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國村隼インタビュー『冒険できない状況の日本映画界で“映画を楽しむ”サイクルへの期待』
日本はオリジナリティ溢れる映画製作へのトライがなかなかできない状況
國村隼日本の場合は、限られた予算や時間のなかで作られますが、時間をどれだけ有効に使うかという逆算のシステムが優れています。製作予算が大きくても時間やお金を湯水のように使えるわけではない。そうなると、すべてが完璧にはいきませんから、妥協せざるを得ないところが出てくるのが現実です。韓国の場合は映画至上主義というか、良い作品が撮れる状況が整うまで待つ余裕がある。日本のシステムは非常に優れていますが、予算的にもっと余裕があればいいのにと思う作品もあります。韓国のように、映画に期待を持って楽しんでくれるお客さんがもっともっと増えれば、日本の映画産業も元気になって良いサイクルができるのではないでしょうか。
――日本では有名な原作ものの映画化が増えていますし、ヒットしているから観に行くという人が多い気がします。
國村隼今は日本の映画界が冒険できない状況になっているのは確かだと思います。失敗することを極力避けていて、ヒットする要素をかき集めているから、同じような作品が増えていく。今作のようなオリジナリティ溢れる映画製作へのトライがなかなかできない状況ではあると思います。
國村隼5000万人の人口の国で、1本の映画に700万人ものお客さんが観に来てくださって。韓国は映画に対するお客さんの期待も大きいですし、そういう方々が映画産業を支えているので、経済的にもステイタス的な面でも、俳優さんは良い状況にあると思います。韓国の役者はスキルを上げつつ長い間下積みをして、ようやく映画の世界へと到達する。そしてその世界できちんと生きているというプライドを持っていますから、モチベーションも高い。そういう俳優さんたちとご一緒できたのは本当に楽しかったですし、改めて彼らのスキルの高さや才能、パワーにはすごいものがあるなと実感しました。
自分にとって試験のような、これからの指針になる作品
國村隼今作は非常に特殊というか特別な作品で、僕が演じたキャラクターは人ですらない(笑)。そこがおもしろかったんですよね。もし今後オファーをいただいたとして、例えば戦争ものの作品となると、当然のごとく日本は侵略国といった描かれ方をされることが多い。そういった作品に関してはあまり興味を持てないので、今作のようなおもしろい作品だったらまた参加していきたいですね。韓国映画に限らずですが、オファーをいただいて作品の内容に興味が持てたら参加させていただこうと思っています。
――過去に『ブラック・レイン』や『キル・ビルvol.1』などにも出演されていますが、今後はジョン・ウー監督の『追捕〜MANHUNT』の公開が控えていますね。
國村隼ジョン・ウー監督作品への参加は『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』以来2度目でしたが、とても楽しかったです。
國村隼今作を楽しんでくれるお客さんがどのぐらいいるのだろうと自分にとって試験のような、これからの指針になるんじゃないかという気がしています。もしも多くの人が楽しんでくれたら、いいサイクルが始まるんじゃないかと期待しています。そして、劇場に足を運んでくださるお客さんが映画産業を支えていますから、“映画を楽しむこと”を日常のなかに組み込んでくださる方がひとりでも増えたらいいなと思います。
(文:奥村百恵)
哭声/コクソン
事件を担当する村の警官ジョングは、ある日、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。ジョングが娘を救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦へ巻き込まれ、誰も想像てきない結末へと走り出す――。
監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン ファン・ジョンミン 國村隼 チョン・ウヒ
2017年3月11日、シネマート新宿ほかにて公開
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