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『この世界の片隅に』Pインタビュー「賛否両論は想定内」原作にはない現代パートの狙い

 日曜劇場『この世界の片隅に』(TBS系)が賛否両論の反響を呼んでいる。民放連続ドラマでは珍しく戦時中を舞台に、俳優陣の顔ぶれからも「朝ドラ」感が強い。原作にはない現代パートも加え、TBSの看板枠でチャレンジする意図をTBSテレビ制作局ドラマ制作部の佐野亜裕美プロデューサーに聞いた。

ドラマは多様な作品があるからこそ面白い

第4話シーン写真

第4話シーン写真 (C)TBS

 日曜劇場『この世界の片隅に』に向けられる話題は多岐にわたる。原作は累計130万部を突破した、こうの史代の同名マンガ。映画化された劇場アニメもヒットした作品を実写で連続ドラマ化した理由から佐野プロデューサーに尋ねた。

「賛否両論の反応があることは想定内でしたが、原作を読んだことがない方も映画をご覧になっていない方にも面白がってもらいながら、違った切り口のものにしたいと、企画を立ち上げた時から散々考えました。原作を忠実にしつつも、時制を入れ替えたり、足したり引いたり。ドラマでは二階堂ふみさん演じる「りん」を丁寧に描いていき、尾野真千子さんの「径子」も膨らませたいと思っています」(佐野氏/以下同)

 また、同枠としても民放連続ドラマそのものからみても珍しい「戦争」をテーマにした作品を選んだことについても聞くと、「日常を積み重ねていくことでかけがえのなさが紡がれていくわけですが、それが不条理に失われてしまことは戦争に限りません。今も変わらないことではないかと思ったのが、この作品を選んだ一番のきっかけです。ドラマは多様な作品があるからこそ面白いと思っています。それに編成も賛同してくれたことも意気に感じて、自分らしく作っていこうとスタートしました」と答えが返ってきた。

ある種テレビ的なアプローチも必要

第4話シーン写真

第4話シーン写真 (C)TBS

 しかし、これまでこの枠で成功してきた勧善懲悪の痛快エンタテインメント作品とは異なる作風であることに不安はなかったのか。

「テンポアップして次々と進めてしまっては話の良さが失われてしまいます。飽きられてしまうのではないかと心配はありますが、この作品独特の時間の流れ方を守っていかないと別のものになってしまい、これを原作として連ドラにした意味がなくなると思っています」

 では、原作にはない現代パートを加えた演出の狙いは何か。

「企画段階から構想していました。テレビは『ながらメディア』ですから、わかりやすいある種テレビ的なアプローチも必要だと思ったからです。批判が出ることも想定していましたが、最後までご覧になったら、きっと『あってよかった』と思っていただけると思います。はじめにアイデアをいただいたこうの先生からは『現代パートがとても好きです』と言ってもらい、その言葉に力をもらっています」

 さらに聞けば、話が進むごとに現代パートの真の狙いが明らかになっていくという。

朝ドラ感なぜ? キャスティングやスタッフワークの妙

第4話シーン写真

第4話シーン写真 (C)TBS

 主演・北條すず役を演じる松本穂香をはじめ、脇を固める俳優陣にも宮本信子や尾野真千子が起用され、キャスティングの印象から「夜の朝ドラ」とまで言われていることも話題のひとつにある。

 この真相については「今作は大きな事件は起きません。だから芝居勝負。良い役者の方を揃えることにこだわったのですが、朝ドラ感はまったく意識していなかったので正直びっくりしています」と答えつつ、「立身出世の物語ではなく、日常の名もなき人の物語を描いていく内容からは朝ドラ的にはなるだろうと思い、むしろそう作っていきたいと思って、脚本は岡田惠和さんにお願いしました」と明かした。

 また演出は『カルテット』なども手掛けた土井裕泰氏が担当している。

「奥行の演出が必要なこのドラマには土井さんにと最初から思っていました。広島のご出身であり、お父様が被ばくの経験があることももともと聞いていました。何よりミドルサイズの人間ドラマを撮らせたら右に出る人はいないと思っています。満を持して声をかけたら、、『他の仕事が…』とおっしゃるので、『この作品をやらなくていいんですか』と半ばケンカを売るような勢いでお聞きした記憶があります。それほどに土井さんしかいなかったんです」

音楽はジブリがヒント、得意のツイッターは封印

 音楽担当にもこだわった。民放の連続ドラマで音楽を担当するのは1994年の『時をかける少女』(CX系)以来、実に24年ぶりとなる久石譲氏だ。仕掛け上手のプロデューサーとして評判は高いが、どのように実現させたのだろうか。

「少女の成長物語という意味では『魔女の宅急便』のようなイメージもあったので、ダメもとでお願いしたら、まさかの展開でした。オリジナルの劇中歌も作ってもらい、岡田さんによる作詞で松本穂香さんが歌ってくれています。私の中では久石譲さんはこの作品の影の主役だと思っているほど。ドラマは音楽に助けられることも大きいですからね」

 一方、これまで佐野プロデューサーが手掛けた『カルテット』などでは自らSNSを活用して話題作りにも貢献しているが、今回は呟きがみられない。

「エゴサーチは大好きなので、暇さえあれば隈なくみています。でも、呟くとどうしてもヲタ目線になってしまい、松坂桃李くんのおにぎりの具を紹介し始めてしまい作品の世界観を壊してしまうので、この作品に関しては、ツイッターは封印です」

 やはり、TBSの看板枠である日曜劇場を単独で担当することへのプレッシャーは高いのか。これまでの作品作りとの違いについて最後に聞いた。

「プレッシャーはありますが、チャレンジさせてもらえたことは良かったと思っています。これまでとは作り方に大きな違いがあるものの実は共通点があります。『この世界の片隅に』も『カルテット』も『おかしの家』も『ウロボロス』も、生きづらさを感じている人が立ち向かい、居場所を探していく話です。これは自分自身の人生のテーマでもあります。だから、やり方を変えることなく、それでいて原作を損なうことなく広げることができると思いました。自分を信じてやり切ります」
(文/長谷川朋子)

日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系/毎週日曜 21:00〜21時54分
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、二階堂ふみ、尾野真千子、伊藤蘭、宮本信子
(C)TBS

【日曜劇場『この世界の片隅に』プロデューサー/佐野亜裕美氏プロフィール】

  • 佐野亜裕美プロデューサー

    佐野亜裕美プロデューサー

TBSテレビ制作局ドラマ制作部プロデューサー
1982年生まれ。06年TBSテレビへ入社。SPドラマ『夢の扉特別編「20年後の君へ」』でプロデューサーデビュー。その後、『潜入探偵トカゲ』『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』『99.9 -刑事専門弁護士-』などを手がけ、2017年には火曜ドラマ『カルテット』が大ヒット。「第7回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」で作品賞をはじめとする5部門を制覇した。

提供元: コンフィデンス

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