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なぜ「港北ニュータウン」がドラマ撮影のメッカになったのか? 撮影が多い理由を担当者に聞いた
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首都圏でも有数の大規模なニュータウン
フィルムコミッションとは、全国各地に点在する、映画やドラマなどの撮影の誘致や撮影支援をする機関。その多くは自治体や関連団体を主体とし、非営利であることがほとんど。日本では00年2月に大阪で日本初のフィルムコミッションが設立され、横浜は同年10月。国内で4番目のフィルムコミッションとして事業を開始した。
その目的について横浜フィルムコミッションの担当者は「横浜を映像で撮って頂いて、映画やドラマで視覚的に見ていただくことで横浜のプロモーションにつなげていきたい」と回答。横浜に「こんなところもあるんだ」ということを知ってもらい、それが横浜と撮影サイドの双方にとって良い取り組みになっており、港北ニュータウンへの撮影の誘致は「積極的に行っているというわけではない」にもかかわらず、「電話が鳴らない日はないくらい毎月たくさんのお問い合わせがある」とのこと。例えば、「こんな病院のシーンが撮りたい」ということがあれば、そのシーンの詳細をヒアリングし、イメージに合った病院を紹介しているという。
「うちは許認可権限を持っているわけではありませんが、例えば通常だと許可が降りないような時間帯での撮影をしたいという場合、メインの舞台が横浜で、ドラマなどで放映されて大きなPRになるということであれば、うちが許認可部署との間に入り、撮影が可能となるような形で調整したりもしています」(同担当者)
昨年だけでも10本以上 港北ニュータウン地区で撮影された数々のドラマ──。経済効果も
そもそも横浜を舞台とした映像作品は多い。波はあるが2〜3年前は特に多く、『まれ』、『デート〜恋とはどんなものかしら〜』、『ラストコップ』、『逃げるは恥だが役に立つ』、『レンタル救世主』、『世界一難しい恋』、『今からあなたを脅迫します』、映画『恋は雨上がりのように』などが続いた。
「特に港北ニュータウンエリアのロケ地となるような施設は撮影の受け入れに慣れておりまして、うちが調整に入ってない案件もだいぶ多くなっています。地下鉄を使う撮影も多く、撮影がしやすい駅ということもあり、中山駅と仲町台駅をご紹介させて頂いております。仲町台駅はホームが対面になっており、ホームを挟んで対面するシーンの撮影は仲町台駅、そうでないものは中山駅。仲町台駅の希望はかなり多いですね」(同担当者)
エリア内には商業施設も多数。中でも「モザイクモール港北」とは連携を行っており、同施設が直接撮影の依頼を受けていることも。こうした撮影支援の取り組みは一定のPR効果につながっており、例えば「大野智さん主演の『世界一難しい恋』では、中区のキャラクター・スウィンギーの着ぐるみを大野智さんが着たことから、数年間在庫で眠っていたスウィンギーキーホルダーが売り切れるということも起きました。また、ドラマ内で伊勢山皇大神宮のお守りが恋愛成就で使われたこともあり、こちらもあっという間に品切れに陥ったということもありました」とのことだ。
港北ニュータウン地区がロケ撮影で愛される理由
「実際に港北ニュータウンエリアでロケをされた制作会社さんからの声として、“ホームや路線の抜け感”“新しい”“街の雰囲気がよい“というものがありました。また、歩行者動線が確保されて作られているので、歩いているシーンや家族のシーンなどが撮りやすいなどが理由ではないでしょうか」(同担当者)
だが、昨今はロケ地巡りなどの「聖地巡礼」が社会問題となっており、NHK朝ドラ『あまちゃん』やアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』などの観光などでの経済効果の成功例とは裏腹に、野次馬などの増加による“迷惑”もよく俎上に載せられている。これについて同担当者は「商業施設や駅などの関連施設にヒアリングに言ったときに聞いた声ですが、撮影自体が多いので特定の撮影で人が集まってくるということもないようです。お住いの方たちは、そっと見守ってくれているという風に聞いています」と回答。比較的問題も少なく事業が進められているとのことだ。
景観の良さやアクセスの良さ、そしてロケ撮影に柔軟に対応するその姿勢で今後ますますドラマや映画で目にすることが多くなるだろう港北ニュータウン。節度ある聖地巡礼を通して、こうした街のPRから、不況で暗くなりがちの日本に経済効果をもたらし、全体が明るくなっていくこともあるかもしれない。
(文/衣輪晋一)