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ドラマ視聴率、原点回帰の“生放送”導入は救世主となるか?
生放送導入で“成功した”ドラマ作品たち
1958年10月、ラジオ東京テレビ(現・TBS)でビデオ録画放送の技術的な先駆けと言われるドラマ『私は貝になりたい』が放送。本作では前半は録画放送、後半は生放送という形態だったが、ビデオ機材の発展やビデオテープの低価格化により、少しずつドラマも収録するスタイルへと移行していった。だが『寺内貫太郎一家』(74年)、『ムー一族』(78年)、『ロックシンガーは闇に沈む』(85年)、『お坊っチャマにはわかるまい!』(86年)、『ザ・ワイドショー』(94年)、『ロングバケーション』(96年)など、たまに生放送パートを設けるドラマは各時代に点在。2000年代も『ムコ殿2003』(03年)や『プリマダム』(06年)、『私が恋愛できない理由』(11年)、『PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜』(12年)、『恋仲』(15年)など多数存在している。
“その時にしか見られない”ワクワク感を演出、生放送導入の醍醐味
まだテレビが娯楽の中心だった時代、例えば『8時だョ!全員集合』(TBS系)など生放送のバラエティが人気を集めたように、停電や火災など、いつどんなハプニングが起こるかわからないワクワク感があった。視聴率の低迷が始まっている時代の『私が恋愛できない理由』でも、同ライターは「リアルな恋愛物語を描くという同ドラマのテーマに沿って、東京タワーのイルミネーションというロマンチックな演出を取り入れました。非常に上手い手法で、当時のフジのエース・中野利幸プロデューサーの面目躍如でした」と絶賛。また『レンタル救世主』に関しても、「お悩み相談の生放送部分はデータ放送には入っておらず、テレビ本来が元々持っていた“その時にしか見られない特別感”がありました。ネット時代だからこそ、リアルタイムでドラマを見ながらSNSなどを活用して参加する楽しみもあると思います」と生放送の効果について語る。
生放送の導入は“使い方”次第で諸刃の刃に?
ではどうすれば良いのか? 「同じ生放送、生中継でも例えば、サッカーW杯関連は高視聴率が望めます。また過去、音楽番組が大人気だった時代には圧倒的人気の音楽スターがいて、彼らを見るためにみなが放送時間にテレビの前に集まりました。これらに共通するのは『ロングバケーション』の最終回も含め“お祭り的な盛り上がり”がそもそもあること。盛り上がりがあったからこそ生放送がウケたのであって、その逆ではないように感じられます。古くからのテレビファンとしては、バブル時代的ではない、現代ならではの“盛り上がり”を模索してもらい、生放送を上手に導入していってもらいたい。その技術もポテンシャルも、テレビ局にはまだあるはずだと思っています」(同・ライター)
現状、ドラマの生放送は“一部のみ”というケースがほとんどだが、1話まるごと生放送のドラマや、全話生放送の5分連ドラなどが登場してもスリリングで面白そうだ。テレビにとって厳しい時代だからこそ、攻めの姿勢で番組を作り続ける姿勢は必要不可欠。その攻めの姿勢として“意味を成すのであれば”、テレビの原点である生放送を導入することが、視聴率不振から抜け出すひとつの突破口となるかもしれない。単なる“生放送企画”ではなく、“生放送ならではの面白いドラマ”が今後誕生していくことに期待したい。
(文:衣輪晋一)