乗っ取り、「未来の食の当たり前」となる新商品を今後も開発したいと考えています。

 コロナの影響で新しい生活様式になり、私たちの食スタイルにも変化が生じた。ランチで利用されることの多かったカップ型商品の消費シーンの幅も拡大。それにより、今後もカップ型米飯商品の展開は加速することが推測される。米飯に限らず、スープ、ラーメン等でも棚の“ボーダレス化”が進み、商品陳列スタイルが変わっていく可能性も。今後も米飯をはじめとしたカップ型商品の動向に注目していきたい。

(取材・文/水野幸則)

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