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24歳の若き映画監督・枝優花 「自分がずっと大好きでいられる作品を作っていきたい」
『カメ止め』のヒットにより”インディーズ映画“の認知が高まった
枝優花この脚本を書いたのは大学一年生のときなのですが、その頃はお金も人脈もなく、映画をどう作っていいのかもわからなかったので、書くだけ書いて、そのまましまっておいたんです。学生時代は助監督や、スチール撮り、メイキング撮影などをして、大好きな映画に関わっていましたね。ある時、音楽×映画の祭典である『MOOSIC LAB(ムージック・ラボ) 』で若手の監督を探しているということを知って、過去の脚本を引っ張り出して、チャレンジさせていただきました。
――DVD&Blu-rayが発売されることになりましたね。ジャケットにもこだわったと伺っています。
枝優花DVDにしていただけるなんて、まさかまさかです。ジャケットはデザインから関わらせていただきましたが、映画公開時に、普段は映画をあんまり見ないという若い女の子からたくさんの反響をいただいたので、映画の世界観よりもポップでフェミニンなイメージにしました。パンフレットもそうなんですが、家に置いておくものなので、本棚に置いて可愛いものとか、部屋でじっくり読みたいものということにこだわって作りました。
――まるで日記のような、こっそり持っておきたいようなデザインに仕上がっていると思います。映画も随所に枝監督の世界観が見えますが、この作品を作る上で、特にこだわったところはどんなところですか?
枝優花ビデオとかフィルムの質感を出して、00年代の邦画のようなものを撮りたいと思っていました。私自身、画質が良すぎると情報量が多くて入り込めないと思うことがあるので、現実の色味をしっかりキレイに見せるということにはこだわらず、輪郭をぼかすために、スモークをたいて光を広げたりもしました。ずっとたいていましたね、スモーク(笑)。
――色味について、トークイベントでご一緒された冨永昌敬監督も指摘されていたそうですね。
枝優花冨永監督にはすごく興味を持っていただいて、そのイベントでは、脚本について、照明、絵作り、仕上がりのことまで、たくさん質問していただきました。『主人公の心理にあわせて色味を変えてるんだよね』など、思っていた通りのことを言っていただいて、映画の全体を見てこんなに的確に感じ取ってくれるなんて、さすが、すごいなと思いました。
――映画公開時は他にもたくさんの方とトークイベントをされて、その中に今年大ヒットの映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督もいらっしゃったそうですが、インディーズ映画のヒットについて、感じたことはありますか?
枝優花ちょうど映画館での公開時期が近かったんです。上田監督とのトークの時には『カメ止め』Tシャツを着た方もたくさん観に来てくださったんですけど、私の作品はゆったりなので、『カメ止め』ファンにとっては眠たくなってしまうんじゃないかなって心配だったんです。でも最後までみなさんしっかり観てくださったようで、直接感想を言いに来てくれた方もいたんですよ。上田監督はすごく人柄の良い方なので、ファンの方も同様なんだなと思いました。上田監督と私の作風はまったく違いますが、『カメ止め』がヒットしたことでインディーズ映画の認知度が上がったと思いますし、このヒットの事実は、しっかり胸に留めておきたいと思っています。
言語や文化の違う同士が作った作品に共感できるという体験を作っていきたい
枝優花日本だと、道でポケットティッシュやうちわを配っているのって普通に見かける光景ですけど、香港では無料でなにかもらうという文化自体がないんだそうです。それを聞いていたので、急いでポストカードを作ってみなさんに配ったら、すごく喜んでくれたのが印象的です。
――海外の評論家の方はどんなことを言ってましたか?
枝優花女子高生が登場する日本映画は多いけれど、そのなかでも「少女邂逅」は制服を着ていた時代と限りなく近い世代の女性が描いているから、少女たちの機微に嘘がなかった、と言われたのが嬉しかったですね。
――枝さん自身は、海外に対してはどう考えられていますか?
枝優花やっぱり、国内と海外で両方見てもらえたらいいなと思います。私も10代のときに海外の映画に感動して、言語の違う海の向こうで作られた作品なのに、なぜこんなにも共感できるのだろうと思っていたので。そう思っていただけるような映画が作れたらいいなって思いますね。
若い監督にもチャンスは多い時代 しかしそこから抜け出す土壌はまだできていない
枝優花そうですね。少女にこだわっているわけではないです。私はファンタジーな世界を描くのが好きで、日常で見ることができない世界を魅せたいんです。その中から、普遍的でウソのないテーマが浮かび上がってくるというのがいいなと思っています。『映画全体として良いな』って思ってもらうのも良いんですけど、『あのシーンのあそこが最高だったな』って、そのワンシーンがずっと心に残るというのもすごく良いなと思うんです。自分がずっと大好きでいられる作品を作っていきたいですね。皆さんに見ていただくときに宣伝していかなきゃいけないですし……嫌いなものは、オススメできないですしね(笑)。
――枝監督ももちろんですが、日本人最年少でカンヌ国際映画祭へ出品された井樫彩監督や、サンセバスチャン映画祭で受賞された奥山大史監督がともに22歳と、若い世代の映画監督に勢いを感じます。ストリーミングサービスやメディアの増加に伴い、若い才能がたくさん見出されている時代にも感じますが、そこに対してはどう思われますか?
枝優花若手の監督が出ていける出口は増えたのですが、いざ世に出た監督たちの作家性を守りながら育てていく土壌はなかなかないのが現状だと思います。今は自分で自分を育てるしかないし、いかに消費されないかを考えないといけないというところもあります。そこで作家性を守りながら発信していくとなると、けっこうな戦国時代かもしれないなと。
――たしかに、チャンスがあるからこそ、長く続けて行けるのは一握りかもしれないですね。
枝優花そうなんです。自己プロデュースが基本ですね。先ほども言ったように、自分自身が本当に良いと心から思えるものを世に発信していきたいと思っています。それがどこかの誰かに届くと信じて、今後も作り続けていきたいですね。
information
2019年1月16日
Blu−ray&DVDリリース
【Blu−ray】¥5,800+税
【DVD】¥3,800+税
【Blu-ray特典】
●アウターケース
●特製52Pフォトブック
●メイキング映像(映像特典)
※DVD商品には上記特典は付属・収録されず本編ディスクのみとなります。
PROFILE
1994年3月2日生まれ。群馬県高崎市出身。
監督作『さよならスピカ』(2013年)が第26回早稲田映画まつり観客賞、審査員特別賞を受賞。翌年の第27回早稲田映画まつりでも『美味しく、腐る。』(2014年)が観客賞に選ばれる。大学時代から映画の現場へ従事し、山下敦弘監督の『オーバー・フェンス』(2016年)特別映像撮影編集、とけた電球、STU48、高井息吹などのMV監督も務める。その他も、「ViVi」「装苑」などでのスチール撮影、メイキング、助監督とその活動は多岐に渡る。