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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

「ガンプラは自由だ」“作画崩壊ザク”と“ニコイチズゴック”に見る、モデラー人生の楽しみ方

 今年40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』シリーズ。日本が世界に誇るポップカルチャーだが、その礎となったのは1980年代前半から続くガンプラ文化だ。そんな「ガンプラ史」の背景には、モデラーたちの創造と革新の系譜がある。ここでは、無償でガンプラ制作会を開催するモデラー・りょうきち氏(@ryokichi1981)と、作画崩壊ザクを制作しSNSで話題となったナガ氏(@naaga333)を取材。モデラーたちが謳歌する「ガンプラは自由」の精神文化について聞いた。

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■“ニコイチガンプラ”で、1つの作品で陰と陽、機体の性能の差等を表現(りょうきち)

 ガンプラを真ん中でぶった斬り、ニコイチガンプラを制作するりょうきち氏は、これまで「1つの作品で陰と陽や機体の性能差などを表現してきた」と、その意図を説明する。そして、「例えばユニコーンガンダムとバンシィ。パイロットも性格が全然違いますよね。呼び名は、『ぶった斬り』や『ハーフ&ハーフ』と呼んでいます(笑)」と屈託なく笑った。

 今回紹介しているズゴック×ゾゴックのこだわりポイントについては、「一番難しいのは半分に斬る事」だと強調する。ズゴックはHGUCのキットの中でも古いキット、反対にゾゴックは新しいキットのため、普通に“ぶった斬って”貼り付けても、違和感が出てしまうのだそう。そのため、「真ん中での接続はネオジム磁石を使用しています。取り外しも可能なので、半分になっても自立するように制作しました」と“匠の技”を明かしてくれた。

 また、りょうきち氏は毎月1 回、ガンプラ制作会を開催している。これは2010年に始めた制作会で、開催数はすでに100回を超えている。老若男女、初心者、誰でも無償で参加出来る点が特長だ。「エアブラシや塗装ブースも常設しているので、作業環境がない方でも塗装をしたり、塗装について他のモデラーさんからレクチャーを受けたりも出来ます。タイミングが合えば、亀人さん、らいだ〜Joeさんといった超有名モデラーさんも参加されています」と、無償とは思えない豪華な制作会となっている。

 無償で実施することの意義については、「正直、プラモを作ろうと思った場合、自宅では作業環境が整わない方もいます。それなら、月1回でもこの制作会に参加すれば制作作業が出来ます」と、モデラーにとっての悩みごとのひとつ、“制作環境問題の解決”をあげる。実際、制作会に月1で参加し、塗装までして完成させた人もいるとのこと。また、様々なジャンルの人が参加するため、情報交換やスキルアップに繋がるなど、モデラーの交流の場にもなっているようだ。

 制作会の今後についてりょうきち氏は、「子どもの参加がまだまだ少ないので、地域の子ども達に参加して欲しいです」と話し、プラモ業界の命題となっている“若年層モデラーの取り込み”を課題としてあげていた。

“作画崩壊”だけでなく、「ククルス・ドアン回」は社会性を持った名エピソード(ナガ)

 40年前、ファーストガンダムにおける制作現場の窮状・疲弊は深刻だったという。そのため、一部の放送回では作画が乱れる“作画崩壊”があった。ナガ氏が制作したのは、作画崩壊回の代名詞ともなっている『機動戦士ガンダム』15話、「ククルス・ドアンの島」に登場する“作画崩壊ザク”だ。

 ナガ氏は最初、“作画崩壊ザク”をネットで見つけた際、視聴時には気付かなかった独特な魅力にショックを受けたのだという。そこでナガ氏は、「基本的にフル可動。特徴的なフェイスおよびプロポーションの再現は特に意識しました」と本作へのこだわりを語ってくれた。

 さらに、本エピソードの魅力は「“作画崩壊”だけではない」と力説する。

 「改めて観てみますと、ジオン軍の脱走兵であるククルス・ドアンの人間性は、戦争によって大きな影響を受けていることが分かります。夜、うなされて起きるシーンがありますが、これは子どもたちの親を殺してしまったことが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になっていることを表しています」

 放送当時、ベトナム戦争の帰還兵の話題が日本にも伝わってきており、そうした空気感や社会性を演出に取り込んでいるのでは?とナガ氏は指摘する。何より、「それまで主流だった勧善懲悪モノのロボットアニメにはなかった一般兵の苦悩を描いていて、素晴しいエピソードだと思います。この後、アムロ自身もホワイトベースから脱走するわけですが、脱走兵ククルス・ドアンの姿がアムロに影響を与えた部分もあるのではないでしょうか」

 ククルス・ドアン専用ザクがただの“作画崩壊”で終わらず、多くの視聴者の心に爪痕を残したのは、富野由悠季監督が手掛けた“演出”にあると解説するナガ氏。「自分が惚れたり、シビレた感覚、その正体を探るのがガンプラ制作のテーマです。仮説を立てて実証実験を繰り返しているような感じですね。今後も、自分の受けた衝撃や感覚を、プラモで自由に表現していきたいです」

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(C)創通・サンライズ

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