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ORICON NEWS
社会の闇をえぐるレディコミは「エロがなくてもいい」、少女漫画から転身した気鋭作家の気概
「もがき苦しみながら生きる女性たちを描きたい」作品への想い
池田さん私が初めて読んだ頃のレディコミは、嫁姑バトルとか主婦のアバンチュールみたいなのが多かったですね。あとレディコミといえば過激なエロ描写で、女性読者の欲望をあおっているという“偏見”もあったような。
──単行本化されることも少ないですね。
池田さん基本的にこっそり読むものでした。そういう意味ではスマホで漫画を読む時代に、レディコミが盛り上がっているのも必然なのかなと。私はそこに便乗させていただいている感じですね。
──先生の作品は、エロというよりも、エグい人物描写がウケている印象です。
池田さん読者の方は「こんなバカ女、いるいる」とか「私はここまで堕ちたくない」とかいう目線で読んでくださってるようですね。SNS依存も貧困も現代女性のすぐそばにある社会問題なので、リアルに恐怖だったり、あるいはバカ女が堕ちていくのがスカッとしたりとかあるのかな? と思ってます。
──そういった女性たちを主人公に描く理由は?
池田さん自分としてはただ面白おかしく取り上げてるつもりはないんです。でも実際に問題を抱えている女性は多くて、すごくしんどいし、人にも嫌われるし、ぜんぜんカッコよくない。それでも「生きてるんだよ」と。もがいて苦しんで、それでも生きようとする女性を描きたいというのはありますね。
──そういう生き方しかできない女性に、どこかシンパシーも?
池田さんあるかもしれないですね。私も少女漫画で売れなくて、自活できないので実家にパラサイトして。自分でもほかの仕事をしたほうがいいことはわかってても、漫画を描くのがやめられなかったわけですから。
レディコミは「自分を生かせるフィールド」 強烈な刺激でエンタメに昇華
池田さん女性を主人公に、深く突き刺さるような社会の物語を描くのが、レディコミというジャンルだと私は思っています。だからそこにエロがあってもなくてもいいわけで、ただ何かしら強烈に刺激的な要素は必要なのかなと。私はリアリティよりもエンタメ重視なので、読者をギョッとさせるような描写は描いていてとても楽しいですね。
──今後さらにレディコミが盛り上がるためには、何が必要だと思いますか?
池田さん「不朽の名作」がこのジャンルから生まれたらいいですよね。少女漫画や青年漫画といったほかの漫画ジャンルでは、あるじゃないですか。何年も読み継がれるような名作が。あるいはタイトルではなく、作家名で選んでもらえるレディコミ作家がどんどん出てくるといいなと思いますね。
──「女性に親しみのある絵柄×エグみ」を作風とする池田先生もその1人になりそうです。
池田さん絵柄については少女漫画出身だからというのもあるかもしれないですね。エグい社会を描くジャンルとしては青年漫画もありますが、私は絵柄ではフィットしなかったですから。少女漫画をドロップアウトしてさんざん迷走した果てに、ようやくレディコミという自分が生かせるフィールドにたどり着けたんです。
──今後の目標を教えてください。
池田さんここまで来たら、もう漫画をやめるという選択はないですね。一生、描き続けていくのが目標です。ジャンルはぜんぜん違うんですが、私のバイブルは手塚治虫先生の『紙の砦』。どんな状況に陥っても漫画を描くことを諦めなかった、漫画家としてのその生き方にいつも奮い立たせていただいています。
(文/児玉澄子)
■インフォメーション
池田ユキオシリーズ最新作『胡蝶伝説〜居場所をなくした蝶々たち〜』
コロナ禍ど真ん中の歌舞伎町。ここでキャバクラをニューオープンしたママ・かなえは、絶望の中、あるキャストに想いを馳せていた。その嬢の名は憧(アコガレ)。北海道からやってきた「地雷嬢」と呼ばれるキャバ嬢と、嬢をまとめるかなえの本気の魂の交流が始まる。
(ぶんか社の電子コミック誌『ストーリーな女たち』Vol.60より隔月連載スタート)
『ストーリーな女たち』(外部サイト)
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