(更新:)
ORICON NEWS
『シン・ゴジラ』で開催した「発声型上映」 固定観念を覆す“映画の楽しみ方”
掛け声の所作も事前に紹介 “オフィシャル”をも巻き込んだ大きなうねりに
会場が一体となって興奮を分かち合える楽しさがネットや口コミで話題となり、同システムの「女性限定上映会」や前述の「全国一斉!発声可能上映」へと発展。「全国〜」開催前には「巨大不明生物映画のより楽しい鑑賞を目的とする発声可能を主軸とした作戦要項」と銘打った遊び心たっぷりの動画を、東宝の公式がネットにアップするなど、“オフィシャル”をも巻き込んだ大きなうねりとなった。ちなみにその動画では、上映開始時の「見せてもらおうか! 庵野秀明の実力とやらを!!」から、スクリーンに映し出されたロゴを叫ぶ「東宝!!」「映倫!!」までの流れのほか、セリフへの反応や掛け声の正式な“所作”も紹介されている。
SNSでの庵野監督が盟友に“粋な計らい” 感動と激情はネットを介して全国へと伝染
「島本氏の自伝的漫画でアニメ化もされた『アオイホノオ』には庵野秀明がほぼ主人公扱いで登場するなど、島本氏がネタ的要素を踏まえながらも庵野監督をライバル視しているのは有名な話。こうした背景もあって2人のやり取りがネットで大きな話題となりました。東京だけでは終わらず全国にまで発展していったのもネットの“バズ”効果が無関係とは言えません。寧ろ、“ネット社会”の現代ならではの動きなのでしょう」(某映画ライター)
“個“から“集団“へ――。映画館の新たな楽しみ方が増加
「日本の映画ファンには、映画を“個”の楽しみとする考えはいまだ根強く、『発声型上映会』は“ネタバレ上等”な上、映画に集中したい人には不向きであることも事実。ですが、昨今、日本のエンタテインメントは“個”で楽しむCDなどの“ソフト”より、好きな人が“集団”で楽しむ、ライブのような“参加型”“体験型”にお金を払う流れに移行しているように見受けられます。この流れに乗れば、これまで映画館に足を運ばなかった新たな客層も呼び込めるはず。さらには『発声型上映会』は、そもそもがリピーターのための祭典ですから経済効果も見込めます。やがて1つのスタイルとして定着していくのではないでしょうか」(同ライター)
一般社団法人の日本映画製作者連盟が公開したデータによれば、日本の映画館入場者数は58年の11.27億人をピークに急速に減少し、カラーテレビが普及した70年代以降横ばいに。だが97年の1.41億人を底として、わずかながらも持ち直しの動きを見せている。なかなかに苦しい状況だが、回復の兆しはあるということだ。映画『シン・ゴジラ』の主人公・矢口蘭堂のセリフに「この国はまだまだやれる」とあるが、同じように日本の映画館市場も「まだまだやれる」はず。中でもネットとも相性のよい「発声型上映」は、今後の映画界をさらに盛り上げるべく、大きな道しるべとなるかもしれない。
(文/衣輪晋一)