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“オラオラ系”から一転「王子が大渋滞」 王道“王子様路線”再評価のワケ
“悪ガキ”が俳優・アイドルになった80年代、アイドル冬の時代にバラエティ進出した90年代
しかし、90年代に入ると、アイドルの主戦場だった『ザ・ベストテン』(TBS系)や『歌のトップテン』(日本テレビ系)、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)などの歌番組が次々終了。アイドル冬の時代が到来する。そんな主戦場を失ったアイドルたちの突破口を開いたのがSMAPだった。SMAPから始まる流れにより、バラエティ番組に体当たりで挑むアイドルが登場。今では当たり前になっている「アイドルのバラエティ進出」の地盤が作られていく。
その一方でドラマの世界にも進出。特に90年代後半からは木村拓哉が『ロングバケーション』(最高視聴率36.7%、フジテレビ系)、『ラブジェネレーション』(32.5%、同系)などで高視聴率をたたき出し、00年には『ビューティフルライフ』(TBS系)で最高視聴率41.3%を獲得。強いカリスマ性を誇示しつつも、かつての「王子様的存在」から一転。アイドルはいつしか歌番組ではなく「バラエティ」「ドラマ」の両軸で、お茶の間への浸透を深めていく。それでも、ファンにとって手の届かない存在であった。
EXILEが “オラオラ”路線をけん引、“LDH系”を開拓
しかし、そんな系統とは一線を画す、真逆とも思えるビジュアルで台頭していたのが、EXILEを筆頭とするLDHのアーティストたちだろう。日焼けした肌にサングラス、短髪・刈り込み、鍛えられた腕や胸筋…そのちょっと近寄りがたい“オラオラ”したいかつさが他と異なるアイデンティティとなった。ちょっとガテン系のニオイもする、男くささ、今までにない “カッコよさ”に憧れ、ファッションやヘアスタイルなどの真似をする男性も続出。“LDH系”として広く知られることに。
そんな中、同時期にはKAT-TUNも世間一般のキラキラしたイメージをあえて避けた男性も憧れる“ジャニーズっぽくない”ビジュアルで登場。ミリオンを記録する鮮烈なデビューを果たしている。
また、LDH系の人気の理由には、従来のアイドルと異なる力強いヒップホップダンスにもあった。2012年より改訂・導入された「ダンス」の義務教育化も後押しし、ヒップホップの世間への浸透。LDH系の人気によってさらに促進されていく。
原点回帰のようで新しい ベタな王子様路線はイケメンの2次元化?
少女マンガ実写化の流行の原因には、10代・20代などの若者の人口減と、テレビ離れによる「学園ドラマ」の衰退があるだろう。テレビドラマでは視聴率が見込めない一方で、映画の場合は10代・20代などに人気の俳優を起用することによって、メガヒットはなくとも堅実な収益を見込むことはできる。若手俳優のステップアップの場として利用される面もある。
また、アイドル界においては、東海地区発から活躍の場を広げるMAG!C☆PRINCEや、5月23日発売のデビューシングルが店着初日の22日に31.8万枚を売り上げ、デイリーランキングで初登場1位を獲得したジャニーズの新グループ・King & Princeも登場。これまでも及川光博や、堂本光一、中島健人など、個人で王子様キャラを確立したアイドルやタレントは存在し、キャラクター性が重宝されていた。しかし、そうした個人の活躍と異なり、衣装や楽曲のコンセプトとしてベタな「王子様」を打ち出すのは “新ジャンル”とも言える。
この傾向は2000年代後半からの韓流人気も後押ししているだろう。ペ・ヨンジュンや、東方神起、チャン・グンソク、そしてK-POPアーティストの色白美肌の中性的な顔立ちと、日本の古き良きスターのような博愛的で手の届かない存在感が日本で改めて受け入れられたことも少なからず影響しているはずだ。
また、『テニスの王子様』や『刀剣乱舞』などの2.5次元ミュージカルの人気の高まりも理由の一つにあるだろう。加えて、テレビや雑誌の中にしかいなかった存在が、接触イベントやSNSの普及によって身近に感じられるようになった昨今の状況も影響しているのではないだろうか。
今までの流れとは逆に、手の届かないようなコンセプトでいてくれるアイドルや俳優に“尊さ”を感じる。かつての「萌え」よりも思いは強く、さらに、距離のある相手に対して遠くから眺める「尊い」という感情を若者たちはSNS上などで頻繁に使用している。“王子様コンセプト”は原点回帰のようでもあり、今どきの新しさも見せている。
“オラオラ”の新たな系譜を作ってきたLDHまでもが打ち出した“王子様コンセプト”。“親しみやすさ”とはまた違った“尊さ”を得られるコンテンツとして新たな主流になっていくかもしれない。
(文/田幸和歌子)