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【連載8】SMAP 5人の役割を考察:稲垣吾郎 解散発表後はじめてファンの前に立った、個性派集団の中のバランサー
“SMAPの魅力質量保存の法則”、変わらないアイドルの王道
一人一人の魅力もすごい。でも、5人集まると、その華やかさは最強になる。誰かが自分の魅力のボリュームを控えめにせざるをえないとき、稲垣が自身の魅力のボリュームを調整することで、SMAP自体の魅力を一定以上に保ち続けた。私は、これを密かに“SMAPの魅力質量保存の法則”と呼んでいた。この法則は、実はSMAPの歌唱についても当てはまる。歌があまり得意でないことを自覚している草なぎがいて、歌下手をネタにしている中居がいて、香取の歌唱はパワフルで、木村の歌唱はエモーショナル。稲垣の歌声も、90年代は“エンジェルボイス”などと評されたものだが、実はピッチ(音程)はメンバー一安定しているし、喉も強く、声量もあって、さらにアイドルらしい甘さもある。ビジュアルと歌、どちらに関しても、25年間、SMAPの中で誰よりもアイドルの王道を貫いてきたのが稲垣なのである。
“ピンチはチャンス”、稲垣の存在の大きさを改めて感じたSMAP復活劇
SMAPには、ライブのときにテッパンの盛り上がりをみせる“メンバー紹介曲”が3曲もある。1999年のアルバム『BIRDMAN 〜SMAP 013』収録の「Five True Love」、2002年の『SMAP 015 Drink!Smap!』収録の「FIVE RESPECT」、2012年の『GIFT of SMAP』収録の「CRAZY FIVE」。この中で、「FIVE RESPECT」は、稲垣がSMAPに復帰したことがきっかけになり、新たに生まれた曲だ。いずれも、曲制作には中居が関わっているが、「〜True Love」は森且行の脱退後の5人のグループ愛を歌に託し、「〜RESPECT」は、稲垣が活動を休止していたその“不在の時間”に感じたメンバーへの大切さを歌詞にしている。また、「Crazy〜」には、草なぎの活動自粛が明け、5人での未来を誓った決意表明のような力強さがある。「〜RESPECT」で5人は、“ピンチはチャンス”だと歌った。「CRAZY〜」では、“くじけそうでも拳をあげろ”“We are all one”と歌った。
あらゆる能力が鍛えられた、SMAPのスーパーバランサー
面白いのは、稲垣だけが、SMAPの中で他メンバーからの呼ばれ方が四人四様なのだ。中居は、「稲垣さん」と呼び(くだけた場では“吾郎”と呼ぶこともあるけれど)、木村は「吾郎」、草なぎは「吾郎さん」、香取が「ゴローちゃん」。できることなら、そんなふうにこれからもずっとずっと、メンバーにいじられる彼であってほしい。
かつてのインタビューで、「(SMAPの仲間感は)『Marching J』のようなイベントで、アドリブというか、その瞬間瞬間のノリを大事にしていっているときに感じる」と答えていた。そんなSMAPの“ノリ”を、より軽妙に、洒脱にしているのは、他ならぬ彼の存在なのである。
(文/菊地陽子)
【連載9】に続く
【連載1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
【連載2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART2 〜中居正広と木村拓哉の素顔〜
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART3 〜稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の素顔〜
【連載4】逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語
【連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日
【連載6】SMAP 5人の役割を考察:中居正広 自分たちのことでタブーは作らない、“自虐”という神センス
【連載7】SMAP 5人の役割を考察:木村拓哉 バッシングされるスーパースター、逃げない男の真実