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(更新: ORICON NEWS

三谷幸喜監督&役所広司『表現しようとしている世界が違う 三谷監督ならではの時代劇』

映画、舞台、ドラマ――ステージを問わず広く三谷作品で主演を務める役所広司が、三谷幸喜監督との対談インタビューに登場! お互いへの質問、ツッコミから、いつのまにかしてはいけない(!?)映画『清須会議』の舞台裏トークに!

敗れていった人たちに興味がある[三谷幸喜監督]

──三谷監督と役所さんは『THE有頂天ホテル』以来7年ぶりのタッグですね。
三谷役所さんとの仕事は、舞台では『巌流島』、ドラマでは『合い言葉は勇気』だけですよね。でも、僕の映画、舞台、ドラマのすべてで主役をやってもらったのは役所さんだけなんですよ。
役所ありがとうございます。今回は原作を先に読んで、どんな台本になるか楽しみにしていました。でも、なんで『清須会議』をやろうと思ったんですか?
三谷子どもの頃から歴史ものが大好きで。柴田勝家や丹羽長秀の似顔絵を描いて遊んでいたぐらい(笑)。だから、いつか歴史ものをやりたいと思っていたんです。今までのものとは毛色が違うし、大爆笑コメディにはならないと思っていたので躊躇したんですけど、思い切ってやらせてもらいました。

──羽柴秀吉ではなく、柴田勝家を主人公にしたのはどうしてですか?
三谷僕は敗れていった人たちに興味があるんですよ。NHK大河ドラマをやらせてもらったときも、坂本龍馬よりも新撰組に気持ちが入っていました。今回も秀吉より勝家の方に悲しみと表裏一体のおかしさみたいなものがあると思っていたので、主人公は勝家になりました。
役所なるほど。でも、最初にお話をいただいたとき、「えっ、勝家?」って思いました。地味じゃないですか(笑)。大河ドラマなんかでもそういう描かれ方でしたし。でも、原作を読ませていただいて、非常に愛すべき男だなと思いました。製作発表のときに、三谷さんが「勝家のイメージはショーン・コネリー」と言われていたので、彼が断ってくれたおかげで、僕は勝家の役をいただけたわけですよね(笑)。
三谷勝家の髭は『風とライオン』という映画のショーン・コネリーを意識したんです。
役所三谷さんは「勝家は子どもみたいなオヤジ」とよく言っていましたよね。体臭がきつい、口臭がひどい、脂足で耳毛まで生えているという情報をもらいました(笑)。
三谷映画で体臭を感じさせるのは難しいですけど、本当に匂ってくるようで(笑)。脂足は実際に跡がつくようにしました。
役所足の裏にワックスを塗ったので、滑って大変でした(笑)。そういうこだわりや、部屋の距離感などに見られる演劇的表現は、三谷さんならではの世界ですよね。歴史オタクで勉強もされているから、他の時代劇とは表現しようとしている世界が違うなと思いました。
三谷勝家はたしかに子どもがそのまま大人になった程度の思考しか持ち合わせていなかったかもしれないけど、武将としてのカリスマ性、すごみや強さ、優しさを持っていたと思うんです。彼を慕う家来もいたわけだから、人間的な魅力がなければいけない。そう考えたときに、勝家は役所さんしか浮かびませんでした。
役所三谷さんの作品ではいつも僕は頭の悪い役ですよね(笑)。
三谷もちろん演じてらっしゃると思うんですけど、本当に頭の悪い人に見えますからね(笑)。それに、役所さんは僕がやってほしいと思うことがわかっているから、説明しなくても台本を読んだだけでやってくれる希有な存在なんです。

人物像で自分に近いといえば勝家…[役所広司]

──役所さんは、柴田勝家のどういうところに好感を持ちましたか?
役所お市様(鈴木京香)に対する一途な愛情には好感が持てました。秀吉(大泉洋)とは愛情の深さが全然違いますから。お市様は勝家のことが好きで輿入れしたわけではないでしょうし、勝家も好かれていないことはわかっている。でも勝家は側にいるだけで幸せなんでしょうね。それに、最後は一緒だったわけですから、死ぬまでの間に、お市様も勝家がいい奴だって思ったんじゃないですかね。
三谷そう言えば、お市様の匂いを嗅ぐ芝居はアドリブでしたね。
役所そうでしたかね。
三谷お市様の残り香を嗅ぎながら歩いてくるんですけど、あれは何かの体験に基づいて?
役所いやいや。お市様の香りで勝家の士気が上がったんじゃないかなと(笑)。
三谷勝家の匂いがお市様に移るのは想像の範囲内でしたけど、お市の匂いが勝家に移るところまでは考えていなかったので、さすが役所広司と思いました(笑)。

──個性豊かなキャラクターだらけですが、自分と似ていると思うのは誰ですか?
三谷丹羽長秀ですかね。わりと理屈でものを考えるたちで、それでいて情に流されるから、いつも窮地に立たされるというところが(笑)。
役所僕は柴田勝家しか考えられないです。演じたというのもありますけど、このなかの人物を見ていて、強いて自分に近いといえば勝家かなと。
三谷普段の役所さんを勝家に投影しているわけではないですけどね。役所さんが勝家を演じたら素敵だろうなということでキャスティングしているので。僕が持っている役所さんのイメージは、前田利家ですかね。こうだと決めたらぶれない感じ。たとえそれがマイナスになろうと貫き通す。
役所ぶれますけどね(笑)。
三谷役所さんが織田家家臣団にいたら、勝家と秀吉のどっちにつきますか?
役所やっぱり人間に触れちゃうと勝家……。
三谷貧乏くじひかされたなあと思いながら?
役所ですね(笑)。三谷さんも、一見長秀っぽいかもしれないんですけど、根っこは勝家じゃないですか(笑)。

──原作で好評だった猪狩りのシーンがなくなって、代わりにビーチフラッグスになったのは何か理由が?
三谷単純に制作予算の問題ですね(笑)。史実として夏の出来事なのに、撮影は冬だったんです。ですから、他のシーンも冬の景色を夏に加工しているんです。皆さんの息が白かったのも消しましたし。猪狩りをやるとしたら大草原でやらないといけないので、それを夏のように見せるにはどれだけお金がかかるのかと。おもしろさが減ってしまうのはイヤなので、冬でも夏でも景色が変わらないところでと思って浜辺。浜辺で何ができるか考えたらビーチフラッグスだろうと。衣裳の黒澤和子さんが、ビーチフラッグスみたいな旗取り合戦は実際にあったと教えてくださったので、あの形になりました。
役所猪狩りもやりたかったですけどねぇ。猪のコメントが聞きたかったなぁ(笑)。
三谷一応、『乱』(黒澤明監督)とか観て勉強はしていたんですけどね(笑)。

──やっぱり三谷監督は下準備を怠らない丹羽タイプなんですね。
三谷僕が本当に清須会議に出なければならないときは、根回しをすると思いますよ。やるからには勝たないといけないから、今だったらかなり電話をかけまくってまわりから固めるでしょうね。現実にはスタッフの会議ぐらいしかないので、根回しはいらないですけど(笑)。
文:岡 大/撮り下ろし写真:逢坂 聡
三谷幸喜監督メイク:立身恵
役所広司メイク:田中マリ子(ベレッツァ スタジオ)/スタイリング:安野ともこ(コラソン)

映画『清須会議』インタビュー連載第1弾三谷幸喜監督&剛力彩芽インタビュー☆「嫌な汗をかいちゃいました(笑)」

映画情報『清須会議』

 天正10年(1582年)本能寺の変。一代の英雄織田信長が死んだ――。跡を継ぐのは誰か? 後見に名乗りを上げたのは2人。筆頭家老・柴田勝家(役所広司)と後の豊臣秀吉・羽柴秀吉(大泉洋)。勝家は、信長の三男でしっかり者の信孝(坂東巳之助)を、秀吉は、次男で大うつけ者と噂される信雄(妻夫木聡)を、それぞれ信長の後継者として推す。勝家、秀吉がともに思いを寄せる信長の妹・お市様(鈴木京香)は、秀吉への恨みから勝家に肩入れ。一方、秀吉は、軍師・黒田官兵衛(寺島進)の策で、信長の弟・三十郎信包(伊勢谷友介)を味方に付け、妻・寧(中谷美紀)の内助の功もあり、家臣たちの心を掴んでいく。

 そして、開かれる清須会議――。会議に出席したのは4人。勝家、秀吉に加え、勝家の盟友であり参謀的存在の丹羽長秀(小日向文世)、立場を曖昧にして、強い方に付こうと画策する池田恒興(佐藤浩市)。繰り広げられる一進一退の頭脳戦。様々な駆け引きの中で騙し騙され、取り巻く全ての人々の思惑が猛烈に絡み合う! 勝家派か?秀吉派か!?
 今、日本史上初めて、会議で歴史が動く!!!

監督・脚本・原作:三谷幸喜
出演:役所広司 大泉洋 小日向文世 佐藤浩市
   妻夫木聡 浅野忠信 寺島進 でんでん 松山ケンイチ 伊勢谷友介
   鈴木京香 中谷美紀 剛力彩芽
【映画公式サイト】
2013年11月9日より全国東宝系ロードショー (C)2013 フジテレビ 東宝

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映画『清須会議』公式サイト

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