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ORICON NEWS
人気の“マヌルネコ”育成は波乱万丈、「守りたい」飼育員が語る壮絶現場
飼育難しい準絶滅危惧種、番組の反響も続々「元気でうれしい」
そんなマヌルネコの飼育に奮闘する飼育員の様子が、『坂上どうぶつ王国』で特集された。この番組の反響は大きく、同園の広報を担当する林さんは、「園内や電話対応でもマヌルネコの質問が一番多く、展示時間や展示場所などについて聞かれます。ご覧になった際には、『可愛い』『元気でうれしい』という声が聞こえてきますね」と語る。
「絶対に死なせない」、涙なしでは語れない飼育員たちの奮闘
飼育員のブログでは、その際の心境が語られている。
「ポリーは体調が悪くなったにもかかわらず、必死に子育てをしており、人工保育に切り替えるのは苦渋の決断でした。いざ取り上げるとなったときも、ポリーは子どもたちを取られないように必死で守ろうとしました。今思い出しても、とてもとても心が苦しくなり、きっとあの光景は一生忘れることができません。しかし、取り上げたからには、残った子どもを育てることに気持ちを切り替えて、ポリーの体調の回復と人工保育が始まりました」。
「まず防護服、マスク、手袋を着用。全身に消毒液をかけ、靴を履き替え、消毒が済んだら一切何も触れない、関係者以外の出入りを禁止…などのルールを徹底し、感染症を予防。生後しばらくの間は、朝5時から夜中1時まで、担当者と獣医が交代しながらミルクを与えていました。ちょうど混雑するシーズンだったので、みんなとても大変そうでした」(林さん)
徹底的に除菌、消毒を行い、懸命に人工保育を行っていた飼育員たち。しかし、そんな奮闘努力も空しく、7匹のうち5匹の子どもが感染症で命を落としてしまう。
「ポリーから取り上げて『絶対に死なせない。どうにかみんなで守る』と誓ったはずなのに、守れなかった。次々と死亡していく子マヌルを見て、胸が張り裂けるような感情と同時に、残っている子をどうにか守るという感情のくり返しの日々でした」(ブログより)
無事成長し一般公開へ、“二度と触れられない”複雑な心境も
そして7月13日、エルとアズはいよいよお客さんに公開されることに。同時に、人工保育から間接飼育へと移行し、手塩にかけて2匹を育ててきた飼育員は、二度と彼らに触れることができなくなった。飼育員の心の中には、「ここまで育ってくれてうれしい気持ちと、手が離れていき寂しい気持ちと、新しい場所、知らない人がたくさんいる状況で大丈夫だろうか…という心配な気持ち」(ブログより)と、様々な感情が交錯。だが、「人工で育ててきたことを思うと切ないですが、もともとは間接飼育の動物なので仕方ないことだと感じ取れました」(林さん)と、子どもたちを思い、冷静に日々の飼育を続けている。
同園では、YouTubeやTwitterでもマヌルネコの動画や写真を公開。「予想以上の反響で、直接マヌルネコを見に来るお客様が増えました」と林さん。実際に観覧する際には、「他の動物にも言えることですが、ガラスを叩かない、フラッシュ撮影禁止など、動物を怖がらせる行為はご遠慮ください」(千葉さん)とのメッセージを送っている。
見た目の可愛さももちろん、その背景にある人工飼育の大変さ、飼育員たちの奮闘努力にまで思いをはせれば、また新たな感動が得られるかもしれない。
(文:水野幸則)