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19万人を救うゲイ精神科医が綴る“140字” SNSの言葉の刃から守る「心のお守り」
10年前に開設したTwitterアカウントを再び始めたワケ
【Tomy】実は、アカウント自体は10年前から持っていましたが、ほぼ放置していました。それまでは、ブログを発信のメインツールにしていたので、Twitterは書籍の告知用に使っていたくらいだったんです。
――そうなんですね。そこからTwitterを今のように動かすきっかけになったのは?
【Tomy】Twitterにハマっているという友人と話す機会があり、話を聞くうちにTwitterはちゃんと使いこなすと楽しそうだなと思ったのがきっかけです。長くブログを続けていて、お悩み相談や知恵袋的な内容を発信した時にも、反応がよかったんです。これまでの経験から、書きたいこと、伝えたいことがたくさんありましたし、Twitterでもっと多くの人に見てもらえる役立てる内容を発信してみようと思いました。
――ブログとは異なり、Twitterは文字数制限がある中で、人々の気持ちを軽くする文章、言葉選びには毎回感銘を受けます。
【Tomy】ありがとうございます。もともと文章を書くのが好きで、140文字で完結する言葉を発信するというのはとても自分に合っていました。
ストレスを減らすたった一つの方法。
? ゲイの精神科医Tomy (@PdoctorTomy) August 5, 2019
それは「手放す」こと。
執着を手放す。
「こうならなきゃいけない」を手放す。
人をコントロールしたい気持ちを手放す。
手放せるものは沢山あるわ。手放せば手放すほど心は楽になっていく。
最後にどうしても手放せないものが残る。これが生きる理由よ。
【Tomy】2月に書籍になった『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)で、最初に紹介している「ストレスを減らすたった一つの方法。それは『手放す』ことよ。」という言葉です。このつぶやきをきっかけに、フォロワーさんが一気に増えたように思います。
――Tomy先生の“言葉の治療”の元がそこから始まったんですね。メインだったブログからTwitter移行して、今までの反響をどのように感じていますか。
【Tomy】Twitterはリアクションが早くて拡散スピードが速いことに驚きました。1回つぶやくと数分で「いいね」が、100、200って増えていくんです。ブログは一生懸命書いてもここまでの反応が見られないので(笑)。精神科医をしていて、1日で診られる患者さんの数も時間も限られているので、Twitterで即反応がわかるのは嬉しいことです。
Tomy流Twitterとの付き合い方 フォロワーとの交流は「いいね」のみ
【Tomy】自分の経験はもちろん、精神科医としても日常で使えそうな言葉のメモはあります。伝えたい言葉はたくさんありますし、診察の合間にささっと頭に降りてきた言葉をツイートすることもあるんです。
――投稿をする上で心がけていることはなんですか?
【Tomy】Twitterは基本的に一方的にアテクシの役に立つ言葉だけが流れて見られるようにしています。なので、リアルで交流したことのある人にはコメントを残すこともありますが、フォロワーさんのツイートには「いいね」しかしません。
――Twitterはご自身の気持ちを吐き出すのではなく、読んでくれた誰かを楽にできる言葉を発信する場所なんですね。
【Tomy】誰かのつぶやきにリプをしたりすると、それが表示されて見た人がよくわからない状態になって、何を伝えたいアカウントなのかがわからなくなってしまうので……。コメントをいただいた方には、いいねで返すようにしています。
――Tomy先生から「いいね」をもらえるだけでも、フォロワーにとっては嬉しいことだと思います。
不思議とパワーをもらえる一人称 「アテクシ」がアイコン的存在に
【Tomy】投稿を始めて4ヵ月くらいしたころに、編集者の方から連絡をいただいたんです。Twitterから書籍化になるということは全く考えていなかったので、連絡をいただいたときには驚きました。
――ご自身のつぶやきから厳選された言葉たちが1冊に詰まっていると思います。書籍になることで、こだわった部分はありますか。
【Tomy】こだわりなんてなにも……(笑)。アテクシは、ただツイートしただけなんです(笑)。こだわったのは編集者さんだと思います。完全に素材を活かしていただいて、アテクシのつぶやきをいつでも読めるように本にしていただけて、とっても良い本になったなと思っています。
――Twitter上で先生は自身のことを「私」でも「僕」でもなく「アテクシ」を使われていますが、とてもインパクトがありますよね。「アテクシ」はどのように生まれたのでしょうか。
【Tomy】Twitterにはキャッチーさが必要だと思い10年前から「アテクシ」を使っています。ゲイといったらオネエだしオネエというと、私とかアタシはありがちだから、「アテクシ」ということにしたんです。
――Tomy先生のように「アテクシ」を実際に使ってみると、不思議と心が軽くなるような気がするんです。そんなコメントも寄せられていたりしますか?
【Tomy】最近、「職場で“アテクシ”が流行っています」というコメントをもらいました。アイコン的になってきて嬉しい気持ちと、本当に流行りはじめたら恥ずかしいという気持ちが半々です(笑)。
開けばその時に必要な言葉をくれる“140字のおまじない”
【Tomy】DMに、読み返しにくいのでまとめてほしいという要望をいただいたことがありました。そして、実際に本になったら「毎朝、出勤前にページを開いて、そこに書かれている言葉を占いのように読んでいる」という感想が届きました。まさか、アテクシの言葉が“日めくり占い”のような使い方をしてくれる読者さんがいるなんて想像もしていませんでした。
――確かに、格言が載っている日めくりカレンダーのように、出かける前にTomy先生からのお言葉をいただきたくなります(笑)。その日一日を前向きにしてくれたり、何かのきっかけをくれるような気がします。
【Tomy】アテクシの本は、読み始めたら最後まで読み切らなきゃいけないという本ではないので、ある意味“一生読める本”と言えます(笑)。
――最後に、この本に出会った人、これから手に取る人へ先生からメッセージをお願いします。
【Tomy】そうですね……。まだ読んでいない方は、立ち読みでもいいから読んでみてください。きっと欲しくなります(笑)。この本は持っておくことに意味があるかもしれません。持っている方は、もう一度読み返してみてください。
――そのワケは?
【Tomy】読むときの“心のコンディション”によって刺さる言葉が変わると思います。歌詞と同じで、そのとき欲しい言葉が刺さってくるので、1度目は何気なく読んだページに救われることもあると思います。定期的に読み返すと、同じ言葉でも全く感じ方が違ってくるので、ぜひそういう楽しみ方をしていただきたいです。
言葉とは、何を言うかではなく、「誰が言うか」が大切だ。知識だけでは人生の中で起こる出来事の場面を乗り越えることはできない。過程と経験があるからこそ、言葉の深みや重みが出てくる。Tomy氏はLGBTとして、これまでに様々な経験をしてきただろう。そこから精神科医となり、毎日患者に触れてきたことで“心を救う言葉”がたくさん生まれた。日々Twitterで19万人を救っている一言一言には、彼の過程と経験が詰まっているからこそ、より響くのである。
(取材・文/上原かほり)
Profile:精神科医 Tomy
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitterが話題を呼び、たった半年で13万フォロワーを突破。覆面で雑誌やテレビ、ラジオなど各メディアにも出演。仕事、恋愛、人間関係で悩む人々の救世主。
■Twitter「ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き」@PdoctorTomy(外部サイト)
精神保健指定医、日本精神神経学会専門医。現在はクリニックに常勤医として勤務。2019年6月から本格的に投稿を開始したTwitterが話題を呼び、たった半年で13万フォロワーを突破。覆面で雑誌やテレビ、ラジオなど各メディアにも出演。仕事、恋愛、人間関係で悩む人々の救世主。
■Twitter「ゲイの精神科医Tomyのつ・ぶ・や・き」@PdoctorTomy(外部サイト)