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「これからあと何本映画を撮れるんだろう」俳優生活40年超、63歳の役所広司が挑戦し続ける理由
最新作では大怪我も…、苦しい撮影も「どんなときでも楽しむ」
そこには役所が俳優という仕事に向かう上での流儀が垣間見える。「僕は好きで俳優業を始めたので…」と語り出すと、「もちろん撮影は楽しいものばかりではなく、苦しいときもありますが、どんなときでも楽しもうということだけは言い聞かせています。苦しいという気持ちで芝居に向き合うと、それがフィルムに焼き付いてしまうのかなと思うんです。楽しいと思う気持ちを持てば、たとえ苦しい芝居でも、良い結果が生まれるのかな、と」と柔和な口調で述べる。
「こんなおっさんが頑張っているんだから」、日本映画への思い
こうした思いは、日本映画の未来にもつながるという信念があるという。日本映画界にとって、役所広司という俳優はカリスマ的な存在であり、多くの俳優たちがその背中を見て未来に思いを馳せている。そんな役所が、本作でも海外に飛び出て、自身初となるワイヤーアクションを経験するなどチャレンジ精神を失わない。
「自分から後輩を育てるみたいなおこがましいことは考えていませんよ。撮影に入れば自分のことで精いっぱいになってしまうので…。でも、こんなおっさんが頑張っているんだから、俺も頑張らなければと思ってくれれば最高だと思いますし、僕も先輩方のそういう姿を見て頑張ろうと思ってやってきたことはありましたからね」。
「フィルムに焼き付いたものが、自分が死んだあとも残る」
こうした考えは、役所が俳優を志したときから常に思っていたこと。
「大げさに言ってしまうと、映画ってフィルムに焼き付いたものが、自分が死んだあとも残るわけなので、それは真剣ですよね。僕も先輩たちが作った映画を観て育った。いまでも黒澤明さんや小津安二郎さんの作品は観ることがあります。でも語り継がれ何度も観る映画はほんの一握りだと思う。50年、100年後に残る映画…そのなかに自分が1本でも参加できたら良い人生だなと思うんです。そういう思いは俳優を志したときからありましたね」。
63歳にして初めての経験、「飽き性な人間」だからこそ保てる新鮮さ
現在63歳。数えきれないほど現場を踏んできたが、本作では初めてのことも数多く経験した。「とにかく規模が大きい。サッカー場のようなオープンセットのなかで、巨大なグリーンバックでの撮影も初めて。ロケでもカナダやネパールなど、日本国内では経験できないような風景も見ることができました。そうしたなかにポツンと一人だけ置かれたとき、登山家でもないのに、救助隊の隊長の気分を味わわせてもらえました。いままで感じたことがないような経験でした」。
「僕は飽き性な人間」と語った役所。だからこそ、作品ごとに新しくなるチームで仕事をする映画の現場では常に新鮮さと緊張感が保てるという。「苦しいことでも楽しまないと」と語った笑顔がとても印象的だった。
(文:磯部正和 写真:田中達晃/Pash ヘアメイク:勇見勝彦/THYMON スタイリング:安野ともこ/CORAZON)
映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』
監督:ユー・フェイ
出演:役所広司 チャン・ジンチュー リン・ボーホン
11月15日公開
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