(更新:)
ORICON NEWS
フジ医療ドラマへの矜持とは? 制作統括が語る『グッド・ドクター』に生きる経験とリアリティ
『白い巨塔』『振り返れば奴がいる』、長い歴史持つフジの医療ドラマ
そんな中、『グッド・ドクター』(毎週木曜 後10:00〜)は5話連続で視聴率2桁をキープしており、山崎賢人の芝居や物語に「泣けた」「今期ナンバー1」など、多くの視聴者から絶賛の声が続々、面目躍如となっている。本作は韓流ドラマのリメイクだが、原作ではサヴァン症候群の主人公が超能力的な直感で患者の異変に気づくのに対し、本作では新堂(山崎)の深い知識や卓越した観察力が問題解決のきっかけに。フジテレビ第一制作室部長の牧野正氏は、「そのリアルさがフジの医療ドラマの特徴」だと語る。
「『ナースのお仕事』(1996年〜)のようなコメディもありますが、基本的にフジ医療ドラマは、リアリティが根底にあります。『Dr.コトー』も『救命病棟24時』も、大学病院内の権力争いを描いた『白い巨塔』もある意味そう。現状の最新医療などを徹底的に取材し、アンテナを張り巡らせて制作しているのです。例えば『コード・ブルー』も、プロデューサーが2年もの取材をして初めて制作に踏み切った作品。そんな歴史があるだけに、医療監修の先生との連携が密で、ノウハウが連綿と受け継がれている強みもある。『グッド・ドクター』は、プロデューサーが日本に0.3%しかいない小児外科医の現状に着目、彼の熱意と迫力に打たれて企画にGOを出しました。この作品も医療ものとしては人間ドラマの色が強いですが、患者側(子どもたち)の描写などはリアルだと思います」
「医者は神様じゃない」、根底にある過去作から受け継がれたテイスト
「医療は日々進歩しています。そのスピードにドラマもついていかなければなりません。スーパードクターを描いた『医龍』にしても、15歳未満の臓器提供が認められていなかったシーズン1と、認められたシーズン2とでは、当然それを前提とした内容に変えなければなりません。カテーテルが登場して外科手術が必要なくなれば、それに合わせてまたドラマも変化する。つねに敏感に現状を把握し、物語や設定に生かしていかなければなりません」
「それから、うちには“医者は神様じゃない”というテイストが昔からある。医者はすべての患者を助けられるわけじゃないので、その辺もしっかりと描く。リアルさを出すためにオペシーンにも時間をかけます。医療シーン専門のディレクターを配置し、リハーサルや段取りを別日に行うなど、手間をいとわない作り方を心がけています。『コード・ブルー』などはかなり時間をかけてリハーサルをやっていました」
こだわるなら予算も時間もかかるが…「なんとなく視聴率取れそうではダメ」
「医療ドラマ全体の特徴でもあるのですが、このジャンルでは人の生死が描かれる。観てくださる方にも身近な問題であり、だからこそ感情移入もしやすい。“医療ドラマが当たりやすい”要因はここにあります。描きやすいジャンルではありますが、だからこそ、安易な気持ちで向き合うと大やけどをしてしまう。生半可な気持ちで挑めないからこそ、私はプロデューサーの、こういう医療ドラマを作りたいという迫力、熱意を重視しています。なんとなく視聴率取れそうだから的なのはダメです。やるからには“覚悟”を持って取り組まなければ」
若者にもF3層以上にも訴求、『グッド・ドクター』視聴率2桁の要因
「『コード・ブルー』でドクターヘリの存在が一般に浸透したように、リアルなものを徹底的に取材して表現することで、社会的な影響力を持つこともあります。『Dr.コトー』もそうでしたが、教材的なニュアンスを持つ作品を今後も作っていきたい。“フジのドラマを観て医療を目指した”と言ってくださる方も実際におり、それだけでも手間暇かけて作る意義はあるのかなと思っています」
(文・衣輪晋一/メディア研究家)