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『ガンダム』生みの親・富野由悠季が感じた手塚治虫・宮崎駿の凄み

――富野監督はガンダムの著作権をサンライズに譲渡したと聞いています。
富野由悠季ガンダムの著作権は“まる買い”だったために腹立たしい気分もありましたが、だからこそサンライズは作品を作り続けてこられたわけです。もし、ガンダムの著作権を僕ひとりで管理していたら、マーケットは今みたいに広がっていないと思います。そう考えると、“ガンダム”は長生きしたと思っています。その点、日本におけるアニメコンテンツの著作権管理の仕方も『ガンダム』が開拓していった部分はあって、結果的に僕個人も生かされたし、ガンダム周辺の企業全体も生かされたと思っています。

――“ガンダムの富野由悠季”は、意図して演出した部分もあったわけですね。
富野由悠季僕はノベライズもやっているんですが、その理由のひとつとして、“有名になりたかった“からです。この場合の有名というのは、アニメだけでなく、ほかの部分に固有名詞を残すということです。この意識を持っていないと、TV局、スポンサーや代理店という枠の中にハマってしまって、いち演出家、いち原作者になって埋もれてしまいます。それがノベライズを書く理由のひとつであり、自分の名前を確立させるための方法でもありました。けれど、これをやって、自分に作家としての才能はなくて、あくまで請負仕事の職人だということも思い知るわけです。“現場のたたき上げ”の人間でしかないのだと。ただ、サンライズという小さな町場のプロダクションから出発して、巨大ロボットもので75歳まで生きながらえたということだけは、まあ富野さんがんばったよね、と褒めてほしいですね(笑)。

主人公のアムロが戦死!? 小説版「機動戦士ガンダム」はベストセラーに

――今の若い世代には、富野さんといえばアニメ版『ガンダム』のイメージが強いと思います。しかし、古くからのファンにとっては、“小説家・富野”の記憶も強烈です。1979年に朝日ソノラマから出版された小説「機動戦士ガンダム」では、アムロとセイラが男女の関係になったり、終盤で主人公のアムロが戦死したりと、ファンにトラウマ級の衝撃を与えました。販売部数でも当時ベストセラーになっています。
富野由悠季アニメをやっていると、どうしても巨大ロボットのルックスが先にたちますが、なんとか物語を書き示すことができないか、そして自分は小説家なれるのではないか、と思ってうぬぼれて書きました。直近では「オーラバトラー戦記」(角川スニーカー文庫)までやっています。いま書くつもりもなくなっているのは、「オーラバトラー戦記」を書いて、自分が小説家ではないことがわかってしまったからです。

――――富野監督はそうおっしゃいますが、「密会−アムロとララァ」「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」(すべて、角川スニーカー文庫)など、映像化が期待され、かつ今もなお版数を重ねている名著があります。
富野由悠季量でいえばこれだけの数を出せていましたし、「アベニールをさがして」(ソノラマ文庫)のような新しい方向性の作品も書きました。このころが小説家として一番うぬぼれていて時期でしたが、売上的にぱっとせず大失敗をしました。結局のところ、自分にはノベライズで発信するだけの力はなく、自分が小説家ではないことがわかってしまったんです。これまでお茶を濁した気分でやっていて、書いても気分がよくなかったんです。こんな言い方をすると小説家に怒られますが、高尚な言い方をすれば“ペンを折った“とも言えます。一見敗北主義なんだけど、そうとばかりとも思えないのは、3年前にやったTVアニメ『Gのレコンギスタ(以下、G-レコ)』をやって気づいたことがあって、70歳を過ぎてロボットものをやって、いまだに映画版だなんて言っているのは、めでたいじゃないですか。めでたいんだけれども、この程度の仕事でも全力をかけてやっていると、いまはノベライズをやる余裕はありません。アニメの仕事なめてもらっちゃ困るよねと。

――今はアニメで伝えることを優先するということでしょうか。
富野由悠季リアリズムと対決するときに、ぼくらのような世代がグダグダ言うんじゃなくて、映像を見せることで若い人たちに気づかせたいと思っています。インフラの問題、エネルギー問題、本当に宇宙に住むなんてことが可能なのかどうかという問題、そうしたことを全て『G-レコ』で表現しています。子どもたちには、そうした疑問点を『G-レコ』で気づいてもらいたいですね。

総集編5本!? 劇場版『G-レコ』は前例のない挑戦

――富野監督は現在、『G-レコ』の劇場版制作に取り組んでいると聞いています。一体どんな映画になるのでしょうか。
富野由悠季 TV版全26話の総集編ですが、過去のダイジェスト版ではなく、TV版まるまるを使って、劇場版として全5本での公開を予定しています。むろんTV版の構成ミスの部分は削除しますけれど…。

――総集編の劇場版をやる理由というのは?
富野由悠季『G-レコ』は、自分の企画不足もありますが“作劇”になっていませんでしたので、ちゃんとした“映画”にしなくてはいけないんです。先ほどから、ただの「SF好き」「メカ好き」が映画を作ってはいけない、と言ってきましたが、それは僕自身にも言えることなんです。『G-レコ』は初期の設定がよくて、ガンダムの富野がやるんだから『こんなもんだよね』と思ってしまいました。つまり、自分ひとりで考えてしまったためにわかりづらい作品になっているんです。

――では、どうやって分かりやすくするのでしょうか。
富野由悠季TV版の演出は、ほぼ丸投げで若い人にやってもらいましたが、僕の打ち合わせ能力が低いんですね。「作画のチェックはこういう目線でやってほしい」というアニメーターへの指示などを僕がし忘れていたんです。そのために、当時ちゃんと手を入れられなかった部分など細かい修正が必要です。そういうことをしないと、映画として気持ちよく見られないんです。説明できる範囲でいいますと、例えば、無重力帯での髪の毛の動きというのは、重力がある地球とは違うわけです。宇宙にいるのに、髪の毛が全部垂れているのはおかしい。だからそれを全部浮かせました。そういう絵並びにするかしないかで、手描きアニメの限界が見えると同時に、それをやっておくと、観客は生理的に抵抗なく見ることができます。そうした修正をかなり入れました。完成度の高い映画というのは、そうしたことをやっているわけですから。

――全編に渡っての修正、また部分的に新作カットの追加もあるということですね。
富野由悠季はい。TV版のDVDを買った人からは、怒りの声が出てくるのは承知のうえです。また、そういう作品を買っていただいた人たちから、「そんな『G-レコ』でもいいんだよ」って言っていただいているのは本当にありがたいと思っています。

『G-レコ』の“脱ガンダム”は、“ガンダム戦記”からの脱却でもある

富野由悠季なぜ、いま劇場版が必要かと言えば、TV版のままだとこの先に繋がらないと考えるからです。この作品を、10年、20年と後に続くようなものにするためです。と同時に、劇場版制作にあたって全話を見直してみて、この作品は“分かりやすさ”を解決すれば、それなりの作品だと思えます。ただし、ストーリーの根本的な部分は変わりません。個人的な見解ですが、『G-レコ』はストーリーはよいところを押さえています。ただ、あまりにタイトすぎるから分かりづらいんです。そこで、これまでカットしていた部分を入れます。おそらく、TV版を見ていない人にはわからないレベルなので、ここまで見せられたらスッと物語が入ってくるという自信はあります。これまで、「『G-レコ』ってわからないよね」と言われていましたが、いま作っているものを見せられれば、大人の目線で見てもちゃんと腑に落ちる作品になるはずです。
――『G-レコ』で掲げている“脱ガンダム”とは?
富野由悠季いま、ガンダムワールドで新しい目線の物語を作ろうとすると、結局は局地戦の話になるだけです。それって、いわゆる「戦記物」なんですね。戦記物って、日本の太平洋戦争も負け戦だったけど、零戦の戦記物とかが商売になりました。男がいる限り局地戦を描いた戦記物で成立しちゃうんです。そして、それがリアルな“戦場”を描いたものだと思われています。そうした戦記物に追従してはいけないし、ましてや、仮にも『ガンダム』を始めた富野がそれをやっちゃいけない。メカの型番が違うだけで戦争に勝ててしまうような戦記ものではいけないんです。ではどうしたものかと2年半くらい考えて、現状の“ガンダム戦記もの“から離れる方法として、1000年飛ばせばふっきれるのではないかと時代を飛ばすことを考えたのが『G-レコ』なのです。

――1000年経てば、「宇宙世紀」もどうなっているか分かりませんものね。
富野由悠季1000年経てば地球はめちゃめちゃになっているはずです。おそらく人類も総入れ替えしているでしょう。であれば、話は“再生”の物語になります。つまり“復活戦記“を描くことにもなるんです。もちろん、かつてはガンダムワールドがあったらしい地球なのだから、ガンダムに似たメカが出てきてもよいだろう。そして、新しい世紀が始まっているのが『G-レコ』の世界。その象徴として“宇宙エレベーター“というルックスを配置しました。しかし困ったことに、僕は知らなかったんだけど、以前、別のガンダムで宇宙エレベーターを使っていたんですね(笑)。でも僕自身は、宇宙エレベーターなんてものは技術的にこれっぽっちも信じていないんです。だから、『G-レコ』を見る子どもたちには、宇宙エレベーターってヘンだよね? って思える子に育って欲しい。子どもたちのフックとなるものを“巨大ロボットもの“に紛れ込ませておくことで、50年後、さまざま疑問や問題点を解決してくれるかもしれないと思っています。

――子どもたちに“気づき”を与える物語を作るわけですね。
富野由悠季いま劇場版を5本つくっていますが、1本目がおもしろくなければ2本目は見てくれません。ちゃんと、ひっかかりのある画面作りをしないと5本なんて見てはもらえないでしょ? 例えば、巨大ロボットが嫌いな人が見ても面白いと思ってもらいたいんです。映画とか演劇というのは、“ファンにだけ見てもらって“も商売にはならないんです。それはヒットした『君の名は。』で証明されています。実は、『君の名は。』は画面的な作りでいうとかなり意識しました。TV版の『G-レコ』では『君の名は。』的な綺麗な絵をつくるということを意識していなかったんです。ですので、『君の名は。』は見習らわなきゃいけないと思っています(笑)。

・『Gのレコンギスタ』公式HP
◇【ガンダムの生みの親】富野由悠季監督インタビュー特集 →

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