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“恐竜好きすぎる”アメリカ人 いつでも「恐竜ブーム」な理由とは?

  • アメリカ人だけでなく、全世界の映画ファンを魅了した『ジュラシック・パーク』(C)Universal Pictures

    アメリカ人だけでなく、全世界の映画ファンを魅了した『ジュラシック・パーク』(C)Universal Pictures

 映画界最大の祭典『第90回米アカデミー賞』の発表・授賞式が4日、ハリウッドで開催され、その表彰式で、日本の特撮史においてスーツアクター(怪獣の中に入って演技をする俳優)の草分け的存在である故・中島春雄さんが追悼コーナーで取り上げられた。中島さんは初代ゴジラも演じるなど、ハリウッドでも知れた存在だが、今回の件は日本の“怪獣映画”がアメリカでリスペクトされてきた表れとも言える。これまで、アメリカでは怪獣の原型とも言うべき「恐竜」の映画が幾度となく制作され、その多くが大ヒットしてきたが、それはCG技術などの進歩だけではなく、アメリカ人の“恐竜好き”な性格も影響しているようだ。なぜ、アメリカ人はこれほどまでに恐竜が好きなのだろうか?

その時代の最新技術を駆使し、“恐竜”を現代に蘇らせてきたハリウッド映画

 対戦格闘ゲームの名作『ストリートファイター2』のキャラクターデザインや、富野由悠季監督が手掛けた名作アニメ『∀ガンダム』(1999年)のキャラクター原案などを手掛けたイラストレーターの安田朗はツイッターで、「俺がかつてカプコン現会長さんから教えてもらったことは、外国では忍者と恐竜がいつでも大ブーム」とコメント。確かに、アメリカで制作された恐竜映画はヒット作が多い。直近でも、2015年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督作品『ジュラシック・ワールド』は約16億ドル超を売り上げ、世界歴代興行収入第4位にランクイン。本作は1993年公開の『ジュラシック・パーク』の続編(第4作)にあたり、その人気は衰え知らずといったところだ。

 93年当時から、初めて生き物をCGで描いた『ジュラシック・パーク』は“映画史を変えた傑作”と呼ばれ全世界で大ヒットした。「アニマトロニクス」と呼ばれる超巨大ロボットや、複数の動物の声をかけ合わせた鳴き声などの新しい手法を駆使し、“未知の恐竜”を現代に蘇らせたのである。

 以降、ジュラシック・シリーズは第2作『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997年)、第3作『ジュラシック・パークIII』(2001年)、『ジュラシック・ワールド』と続き、今年は5作目となる『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が7月13日より公開される。

 こうした一連のジュラシック・シリーズのヒットにより、ウォルト・ディズニーからCGアニメ映画『ダイナソー』(2000年)、CG実写映画『ウォーキングwithダイナソー』(2013年)などのフォロワーも多く公開され、恐竜映画は本格的にひとつのジャンルとして確立した。とは言え、さかのぼれば1925年、無声映画ながらストップモーションや特殊メイクを駆使した『ロスト・ワールド』(アーサー・コナン・ドイル原作)が大ヒット。1960年には同原作で再び『失われた世界』が公開。本物のトカゲやワニに背びれを付けるなど当時の最新技術を駆使した恐竜映画が作られてきた歴史があり、アメリカ人にとって恐竜は馴染み深い題材であることが伺える。

ハリウッドの有名監督も熱烈なファン 初代『ゴジラ』本多猪四郎監督の功績とは?

 一方、日本の恐竜映画と言えば、ドラえもん映画の第1弾にして当時の少年たちを号泣させた『映画ドラえもん のび太の恐竜』(1980年/2006年にリメイク版公開)や、安達祐実主演の『REX 恐竜物語』(1993年)が有名だが、日本発の恐竜映画で成功例は少ない。とは言え、日本でも数年に一度は恐竜ブームが定期的に起きており、男子なら一度はその獰猛な姿をカッコいい…と感じ、「大恐竜展」の行列に並んだ人も多いことだろう。そもそも『ゴジラ』(1954年)をはじめ、『ウルトラマン』シリーズなど特撮モノに出てくる敵役は怪獣であり、日本の場合はどうしても「怪獣>恐竜」という図式で、怪獣人気の方が高い傾向がある。

 そんな日本を代表する怪獣映画『ゴジラ』はアメリカでも大人気。1998年に公開されたハリウッド版『GODZILLA』は、トカゲのようなゴジラが日本のゴジラファンの不評を買ったものの興行的には大成功。そして前作から16年後、再びアメリカ版『ゴジラ GODZILLA』(2014年)が公開され、こちらは日本版ゴジラへのリスペクトが詰まった作品となった。原子力への問題提起など、ゴジラ映画の“魂”とも言うべき部分も受け継がれていることもあり、日本でも興行的な成功を収めた。

 今や世界的な認知度を誇る『ゴジラ』だが、1954年に本作を世に送り出した故・本多猪四郎監督の名を知る日本人は少ない。ところが、海外では多くの有名監督からリスペクトされる存在。『タクシードライバー』(1976年)や『レイジング・ブル』(1980年)を手掛けたハリウッドの名監督マーティン・スコセッシ監督は、本多監督の映画をフィルムで10本以上所有するほどの熱烈なファン。実際、故・黒澤明監督の映画『夢』(1990年)に役者として出演した際、演出補佐だった本多監督のもとに駆け寄ると肩を組んで記念写真をし、「僕はこのために日本に来た」と言ったというエピソードは有名だ。ハリウッドでは、巨匠・黒澤明と並んで評価されるほどの存在であり、日本版初代『ゴジラ』が世界の映画シーンに与えた影響は大きいと言える。

幼少期から恐竜との“結び付き”が強いアメリカ人 恐竜への“憧れ”や“畏怖”も世界一?

 それにしても、なぜアメリカ人はそれほど恐竜が好きなのだろうか? アメリカでは、小学生時代から恐竜をテーマにした誕生日会があったり、公園の砂場では子どもたちが恐竜発掘の遊びを楽しんだり、ショッピングセンターで恐竜イベントがあったりと、とにかく幼いころから恐竜と触れ合う機会が多いのだという。また、恐竜博物館の数も多く、あのスミソニアン博物館には常設の「恐竜館」があるなど、文化的な面でも恐竜とアメリカ人は密接に結びついている。

 さらに言えば、アメリカ人の“デカいもの好き”も関係しているかもしれない。一度アメリカに行ったことがある人なら分かるだろうが、アメリカでは国土はもちろんのこと、家も車もマクドナルドのセットもとにかくデカい。そうした”デカい“ものに囲まれた文化では潜在的に巨大なものに憧れるようになり、現存する動物の何倍も体が大きく、その破壊力で古代の地球を制覇していた恐竜に“憧れ”や“畏敬の念”を持つのは自然なこととも言える。

 また、アメリカの映画館では喋ったり叫んだりしながら楽しむのが常識。恐竜が出てくる映画ともなれば、一種のアトラクション体験のようにもなり、激しいシーンでは館内が一体となって興奮し、叫びを上げる“リアクション祭り”に。そうした、周囲と“共感”しながら楽しめる映画としても「恐竜映画」は人気を獲得しているようだ。

 幼少期からの遊びや博物館の体験などを通して、恐竜への親しみ、憧れ、畏怖とともに成長してきたアメリカ人。さらに“大きいもの好き”、“強いものが好き”といったアメリカ人気質も加わり、恐竜は子どもから大人にまで愛されるアメリカ文化となっているのではないか。

 古代へのロマンだけではなく、CG技術をはじめ最先端技術をどん欲に取り入れ、恐竜好きが恐竜好きのために製作したアメリカの恐竜映画。『ジュラシック・ワールド』の次作も楽しみだが、最近では“毛が生えているのが常識”ともなった恐竜の姿を、いかにアメリカ人が消化し、披露してくれるかなど興味は尽きない。

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