(更新:)
ORICON NEWS
木村拓哉の進化と覚悟、「本当に求められたら、考える必要がある」
“痛い”とか“寒い”とか、そういうことは作品に関係ないこと
ノースタントで体を張った壮絶な死闘の連続に、“俳優・木村拓哉”の“覚悟”を思い知らされる。「まずは原作ありき。自分が役作りをこうしようというのではなく、原作の世界観を三池監督と具現化していくしかないのです。右目を潰して演じるのも、万次がそうだからであって、演じさせていただく条件のひとつとして、当たり前のこと。自分が“見えにくい”とか、“痛い”とか“寒い”とか、そういうことは作品に関係ないことですから。現場にいらない感情です」と、こともなげに言う。
「ごく大まかな段取りはあっても、最終的には対峙する相手に対して、“そっちが避けなかったら、そこで死ぬからね”という瞬間の積み重ねでした。とくに海老蔵さんとは動きの相談はまったくなくて、たがいの反射で作っていたというか。感じるままに、相手がこうしてきたら、こう動くと。ただ、海老蔵さんの剣は、速かったなぁ。僕らからすれば、斬る行為は非日常ですけど、彼は週3回くらいのペースで(舞台で)斬り合いしているみたいなので。さすがですよね(笑)」
その反射能力は、杉咲花が演じたヒロイン・凜とのシーンでも不可欠だった。
「万次は長い時間を生きていても、剣を持つ意味が見いだせなかった。でも凜と出会ったことにより、剣を持って人を殺めることに対する“答え”が得られたのだと思う。だから僕としては、杉咲(花)さんの演じる凜を100%感じて、それに反応して、自分の表現に還元させていただきました。彼女が苦しめば苦しむほど、万次としてはアクセルの回転数が上がると言いますか…」
対峙する共演者への反射神経と適応性は、演じる者として不可欠。その感度の高さによって思いもよらない化学反応(ケミストリー)が生まれれば、作品はより素晴らしいものへと進化していく。
三池崇史監督との初タッグ、「趣味は威嚇でしょ?」と言われて…
「最初は、『こういうお話があるんですが、いかがですか?』と言われて、『あっ、そうなんだ。よろしくお願いします』とお答えして。正直、初めてお会いした時は僕も構えていたし、監督も“Let’s!”ではなく“Excuse”な感じだったんです。まぁ、後になって監督から『威嚇されたからだよ。趣味は威嚇でしょ?』って言われましたけど(笑)。ほんと、威嚇していません。構えていただけです」
出会いは「間合いを取り合っていた」けれど、いざタッグを組めば志は同じ。全幅の信頼関係が結ばれた。「我々が無我夢中で作ったものが、結果的に日本人にしか作れない日本の物語として、世界中の人たちにとって、見たことのない価値あるものになるはずだ」とは、三池監督の言葉。期せずして木村拓哉も、現場を振り返りこう語る。
「本来なら、観ていただく方に“こう観て欲しい”、“こう感じて欲しい”というメッセージをきちんと持てたら良かったとは思いましたが、そこまで頭が回っていなかった。あの現場でプレイすること、それがすべてでした。作業をしている間は無我夢中で、劇場に座ってくれる人たちのことはぜんぜん考えられなくて。そこは監督やスタッフに委ねるしか、なかったですね」