• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
(更新: ORICON NEWS

【連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日

 前回お送りした『逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語』に続く、SMAP連載第5回目。今回は、先ごろ発売が決定したベストアルバム『SMAP 25 YEARS』にちなみ、これまでのSMAPのベストアルバムの歴史に触れたい。ベストといえば“総まとめ”的な要素が強いものだが、彼らはベストですら攻めてきたし、ファン投票で収録曲が決まるとしても、そこにはいつもエピソードがあった。今年の締めくくりに発表される『SMAP 25 YEARS』、それは一体どんなものになるだろうか。

この年末にベストアルバムを発表 初ベストから攻めてきたSMAP

 その投票のしやすさは、ちょっと感動するほどである。

 12月21日に発売が決定したSMAPのベストアルバム『SMAP 25 YEARS』。“みんなで決める! みんなのベストアルバム”というコピーが踊る特設サイトでは、10月4日の23時59分まで投票を受け付けている。

 サイトを覗くと、シングル55枚とアルバム22枚のジャケット写真が並び、それだけでも壮観だ。選曲したあとでその曲にまつわる思い出やエピソードを書き込む欄もあり、その下には、「コメントの一部を販促や宣伝に使う可能性があります」と書かれている。もしかしたら、自分たちの書いた言葉が、SMAPのメンバーの目に触れることがあるかもしれない。そう思うとつい、短いコメントにも気合が入る。自分がどれだけ、SMAPと彼らが歌う曲が好きで、どれだけその歌に助けられ、励まされてきたかを伝えたいと思う。

 一つ残念なことは、サイトに並ぶアルバムの中に過去のベスト盤が入っていないことだ。というのも、私はたとえば、シングル曲「笑顔のゲンキ」の、とくに『Cool』バージョンが好きだからである。そういう場合、ジャケット写真をクリックするのではなく、わざわざ“その他”にチェックしてタイトルとバージョンを書き込まなければならない。もう、その時点で50位以内に入ることは絶望的だ。『Cool』とは、1995年1月1日に発売されたSMAP初のベストアルバムで、それまでのシングルやアルバム曲のバックトラックが、ニューヨークの一流ジャズミュージシャンによって演奏され、歌のみならず楽器音の細かいアレンジまで楽しめる、大人っぽいアルバムに仕上がっているのだ。

 初のベストにして、バックトラックはアレンジを変えてのニューヨーク録音と、SMAPは、ベストアルバムでも攻めている。95年、11月に発売された『BOO』はリミックスアルバムで、こちらはSMAPのヒット曲が、大箱のクラブでかかってもまったくおかしくないほど、ダンサブルにリミックスされている。97年リリースの『WOOL』は2枚組。パワフルな「WOO」サイドと、センチメンタルな「LOO」サイドに分かれていて、この頃にはもう、“技術はないけどハートはある”と草なぎ剛が太鼓判を押す、SMAPの味わい深い歌唱が、確立していることがわかる。

生歌で本番一発勝負、だからこそジャズとも馴染むSMAPの歌声

 音を出すという意味で、しばしば歌い手の肉体は楽器に例えられる。たしかに、SMAPの5人は、歌がとりわけうまいわけではない。中居正広にいたっては、「歌下手」をネタにしているほどだし、ライブの時も、わざと下手に歌うことで笑いをとったり、中居のパートの直前で曲が終わるコント的な演出がなされたことがある。でも、5人の個性がバラバラなように、その背格好もバラバラなら、歌声もバラバラ。そのことがかえって、世界でたったひとつの楽器であることを際立たせる。打ち込みではなく、生の楽器の音と彼らの歌声の相性がいいのは、彼らがどんなときも生歌にこだわっているせいだろう。

 よく、中居が「レコーディングはさらっと15分で終わった」などとインタビューで話していたものだが、それこそ、彼の即興力と集中力の賜物なのではないか。ライブであれ、レコーディングであれ、歌番組であれ、正解を目指すのではなく、そのときのハートをたいせつにする。本番一発勝負、という考え方は、即興のセッションを楽しむジャズやファンクの精神にも通じるものがある。だからSMAPの歌声は、ジャズミュージシャンたちの傑出した個性とも馴染むのかもしれない。

アイドルのアルバムとして、初めてミリオンを突破

 2001年3月23日、初のシングルベスト集『SMAP Vest』が発売され、当時アイドルのアルバムとしては初のミリオンを突破した。約1週間後の3月28日には、浜崎あゆみの『A BEST』と、宇多田ヒカルのオリジナルアルバム『Distance』の発売日が重なり、“世紀の歌姫対決”などと注目され、この頃はオリコンランキングも、ベストアルバムが常に上位を賑わせていた。SMAPは8月に『pamS(ウラスマ)』と題し、『Vest』に未収録の裏ベストを集めたアルバムをリリース。

 『Vest』の浸透度はすさまじく、当時、別段SMAPファンでもなかった友人が、「これは買った」と教えてくれたり、ロンドンにいる友人から、「欲しいから送って」と頼まれたりした。彼女もとくにSMAPのファンではなく、日本ではアイドルに興味を持ってもいなかったけれど、もともと洋楽がそんなに好きでなかったせいか、「懐かしくて、聴いていて嬉しくなって、元気をくれるアルバムだった」と、とても喜んでくれた。アーティスティックな側面を順調に育みつつも、大勢の人に受け入れられるわかりやすさと明るさを保ち続けるSMAPのことを、とても誇らしく思った。

あなたにおすすめの記事

 を検索